第85話 カムール王国へ
エデンを包む結界の近くに、6人と3匹の白飛狼は転移してきた。私とキャスルさんが、門番に駆け寄り先に説明をして全員をエデンに入れてもらう。3匹の白飛狼も今回は私たちの従魔としてエデンの街に連れていく。全員でハンターギルドを目指して駆けて行く。サエたち白飛狼は、ギルドの前で待っていてもらうことにして、私たち6人はギルドの建物に飛び込んだ。受付に行き、すぐにギルドマスターの部屋に案内される。キャスルさんとオグリオ隊長を先頭に部屋に飛び込んだ。
「キーマ、どういう事か説明して、今、カムールはどんな状況なの?」矢継ぎ早にキャスルさんが問い詰める。
「ああ、待って、私もカムールの王都ナスカムのハンターギルドからの通信でしか聞いていないんだけど、イルマニアの水軍がカイルム大河を遡って500隻の軍船を進行させてきたの。今、国境地帯でカムール軍の魔術師たちが風魔法で抑えているようだけど、後2日が限度だって言ってるわ。それに合わせてドキコア軍十万が南の国境地帯に集結して、ワグル帝国の100騎の飛竜部隊と一緒にカムール軍と睨み合っているの。目的は南部地方の獣人たちの村々を襲う狙いだと思う。クミロワ辺境での奴隷狩りが出来なくなったワグル帝国が、イルマニアとドキコアを使ってカムール王国を滅ぼし人口の6割近い獣人とエルフを奴隷にしようと言う狙いだと思うわ。」
「たった二日じゃ、とても間に合わないわよ。どうするの?」とキャスルさんが言うと、「解ってるわよ、でも開戦に間に合わなくても、一週間持ちこたえてくれることを神に祈るしかないのよ。」とキーマさんが返す。
「チョットいいかな、うちのアリアナとクロシアが白飛狼で飛んでいけば、5時間程度でナスカムに辿り着けると思うの。そこから両方の戦場まで、2時間も有れば行ける筈だから、そこに着いてから転移で迎えにきてもらえば、今日中に私たち全員ぐらいは、充分間に合ってよ。」とママが口を挟む。
「私とクロシアだけじゃ、ナスカムのハンターギルドに着いても信じてもらえないと思うの。キャスルさんも一緒に白飛狼でナスカムに飛んでほしいわ。あと、私は10人位は余裕で一緒に転移できるけど、クロシアは6人が限度よ。それで良いかな?」私も補足すると、キーマさんが目を瞠り「それで充分よ。カムールから応援に来てくれてる5人のAランクハンターと私も一緒に行けそうね。キャスル、あんたはアリアナちゃんやクロシアちゃんと一緒にすぐにナスカムに飛んで頂戴。それまでに、向こうへ行くメンバーは全員ここに集合しておくわ。それから、Sランクハンターのマリア様も協力いただけるのですか?すぐにキートのハンターギルドに連絡しておきます。ありがとうございます。」「いいのよ。この娘たちがお世話になったエデンのためなら、問題ないわ。それよりアリアナ、通信用の魔道具をキーマに渡しておかないの?」と私に言うので、ダイヤとミスリルのブレスレットを2個取り出し、ひとつをキーマさんの右手首に取り付け、もう一つは、ミューシャ女 王に託けてくれるようにお願いする。
私とクロシア、キャスルさんの三人は、ギルドの建物を飛び出すと、サエたち3匹の白飛狼を連れて、結界障壁の北門を目指し駆けていった。門番も必至に駆けてくる私たちの驚いていたが、キャスルさんが一言いうだけで、私たちをすぐに結界から出してくれる。3人がそれぞれ白飛狼の背に乗り、ナスカムに向け飛び立った。カイルム大河沿いにあるカムールの王都ナスカムへは、エデンから続くカイルム川の源流を辿って行けば良いので、街道を探すより早く辿り着けそうだ。3匹のAランクモンスターにちょっかいを掛けてくる魔物は見当たらず、最高速度での飛翔をサエたちはしてくれた。また風魔法を纏い乗っている私たち3人をフワフワのベッドの上にいる心地にしてくれる余裕まであった。エデンの領地をでるまでに2時間、カムール領に入るまでに1時間、そこから王都ナスカムまで2時間弱で辿り着く。防護壁に囲まれた王都ナスカムへの入門は、キャスルさんの顔と、Sランクハンターのギルドカードが物を言って、3匹の白飛狼も従魔とすぐに了承され優先的に入れてもらえた。すぐにナスカムのハンターギルドに出向き状況確認をすると、ドキコア方面の対応には、山岳地帯のピューマ砦にピエル第二王子が3万の兵を擁して押さえているとの事であり、ワグル帝国からの竜騎兵100騎に悩まされているようだ。10万のドキコア兵による総攻撃も近いと思われる。また、イルマニア水軍500隻の押さえには、第一王子ヘクター殿下を総大将に、カムール魔法師団と、100隻のカムール水軍で睨みあっており、魔法師団の魔力が枯渇するのも時間の問題とのことだった。ピエル王子には私も面識が有るので、サエに乗って私がすぐにピューマ砦に飛び、キャスルさんとクロシアがイルマニア国境に飛ぶことにする。お互い到着次第、クロシアがママとキーマさん他3名を転移で迎えることにし、残りは私がピューマ砦から転移して迎えることに決める。ナスカムのギルドマスターに地図を見せてもらい、私はピューマ砦に向かう街道を辿って、クロシアとキャスルさんはカイルム大河を辿りすぐに飛び立った。




