第83話 通信用オーブ
狩りから帰ったサエたち白飛狼3匹が、砦に帰ってきた。初めて見るAランクモンスターに、ドワーフたちが驚くのを、私たちの従魔であると教えて騒ぎを鎮めるのに苦労した。青竜アクア様に、私たちはこれから竜王都に帰ることを伝えると、アクア様はこの砦に留まり、ドワーフたちの迎えが来るまでの警備にあたるとのことであった。私は山小屋に戻り、いまだに宝石選びに夢中のママとキャスルさんの目の前から床一面に広げられた宝石を異空間収納に収め、非難の目を向けられる。
「もう、竜王都の宿泊施設に帰ります。オグリオさんと一緒に転移しますから、向こうで、ゆっくり選んでください。」と言って3人と一緒に私たちの部屋の居間に転移した。すぐに宝石を床に広げて、どうぞと二人に告げ砦に引き返す。アクア様に私たちの山小屋を使うか聞くと、砦の建屋の中にいくらでも空き部屋があるから必要無いというので、直ぐに異空間収納に収める。目の前に有った山小屋が急に消えたのに、ドワーフたちが驚いていたが、無視して竜王都に帰ることにする。その前に気になっていたことをアクア様に聞く。
「アクア様はどうやって竜王都と連絡を取り合っているんですか?ドワーフたちの迎えの手配をいつされたのかと思いまして。」
「ああ、我ら4将軍と竜王様の間には、このオーブでどこに居ても通話ができるんですよ。」と、直径20cmほどの水晶玉を取り出した。
「ああ、ハンターギルド間の通信に使っている魔道具ですね。これを作れる魔導師が、竜王国にはおられるのですか?」と聞くと、
「いやいや、我らにはこのようなものを作れる魔導師は居ませんよ。これは、数千年前の人族の大魔導師ヨシア様が作ったものです。非常に沢山作られたので、まだ今も数百個残っていると思いますよ。このオーブを持っている者同士であれば、相手の顔をイメージするだけで、どこに居ても顔を見ながら通話できますから、非常に便利ですよ。竜王国には今百個ほど有りますね。でも手に入れるのは難しいですよ。なかなか、手放す人間は居ませんから、どこかの遺跡でハンターが見つけてオークションに出品されるのを待つ以外ないですから。それにどこの国も今使用しているものの予備が欲しいから、値段が跳ね上がるんですよ。落としてヒビでも入れば修理できませんので。」と言われ、慌ててヨシアの記憶を探って見ると、結構簡単な魔術式を書き込んだ拳大の水晶にプロテクト機能と、割れたときに魔術式を消去する術式を内面に書き込んだ大きな水晶で包んでいるだけの物であった。こんなもの金貨1枚もしないと思うが、いくらするのか聞いて見ると、
「最近のオークションに出たのは、50個一度に発見されて出品されましたので、結構お安くて、1個金貨1万枚で買えたようですよ。」
「ええ、そんなに高いんですか?」私は、開いた口が塞がらなかった。ヨシアも最初いくらで売ったんだろう?と思った。帰ったら聞いてみることにした。でも、この程度の術式なら、もっと小さなものに書き込めるのにと思い、先程ママたちから回収した宝石を思い出す。あの金剛石に書き込んで自分達の通信機にしようと決めた。
「この魔道具は壊れてしまうと、術式が消去されてしまい再現出来ないそうで、多くの魔導師も復元に挑戦してきましたが、未だに大魔導師ヨシアが作った分しか世界に残っていませんから、妥当な価格と思いますよ。」とアクア様は答えてくれた。
サエたち3匹の白飛狼に乗り、ドワーフやアクア様に別れを告げ、クロシアとシリエと一緒に、竜王都を目指し飛び立った。




