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黄金の魔女王  作者: 釣り師
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第82話 その後のドワーフ達

 伝説級の大盾になったよ。オリハルコン三層構造で、5割重量軽減化なんて良い事尽くめの機能まで付いてる。私は、本物の鍛冶職人が竜鱗大盾を制作する過程を目に焼き付け、竜王様の虹鱗を使って聖盾を作る自分の姿を想像した。只、まだ何かが足りないように感じてしまう。一仕事を終えたドラクリオさんが、私の傍に佇み問いかけてきた。

 「アリアナ様、500キロものオリハルコンを頂いて、厚かましいのですが、出来ましたら今、腰に帯びて居られるその不思議な形の剣を見せて頂けないでしょうか?」

 「良いわよ。」私は無造作に『さくら』を抜いてドラクリオさんに手渡す。

 受け取った彼は、透明に近い白く輝く刀身に目を奪われ、震えだした。

 「アリアナ様、この剣の原料は何ですか?ミスリルでも、オリハルコンでもない儂が初めて目にする金属です。教えて下さい。これは、オリハルコンの盾をも切り裂く力を感じます。いや、竜鱗の盾でも受けきれないように見えます。」

 「呪樹海を支配していたアンデッドの王古代竜のゴーラを知っている?三千年以上ゴーラの魔力を浴びていた鉄鉱石、魔鉄で鍛えた東方の刀というものです。これほど魔力を持った魔鉄は、他には無いと思います。鑑定眼をお持ちのドラクリオさんには既にお解りと思いますが、自我を持った聖剣以上の存在になってしまいました。私以外の人間には使用できません。」と、説明した。

 「やはり、聖剣を超えるものですか、いつか、このような剣を打ってみたいものです。」しみじみと言って、『さくら』を私に返してくれた。

 「竜鱗大盾の制作、いいものを見せて頂きました。今日は、これでオグリ山に帰ります。また、ニューセルムに帰ってきたら寄りますね。」と別れを告げ、その場から、砦内に設置した山小屋の居間に転移する。思わず足元の小石に倒れそうになった。

 「まま、キャスルさん、何してるんですか?」と声を荒げてしまった。

 居間の床一面に、コンテナ5個分の宝石の原石を広げ、二人はまた自分の目当ての宝石探しに夢中になっていた。クロシアとシロエの姿は見えない。アクア様とオグリオさんは、居間の隅に追いやられ、小さなテーブルで紅茶を飲んでいた。何か可愛そうなものを見る目で、ママとキャスルさんを見ていた。私は、外の広場に出て、モンクさんを探した。一つのエール樽にもたれ掛り、まだエールのジョッキを傾けている姿をみつけた。すぐに傍に近付いて声をかける。

 「モンクさん、ちょっとよろしいですか、今、ドラクリオさんをニューセルムの自宅まで送ってきました。オリハルコンは私が採掘した分をわけてきましたので、盾と剣の制作にかかっています。姿が見えなくなって、心配されてはと思い、お知らせしときますね。」と伝える。

 「ええ、もうクミロワに帰ったんですか?アリアナ様は凄い魔法使いだったんですね。それは良かった。家族の元に帰れたんだ。それはそうと、今日はこんな旨い飯と酒を頂き、ありがとうございます。ちょっと足にきてまして、ちゃんと立ってお礼出来ないんですが、勘弁して下さい。俺たちは、アクア様と話し合って、竜王都から、護衛と馬車が来てから帰ります。その間ぐらいの食糧は、砦の倉庫にたっぷり有りますので。只、酒はこれが最後ですけど、皆浴びるくらい飲んでるんで、竜王都に帰るまで我慢できます。」

 「ええ、もう40樽開けちゃったんだ。それじゃあ、またしばらく禁酒してもらいます。それはそうと、新しい坑道を見てくれました?今までの鉱脈からは比べものにならない純度の鉱脈よ。ここへ来た目標採掘量はまだ掘れてないんでしょ。なんなら、その分を明日から迎えが来るまでに掘ってもいいよ。私は、今欲しい分は採掘しちゃったから。」と言うと、

 酔いが吹っ飛んだように立ち上がったモンクさんが、年配のドワーフの元に飛んでいった。酔いつぶれていたそのドワーフにモンクさんが耳打ちすると、急に立ち上がり、モンクさんと一緒に私の傍にやってきた。

 「お嬢さん、本当に採掘してよろしいんですか?アクア様の話では、この鉱山はお嬢さんのものになったと聞いておりますじゃ。儂らは、入山して直ぐにロックワームに襲われて、まだ、一キロのオリハルコンも採掘出来ておりませんのじゃ。このまま帰っても、死んだ55人の仲間の家族に何もしてやれないと思っていましたのじゃ。馬車が迎えにくるまで、まだ一週間以上かかる筈ですじゃ。明日から全員で、必至に掘れば、予定の1tぐらい何とかなると思いますじゃ。すんませんが今から、その鉱脈まで連れて行ってもらえませんか?」

 筋骨逞しいその老人が、私に詰め寄ってきた。

 「お嬢さんは止めて、アリアナで良いから。これから案内するね。モンクさんも見たことないでしょ。一週間あったら、7tは楽に掘れる高純度の鉱脈よ。只、製錬した不純物の中に宝石の原石が結構含まれてるから、捨ててしまっちゃダメよ。さあ、行きましょう。」

 私は、二人を連れて坑道に入って行った。元の坑道を塞いだ突き当たりを右に新しい私が掘った坑道を進んで行く。100メートル程で私が掘り進んだ鉱脈に突き当たる。その前面の鉱脈を見たモンクさんと老人は、目を見開き言葉を失ってしまった。

 「ねえ、凄い鉱脈でしょ。このまま真直ぐ掘り進んで行けるよ。純度が高いから一日1t以上採掘できるわよ。」と、私が声をかけると、やっと我に返り、

 「アリアナ様、これを本当に儂らが掘ってもよろしいんですか?モンク、これなら製錬もすぐに出来る純度じゃ。本当に一週間かければ10tくらい採掘してしまいそうじゃな。」

 「ええ、親方、そんだけ掘れりゃ、死んだ奴らの家族にもたっぷり分けてやれますね。」と、二人で頷く。

 「掘れるだけ掘って、持って帰ったらいいわよ。」と私は了承した。

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