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黄金の魔女王  作者: 釣り師
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第80話 鍛冶師ドラクリオ

 砦の建物にドワーフたちを連れて行き、少し休んでもらってる間に、クロシアと私は、青竜アクア様と、オグリオさんと合流して、昼食の準備にかかる。青竜アクア様は、ドワーフの元に、彼らを労いに行った。ドワーフたちの話では、彼らはグランドアントから、ロックワームの生肉を分けてもらい飢えを凌いでいたらしい。話では、非常に硬く不味い肉であったようだ。できれば美味しいものを食べさせたいので、岩トカゲとオーガの肉に、エデンで買い込んでいた野菜をたっぷり使いふるまうことにした。ママとキャスルさんは、宝石のコンテナを獲物袋に収納して昼食の準備を手伝ってくれた。オーガ肉と野菜のバーベキューと、岩トカゲ肉のステーキの焼ける臭いが砦の中に充満する。風魔法で臭いが外に出ないよう障壁を施していると、アクア様と45人のドワーフたちが臭いに釣られ建物から出てきた。

 「さあ、皆さん、もうすぐ焼けますからどんどん食べて下さい。肉も野菜もたっぷり有りますので、お腹いっぱい食べて下さい。」

 ドワーフたちの目の色が変った。砦の広場は戦場と化した。焼きあがった肉も野菜も、押し寄せるドワーフたちに飲まれていく。ステーキもバーベキューも飲み物だったのか?と錯覚するほどの食欲である。用意していたオーガ一頭分の肉と岩トカゲ一頭分の肉が、みるみるうちに、無くなっていった。その姿に対抗するように、クロシアとシロエも戦場に突入してしまった。アクア様も最初は驚いていたが、岩トカゲのステーキの臭いに負け、ドワーフと一緒にステーキに齧り付いている。私とママとキャスルさんは、肉を焼く作業に係りきりになっていた。そこに、一人のドワーフが近づいてきた。

 「アリアナ様、今回はお助け頂きありがとうございます。私はニューセルムで鍛冶をしていますドラクリオと言うものです。今回、どうしてもオリハルコン鋼を手にいれたくて、友人のモンクに頼んで、この鉱山に採掘にきていました。ロックワームに生き埋めにされた時は、もう死んだと思っていましたが、同郷のアリアナ様やクロシア様たちの姿を見て、生きて帰れることを確信しました。それにこんな美味しい肉は、生まれて初めてです。ここにエールでも有れば、ドワーフたちは、みんなアリアナ様を女神以上に崇拝することでしょう。」というので、

 「あるよ。」と答えてしまった。

 さあ、大変な失言をしてしまったことは、直ぐに判明する。傍にいたドワーフから、他のドワーフにエールを持っていることが伝わり、45人90個の瞳が私に突き刺さってくる。さっきまで、飲み込むように食べていた肉を手に持ったまま、じっと犬の子供のような瞳を私に向けてくるのだ。まあ、竜王国に来る前、鉱山の見学を考えていたので、ドワーフたちへの差し入れ用にエールの樽を50個エデンで買い込んでいた。その内の20個を異空間収納から取り出し、陶器のジョッキも一緒に50個出して振る舞うことにする。広場に20個のエールの樽を立てて並べ、テーブルの上に50個のジョッキを出すと、ドワーフたちは、上の底板を拳で叩き割り、樽に直接ジョッキを突っ込んでエールを飲みだした。ドラクリオもちゃっかり樽の側でエールを飲んでいる。2か月間の禁酒がドワーフにとってどれほど辛いものか、今の姿を見れば、充分理解できた。あっという間に、20個の樽は、空になっていた。空の樽を異空間収納に片づけ、また、20個の樽を同じ場所に出してやると、私をドワーフの神として崇めようと言い出す始末である。しかし、肉を焼く作業が一段落したママとキャスルさんもジョッキを持ってエールを飲んでドワーフたちと歓談している。アクア様もオグリオさんも右手にジョッキ、左手にステーキの姿である。さすがにクロシアとシロエは、肉以外に興味は無いようなので安心した。また、ドラクリオさんが、傍に寄ってきた。もう十分エールを堪能したようだが、なにか他に話が有るようなので、

 「どうしました?」と聞くと、

 「私は、今回オリハルコン鉱石を得るため、2か月前クミロワからやってきましたが、まだ手に入れられていません。大公様に献上する剣を打つために、伝説の金属を使いたかったのです。先程、貴方様が、竜王さまよりこの鉱山を拝領したと伺ったのですが、私に今しばらく掘り続けさせて頂けないでしょうか?」と言う。

 「どの位欲しいの?」と聞くと、

 「出来たら30キロ程持って帰りたいと思っています。」

 「その位なら、私が充分掘ってあるからあげるよ。おじい様の剣を打ってくれるんだから、その代金に代わりに100キロあげる。でも今から馬車で、クミロワに帰っても半年以上掛かるんじゃないの?なんなら、これから転移魔法でニューセルムに送ってあげようか?その方が、すぐに剣の制作を始められるよ。」と言うと、

 「そのようなことが出来るのですか?もちろん有難いことですが、私のような者にそこまでして頂く訳にはまいりませんが。」

 「いいの、いいの、この酔っ払いたちの相手より、少し里帰りする方がたのしいもの。」とごり押しで決めてしまい、ママにいままでのドラクリオとの話を伝え、一時間程ニューセルムに行ってくると了解を取った。すぐにドラクリオさんの手を取って山小屋に入り居間からニュウセルムの門扉の少し手前の空き地に転移した。いつものように顔パスで門を通してもらい、ニュウーセルム街に入って、ドラクリオさんの工房に向かう。初めての転移魔法を経験したドラクリオさんは、まだ茫然としているが、無視して工房を目指す。こんな大きな鍛冶工房が有ったのかと感心する程のものであった。工房の中にドラクリオさんの手を引いて入って行くとドラクリオさんそっくりの若者と、小柄でふっくらしたやさしそうな女性が飛び出してきた。

 「親父、この一年何処に居たんだよ?本当に竜王国まで行ったんかよ。」

 「お前さん生きてたんだね。」

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