第7話 呪樹海探検隊③
ストーリーが右にいったり左にいったり、
難しい。
父イルシャの肩の上から20キロ四方ぐらいをサーチしていると、野生動物や、めずらしい果実の生った木々が非常に多いと感じた。魔素の濃度も山小屋周辺や、ニューセルムの街周辺に比べ、1.5倍くらいのものだった。只、まだ呪樹海に入って2時間程しか進んでいないので、魔物の気配は感じられない。
呪樹海に入ってからは、南南東に真直ぐ進んでいるが、進行方向の右手のサーチ画面上に黄金の光点が瞬いている。回りの獣人やダークエルフ達が、俺の思念体と一緒に探検できると理解した途端、急にうきうきしだした父の様子に
「元公子ってこんな人だったの?」と、父のハンター仲間である虎人族のアムルとドランの兄弟に小声で聞いていた。付き合いの長いアムルが、小声で
「大分かわったところがあるけど、根がいいひとだから気にしないでね。偶に凄く頼れることもあるから大目にみてあげて。」と、こちらに聞こえないように皆にささやいていたけど、俺にはすべてきこえていた。父は気付いていない。そろそろ、黄金の光点が近づいてきたので、
『パパ、パパ、右に50mほど寄り道してくれない。そこに泉が湧いていてめずらしいものが、群生してるみたい。』思念で父イルシャにいうと、
『解った。行ってみよう。』と答えて、
「皆、聞いてくれ。女神様のお告げだ。右手に50mのところに泉がある。そこに立ち寄れとのことだ。行こう。」と大きな声で指示をする。かわいそうなものを見る微妙な視線が周りを包むなか、イルシャは先頭に立って泉にむかっていった。俺は方向補正しながら、視線に耐えていたが、父はなにも感じていなかった。ある意味 パパすごい!!と思った。
直径3mほどの泉が見えてきた。その泉から流れ出す沢の両側が、黄金の光点のようだ。ヨシアの知識からその植物を見極めると、{{皇仙草}}万能ポーションの原料であった。非常に希少な薬草である。人間界の国々に持ち込めば、一株金貨100枚以上になるとの情報が頭にうかんだ。魔族界の国々でも、金貨50枚は下らない。
『パパ、あれが皇仙草よ、万能ポーションの原料になる薬草よ。』
『そうか、解った。よし、全部持って帰ろう。』
『ダメ! こういう希少な薬草は、根こそぎ取っちゃダメ! 1/3ぐらいでも200株程あるから、それくらいにして。』俺は慌てて注意した。
『そうなのか、パパは魔物ばっかり狩っていたから、薬草採取の常識がないんだ。アリアナが教えてくれてたすかった。』と、思念で俺に答えてから、沢の両岸に群生した皇仙草を指さして、
「あれが、万能ポーションの原料の皇仙草だ。間引きながら200株程収穫して行こう。それ以上は取るなよ。」と、指図する。皇仙草と聞いた隊員たちの行動は素早かった。かれらは皇仙草の価値を知っていたようだ。皇仙草の収穫を終え、元の進行方向に戻り南南東への行進を再開する。先程までの探検隊員たちの微妙な視線がなくなった。半分、俺の所為だから、ほっと安堵する。再出発、進行。
サーチ画面で前方を探索しながら、ヨシアが、思念体では、他の魔法が使えないようなことを言っていたのを思い出し、
『ねえ、ヨシア聞いてる? 俺、今思念体で、探索魔法を使えてるけど、何でなのかな?』と、問いかけてみると、
『そんなこと当然じゃ。我でも思念体でサーチぐらい出来るわ。本体の保有する魔力量で、どの程度の魔法が使えるか決まるのじゃ。そなた程の魔力量が有れば、我の知るどんな魔法でも使用できるぞ。解ったか?』返事がきた。
『うん、解った。ありがとう。』礼を送って、サーチ画面に意識を戻す。
進行方向の20㎞程前方に赤い光点が出現する。数が多い、
『ゴブリンかなやけに数が多いな、でも動いていないな。』100匹以上の反応があるので、父イルシャに探索内容を思念で教え、思念体を飛ばして確認しに行くことにした。気配遮断を強化して、飛んでいくと、{{甘魔桃}}がたわわに実った果樹がまばらにある地域にでた。果樹の側の木々にそいつらはいた。
『ぶちゃいく、嫌い』なぜか幼児の感情が出てくるが、気にせずヨシアの知識で照合すると、
【猿の魔物エンキラー、Dランクの魔物、100匹以上の群れは、Bランク相当。 甘魔桃の森をなわばりにする。甘魔桃を食べにくる魔物や獣を狩って食べる。風魔法を使い、カマイタチで獲物を切り刻む。エンキラーの住みついた甘魔桃の森の周囲には、獣や魔獣の骨が大量に積まれていることが多い】
『まだ住み着いてすぐだから、骨が無かったんだ。』と、ひとり納得して探検隊のほうに飛んでかえる。すぐに父イルシャの肩に戻り、見てきた情報を教える。この呪樹海探検隊の目的は、ニューセルムに避難している獣人やダークエルフ達のかつての集落があった場所の現況調査であるため、魔物討伐が目的ではない。イルシャは、また女神様のお告げがあったといって、行進を止め、甘魔桃の森とエンキラーの群れについて説明し、迂回するように進める。先の皇仙草の件があったので、すんなり迂回案が了承された。もうすぐ野営になる時間がきたので、
『パパ、ミルクの時間だから帰るね。』といって、マイホームの山小屋に飛んでかえった。
本体に戻って瞼を開けると、思わず悲鳴をあげそうになった。ポリーさんは解るけれど、知らない男の顔が五つも覗き込んでいる。泣き出してしまうが、ポリーさんが抱っこしてくれ、
「大丈夫よ、あなたのおじい様と、おじさん達が、合いにきてくれたのよ。」
「「「「ええええ」」」」




