第69話 竜王の鱗を買い占める
またコツコツアップしていきます。
「ママ、竜王国へのご招待って、凄い事なの? どうしたら良いかな、教えて」
私は、すぐに思念を飛ばしてキートのママに相談する。
「あんた達、凄い事よ、クリスタルドラゴンの竜王に会えるなんて、一生に一度
のチャンスなんだから。今まで、竜王が、竜王国から出てきたのは、古代竜ゴー
ラとの戦いに、魔族界の呪樹海で戦ったときだけなのよ。虹色に輝くドラゴン、
なんてすてきなんでしょう。私も会いたいわ。」
「そうなの、じゃあ、その竜王の胸の鱗10枚を、5人が貰ったから、ママにも
1枚あげるね。」
「ちょっと待って、5人て誰よ、あんた達3人以外誰が貰ったの?」と聞かれ、
「キャスルさんと、オグリオ氏の二人よ。」と答えると、
「アリアナ、良く聞きなさい。その二人から、どんな手段を使ってもいいから、
残り20枚の竜王の鱗を奪いなさい。お金はいくら使ってもいいよ。それで言う
こと聞かなかったら、叩きのめして奪えばいいからね。」なんて物騒なことを言
い出した。これは話題を変えないと何を言い出すか解らないので、
「それはそうと、ママ、竜王国へのご招待は、付き添いも良いって青竜アクア様
が言ってたよ。」と言うと、食いついた。
「何、それ、じゃあ世界樹祭が終わったら、パパとママが交代するね。竜王国へ
出発する前に、必ず連絡するのよ。」「了解しました。」ママとの交信を切って
キャスルさんとオグリオ氏の方を見ると、過大な討伐報酬で十分満足している二
人は、それだけで問題ないようなので、返事を待つ青竜アクア様の方を向いて、
「私たち3姉妹は、それで十分です。」と答え、キャスルさんとオグリオ氏を促
すと、「私は、ハンターに復帰しましたので、お伺いできれば幸せです。」とキ
ャスルさんが答える。「私は、女王様の許可が無い限りお伺い出来ません。」と
オグリオ氏が答えた。「ああ、その件につきましては、既に我が主竜王よりミュ
ーシャ女王様に書簡を届けておりますので、許可いただけると思います。」と、
透かさず青竜様がフォローする。「許可頂ければ、私もご一緒させて頂きます。」
と、オグリオ氏も了承した。
「じゃあ、早速、赤竜の遺体を引き渡ししましょうか。キーマさん、解体場を使
わせて頂けますか?」私が言うと、キーマさんが了承してくれ、全員で解体場に
向かう。
解体場に着いて、すぐに異空間収納から、赤竜の身体を出すと、青竜アクア様が、
討伐対象に間違いない事を確認し、パパと同じのアイテムボックスに収納した。
それから、50t黄金のインゴットと50枚の虹色の鱗が取り出される。すぐに
私の異空間収納に30tの黄金のインゴットと、30枚の鱗を収納して、キャス
ルさんとオグリオ氏にこっそり相談を持ちかける。「すいません、キャスルさん
とオグリオさんには、竜王様の鱗の使用予定が有りますか?もし、無いのでした
ら全て私に譲って頂けないでしょうか?」と、お願いしてみる。「勿論、アリア
ナがお使い下さい。この獲物袋も、魔杖の作成費用もお支払していないので、そ
の代金としてお納めください。」とキャスルさんが言えば、「私も結構です。こ
の聖剣の代金では少ないかもしれませんが、お納め下さい。」とオグリオ氏も快
く譲ってくれた。なんていい人達だ。しかし、無料でいただくのはちょっと問題
があるので、「それは、どれも差し上げたものです。標準価格の金貨10万枚で
売って下さい。お願いします。」
異空間収納から、赤竜が溜めこんでいた金貨10tの中から20万枚の金貨を取
り出し無理やり受け取らせる。勿論、竜王の鱗20枚はすぐに異空間収納に収め
てしまう。二人は、獲物袋に10tの黄金のインゴットと、10万枚の金貨を収
納する。よし、もう交換の受付は致しません。取引は完了しました。
私たちの内輪のゴタゴタを面白そうに見ていた青竜アクア様が、
「それでは、これで、赤竜討伐依頼の完了とさせていただきます。また、竜王国
へのご招待については、世界樹祭終了後にお伺いすることで対応させて頂きます。
それで、よろしいですか?」5人が頷くと、
「では、本日はこれで失礼させていただきます。また、世界樹祭の後、お迎えに
あがります。」と、颯爽と出ていく。
「竜王の鱗を全て買い占められたのは、聖鎧と、聖盾を作るためですか?」と、
キーマさんが、とんでもないことを言い出した。
「いえ、まだ何も啓示されていませんが、この50枚の鱗がどうしても必要にな
る予感がしまして、キャスルさんと、オグリオさんに無理を言って終いました。」
「いいえ、私たちには、飾っておく鱗より、金貨10万枚の方が、よっぽど嬉し
いですよ。これなら、部下たちの装備も大幅に向上させることが出来ます。ねえ、
キャスルさんもそうでしょ。」とオグリオ氏が言えば、「ええ、これだけのお金
があれば、夢だった、ハンター養成学校を作れます。」と、答える。
少しは、自分のご褒美に使いましょうよとは言えなかったが。




