第63話 Sランクハンター風刃の魔女一人発つ
お昼からパパの会議が有るので、すぐにエデンの近くの森に転移する。一緒に結
界の中に戻り、パパは城に向かい、私たちはハンターギルドに向かった。オグリオ
氏には、午後からハンターギルドで依頼を探すことを、伝言していたので、私たち
が、ギルドの建物に入っていくと、既に受け付けの近くに立っており、こちらを見
つけ、寄ってきた。
「アリアナ様、昨日は我が女王ミューシャ様のために、神々の使う神聖杖を作っ
ていただき、ありがとうございます。先程、聖杖ナスカ様は、ミューシャ様の手
に授かりました。これで、エデンは、どのような敵にも怯む事無く、戦う事が出
来るように成りました。」と礼を言われたが、
「あれは、世界樹セーラ様の希望でした。私はセーラ様の要望に応えただけです。
お礼なら、世界樹祭で、セーラ様に仰って下さい。」と私が言うと、
「いえ、お作りになられたアリアナ様に先にお礼を言うのが道理です。」と堅い
男である。適当に受け流し、キャスルさんを探すが、受付にいない。不思議に思
い、他の受付嬢に聞いてみると、
「キャスルは昨日付で、ハンターギルドを退職しております。本日より、Sラン
クハンターとして復帰しており、今日も朝から溜まっておりましたBランク以上
の討伐依頼を遂行しております。私からも彼女に魔杖を授けて頂いた事にお礼申
し上げます。」と仰るではありませんか。もしやと思いギルドマスターまで辞め
てないよねと尋ねると、
「ギルドマスターは2階の執務室におりますが、現役に復帰はしました。今は、
Aランクハンターと、ギルドマスターの兼務となっています。」
「良かった。じゃあ、少しお時間頂けないでしょうか?」と私が聞くと、少々お
待ち下さいと言って、直ぐに2階のギルドマスターの部屋に向かってくれた。彼
女は、急いで戻ってきて私たちを案内してくれた。2階に上がると、キーマさん
が、扉を開けて待って居てくれた。4人が中に入り、ソファーに座ると先程の受
付嬢が全員のお茶を出してくれすぐに業務に戻っていった。
「すごく、テキパキした方がキャスルさんの後任なんですね。」私は挨拶も忘れ
新しい受付嬢の感想をもらしてしまった。
「彼女はキャスルと同郷の、エルナ村出身なのです。キャスルに憧れハンターに
成ったのですが、私と一緒に魔物のスタンピード対処時に魔杖を折って、キャス
ルが引退してしまったため、目標を失い自棄になっていた所を、キャスルに拾わ
れ彼女の家で訓練されていた様です。ミレーヌと言いましてCランクハンターに
成ったばかりです。今回キャスルの後任が着くまでの間、臨時職員としてキャス
ルの穴を埋めて貰ってるんです。彼女も本当はキャスルについて、討伐依頼に向
かいたいのでしょうが、Aランク以上の討伐依頼を重点的にキャスルに処理して
もらっているので、彼女もここで、キャスルの代わりを務めてくれています。」
「ああ、そうですか、それはそうと、私たちも溜まっているAランク以上の討伐
依頼を手伝わせて貰えますか。」と私が聞くと、キーマさんの疲れ切った表情が
晴れ渡った。
「本当は、今日は朝から、お願いに伺おうか悩んでいました。実は、今キャスル
が討伐に向かっているのが、オーガの群れや、ワイパーンの出没したエルナ山な
のですが、Bランク以上の魔物が今まで山を下りてきた事が無かったのに、今回
続いていることを考えると、もっと強力な魔物に追われたと考えるのが妥当とい
う事になり、緊急に調査が必要とマスター会議で決定し、Aランク以上の限定で
調査討伐の要請がきました。マスター会議というのは、エデンのハンターギルド
と、クミロワ大公国のキートとニューセルムそれからカムール王国の4都市の合
計7つのハンターギルドが、連携をとり魔物のスタンピード対応をしようと結成
された上部組織になります。今、エデンの高ランクハンター不足に対処するため、
各ギルドから一定期間Bランク以上のハンターを派遣してくれています。あと、
1ヶ月すれば、第1陣が到着するのですが、緊急調査のため待つ事も出来ず、キ
ャスル一人で今朝出発しました。アリアナ様は転移魔法を使えますので、充分キ
ャスルに追いつけると思いますので、直ぐに応援に行ってもらえませんか?」
「馬で朝出発したのなら、駆け通しでもまだエルナ村に着けて居ないね。それに
山に入るのは明日の朝からにする筈だから、ギルドからパパに連絡だけして置い
てくれるなら、今すぐエルナ村に転移するよ。」と私が言うと、キーマさんが、
「解りました。公子様には、私が必ず連絡しますので、宜しくお願い致します。」
私たち4人は直ぐに輪になり手を繋いでエルナ村の近くに転移すろ。




