第60話 風刃の魔女と殲滅姫
本日から稲刈りの準備に入ります。
次話投稿は、来週火曜日以降になります。
御免なさい。
少し遅い昼食のバーベキューで、5人は動けないくらいに食べ過ぎてしまった。
やっとのことで、後片付けを終え、ギルドマスターの部屋に辿り着く。これからで
は、依頼を受けて遂行する時間も動く気も3人には無かった。それで、キーマさん
の好意に甘え、ギルドマスターの部屋で少し休ませてもらうことにした。キャスル
さんが全員にお茶を出してくれたので、お礼を言うと、昨日も今日もお昼をご馳走
になってるのに、お礼を言うなんてよして下さいと言われた。そう言えば今日も当
然のように一緒に食事したが、何故なのか解らない。私も当然一緒に食事するつも
りで準備し、肉を焼いた。まるで家族のように。それだけこの二人は私たちに近い
存在なのだと納得してしまった。それなら、私たちが、エデンに着いてから引き起
こしてしまったことを、全て話しておいた方が良いのではないかと思い至った。
「キーマさん、キャスルさん、ちょっと聞いておいて頂きたいのですが、宜しい
ですか?」と二人に時間をくれる様に聞いてみる。
「勿論、結構ですよ。貴方たちの事なら何でも知っておきたいですから。」と了
承してくれた。そこで私は、エデンに着いてから起きたことを全て二人に話した。
危うく怒りにのまれ、カムール王国のピエル王子を殺してしまいそうになった事
や、世界樹セーラに呼ばれ聖杖の制作を依頼され、女王用の神聖杖を作ってしまっ
たことを二人に話した。今後世界樹セーラの意思により世界樹の枝は全てアリアナ
に供給されることになってしまった事も、告白した。唯々呆れる二人であったが、
ピエル王子の件は、既にセフィールさんから聞いており、王子自身が反省して謝罪
したがっていることも知っていたので、聞き流せたが、エデンの象徴である世界樹
が、アリアナを大魔導師と認め世界樹の枝を全て委ねたことは、エデンに住むハイ
エルフにとって青天の霹靂と言って良いのか、信じられない成り行きであった。し
かも、世界樹セーラ本人と会い、女王の杖を依頼され作ったものが、神聖杖であっ
たことで、ミューシャ女王はSランクハンター同等以上の力を手に入れてしまった
のも驚くべきことなのだ。
「アリアナ様、今後、世界樹の枝で聖杖を作る予定はありますか?」と、聞かれ
たが、セーラの言葉の世界からの脅威の目云々で、作る気にはなれず、正直に
「いえ、勇者が求めて私の元に来るまでは、作ることは無いと思います。」と答
えておいた。その答えに二人が微妙な表情をしたので、不思議に思い、理由を尋
ねて見ると、何でも二人は世界樹の枝を1本ずづ所持しているのだそうだ。かつて
エデンの近くで発生した魔物のスタンピードが発生し、キーマさんもキャスルさん
も全力で対処したそうだ。その時の戦いで、能力以上の酷使に彼女たちの杖は、折
れてしまい、ミューシャ女王が世界樹セーラに願い1本ずつ枝をわけて貰ったよう
だ。しかし、魔法の杖に加工できる魔導師がいなかったため、二人とも現役を引退
した。普通の魔法金属で作る杖なら、錬金術師に出来ないことはないが、相手が世
界樹の枝では、通常の加工魔法使いには荷が重い。私が女王のために聖杖を作れた
のなら、自分達の枝も聖杖とは言わないので、魔法の杖に作成してもらえないかと
考えていたらしい。あの選りすぐりの100本の枝でなければ、神聖杖なんてもの
にはならないと思ったので、やっても良いかなと思い、
「枝をお持ちなら、今ここで能力付与しても良いですよ。」と私が言うと、二人
は、何度も本当に良いのかと確認してから、ギルドマスター室の壁の隠し部屋か
ら2本の枝を持って来た。セーラ様が厳選した100本には確かに劣るが、カグ
ラの枝よりは良いものである。あの女王の聖杖のように、最大限の機能と自我を
持たせ無ければ壊れることは無いだろうと思い、キャスルさんとキーマさんをそ
れぞれ思い描き、魔力増幅、自動修復と使用者指定を機能として付与してみた。
2本の枝が輝いてから静まると、それぞれ意思があるように、キャスルさんとキ
ーマさんの手に飛んで行った。あれ、またやってしまったのかと不安になり、鑑
定してみた。
鑑定結果
最上級魔杖:大魔導師アリアナ作
原材料 :世界樹の枝
レベル :聖杖クラス
能力 :使用者の魔力を5倍に増幅 自動修復機能有り
使用者 :風刃の魔女キャスル
価格 :・・・・・
最上級魔杖:大魔導師アリアナ作
原材料 :世界樹の枝
レベル :聖杖クラス
能力 :使用者の魔力を5倍に増幅 自動修復機能有り
使用者 :殲滅姫キーマ
価格 :・・・・・
聖杖クラスで5倍増幅なら、他の聖杖と同じだからいいかと、自己完結した。
二人は手にした杖を見つめたままで、固まっている。私の告白を聞いて貰ったし、
二人の通り名も解ったからいいか、と考えセフィールさんの店にでも遊びに行こう
と思った。




