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黄金の魔女王  作者: 釣り師
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第54話 冷蔵・冷凍保管庫

 オーガの砦跡から、キャスルさんの案内で私たちは歩いてエルナ村に向かってい

た。一際大きな鎧の音をたてて、オグリオ氏が歩いている。私たち3姉妹による一

瞬に終わってしまったワイパーン討伐に怒り心頭の状態なのだ。態々、鎧兜を着け

ついてきたのに、やった事は、バーベキューを食べただけとなり、やり場の無い怒

りに苛まれている。先程、余り怖い表情なので、フォローしようとして、

 「だって、一人1匹で、3匹しか居なかったんだもの、しょうがないじゃない。」

 といって、凄い目で睨まれた。クロシアとシロエは、さっとキーマさんの影に逃

げ込んだ。藪をつついた私に逃げ場所は無かった。早くエルナ村に着いて下さい。

 葬送行進は一時間近く続いて、要約終了の時を迎えた。

 エルナ村が見えてきた。キャスルさんが、ズンズン村の中心地目指し歩いて行く。

 大きな鎧の音を立てながらオグリオ氏もついてくる。私たちはキャスルさんに離

されないように歩調を上げ、村長宅と思われる大きな家の前に着いた。


 「エミリオ、居るんでしょ。もうワイパーン討伐は終わったよ。出てきて大丈夫

 だよ。」と大声でキャスルさんが叫ぶ。すると、玄関の扉が開き、一人の老人が

 出てきた。「キャスル叔母さん、本当にもう退治しちゃったのかい?」と老人が

 キャスルさんに聞いた。確かにキャスル叔母さんと言っていた。

 「ええ、こちらのクミロワ大公国のAランクハンターチーム忍者3姉妹が瞬殺で

 倒してしまったわ。私たちの目の前で。ワイパーンは3匹でしょ。」と確認する

 と、「ああ、いつも3匹で飛んできて家畜を襲ってきた。人はすぐ家に隠れたの

 で誰も殺されずにすんだが、家畜は殆ど食われちまった。大損害だよ。」と溜息

 混じりに話してくれた。村の人達もワイパーンが討伐されたと聞いて、やっと家

 から出てきてエミリオさんとキャスルさんの話に聞き耳を立てている。それに気

 が付いたエミリオさんが、「皆、ワイパーンは3匹とも討伐された。安心してく

 れ。手つかずだった畑の手入れや、家のことを急いで済ませよう。」と声をかけ

 た。人的被害が無かったのが、せめてもの救いだ。


 村の人々が帰って行ったので、エミリオさんの家の中に案内される。大きな家な

ので、聞いてみるとエルナ村の村長が住む家だそうで、集会所や、避難所の役目も

兼ねているらしい。今回のワイパーンは、人より家畜が目的だったようで、家は壊

しに来なかったため、皆、自分の家に避難していたそうだ。大した柵もない村のた

め、魔物の群れに襲われた場合の避難所として、地下に村人全員が身を潜めること

ができる秘密の地下室を備えているとのことである。扉を開け正面が大広間になっ

ていた。左を通りぬけて突き当たりが村長の居住空間で、その居間に案内された。

 まず最初に、オグリオ氏に煩い鎧兜を外してもらい、ソファーに腰をかける。外

した鎧兜は私の獲物袋に収納しておく。エミリオさんに借りた普段着に着替え、オ

グリオ氏の怒りも少し収まったようだ。しばらくそっとして置く。全員にお茶を出

してから、エミリオさんが、

 「キャスルおばさんや、ギルドマスターのキーマさんまで、討伐に来てくれたん

 だ。でも、随分早かったね。救援要請の村の男がエデンに辿り着くのが、せいぜ

 い昨日ぐらいの筈だから、速くても明後日以降にしか討伐隊は来れないと思って

 たんだけど、久々にキャスルおばさんの顔を見れてうれしいよ。セフィールおば

 さんも、ミューシャおばさんも全然きてくれないんだもの。」と、非常に引っ掛

 かる言葉をきいて思わず、問いただす。

 「ちょっと待ってください、セフィールおばさん、ミューシャおばさんて、キャ

 スルさんは、魔道具店のセフィールさんや、ミューシャ女王と姉妹なの?」

 「そうだよ、この村じゃ、3姉妹全員が世界樹の加護を受けてハイエルフになっ

 た有名人なんだ。私の父が一番下の弟なんだ。もう100年以上前に死んじゃっ

 たけどね。」と、あっさり喋ってくれる。目を吊り上げたキャスルさんに気付い

 ていない村長エミリオ氏の今後を大過なく過ごせるように願わずにはいられない。

 「そんなことより、家畜の被害や、村の被害はどうなの?食糧の確保はできるの

 すぐに用意しなければならないものがあれば、今、報告するのが、村長の務めな

 のよ。ほんとに、この子は何時まで経っても」「ちょっと待って」キャスルさん

 のマシンガントークにキーマさんが慌ててストップをかける。

 「そんなに、矢継ぎ早にエミリオさんを攻めたてないの。それで村長さん、食糧

 の備蓄はあとどの位あるの?」キーマさんの助けで、身体を強張らせていたエミ

 リオさんも気を取り直し、「大丈夫です。貯蔵庫は被害ありませんから、充分に

 余裕があります。只、家畜が殆どワイパーンに浚われてしまったので、肉の補充

 に、狩りをする必要がありますが。」というので、「オークなら70匹位持って

 るけど、冷蔵貯蔵庫はあるの?」と私が口を挟む。「そんなもの、こんな田舎の

 村にあるわけないでしょ。それよりオーク70匹って何時狩ったのよ」とキャス

 ルさんが聞いてくる。「この前のオーガの砦にオークも100匹以上いたの。派

 手にオーガの上位種を仕留めている間に30匹くらい逃げられちゃったんだけど

 ね。」と答える。いつもの全員が口を開け呆れ果てた表情が帰ってくる。無いな

 ら造れば良いだけなので、「エミリオさん、どっか肉の冷蔵貯蔵庫を造る場所は

 あるの。」と聞くと、「場所ならいくらでも有りますが、穀物貯蔵庫のそばに有

 ったら有難いです。」と言うので、早速、そこに案内してもらう。村長宅のすぐ

 傍に穀物貯蔵庫は有ったので、その左側に造ることにした。土魔法を使い四角い

 長方形のビルをイメージして固められた土のビルが出来上がる。すぐに石化させ

 石造りの倉庫のビルになった。床も石化させ大理石のフロアーが完成する。回り

 の森からクロシアに木を2本切ってきてもらい、乾燥切断で、扉を作る。残った

 木材は細かいチップ状にして床や壁、天井の石材の中心部分に挟み込ませた。扉

 の板の間にも十分詰め込み、最後に鉄のインゴットを取り出して冷気吹き出し装

 置を作る。水属性の氷結魔法を使い、動力にはオークの魔石を嵌め込んで4個の

 クーラーが完成する。それを正面に2個、奥の壁に2個取り付け起動ボタンを押

 すと、1度の冷気が吹き出してきた。マイナスにすると凍ってしまうので、1度

 設定にした。個々のクーラーには吹き出し温度の設定機能を付け加え-10℃か

 ら5℃まで調整可能として置いた。固まったまま、私たち3姉妹の作業を見てい

 る外野は放っておいて、首の無いオークの身体を並べていく。30体ほど並べた

 ら、慌てて、エミリオさんが、「もう十分です。」と言ってきた。所要時間1時

 間ちょっとで、オーク30体入り冷蔵・冷凍保管庫完成である。オグリオ氏は怒

 っていたことも忘れ、キーマさんとキャスルさんは魔物討伐以外への私たちの魔

 法に只、驚いている。「パン!」皆の前で手をたたき、注意を引き戻してから、

 「エミリオさん、オークは村の人達で解体できますよね。」と聞くと、「はい、

 自分達で処理できます。」と返事をもらったので、「じゃあ、エルナ村は、これ

 で大丈夫ですね。」と再確認する。「オーガ騒動の前より良くなりました。」と

 エミリオさんが言ってくれた。キーマさんに「今回の依頼はこれで終了というこ

 とでよろしいですか?」と言うと、キャスルさんとキーマさん同時に「もちろん

 です。ありがとうございました。」と礼を言われた。すぐに帰ろうということに

 なり、全員で村からエデンの方向に歩いてから、転移でギルドマスターの部屋に

 戻った。


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