第5話 呪樹海探検隊①
いままでの 1行の文字数をへらしてみました。
すこし、読みやすくなったかも
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虎族のドランが申し訳なさそうに、
「お嬢さんが生まれてすぐに、こんなことお願いするのは、手前勝手なんですが、2日後に呪樹海のかつての我らが里周辺までの調査に同行して頂けないでしょうか? 健脚なものでも片道10日はかかると思いますので、アイテムボックスをお持ちのイルシャ様がご一緒いただければ、20日程で帰還できると思います。呪樹海の中を荷馬車同行で行こうとしたら、倍の日数でも不可能なことは、明白ですので、どうかお願いします。」
「やだ!アリアナと離れたくない。」すぐさま一刀両断にお断りする父に、微妙な笑みをたたえた母マリアが、
「そんな我が儘いってないで、アリアナは私が守っているから。」と宥め賺している様子を瞼越しに見ながら、
『呪樹海探検隊か、一緒に行きたいな。』なんて考えていると、
『その身体じゃ無理に決まってるだろ。まあ、それだけ魔力があれば、身体を飛行させて、どこにでも行けるんだけどな。』久々にヨシアの思念が届く。
『ヨシアだ。ひさしぶりじゃない。何してたの?』何か言葉が幼児化してきた気がするが、もうどうでもいいかと思う。
『2日間、呪樹海の状況を調査していたんじゃよ。数百万いたアンデッドの魔物は、すべて、お前の聖光で浄化されておったわ。面白いのは、樹海そのものも、エルフの森のような、生気溢れる木々に変貌しておる。薬草やくだもの等がそこかしこに自生しておった。けもの達も引き寄せられるように樹海の中に住処を移しておる。もう、呪樹海ではなくて、恵みの樹海じゃな。そうじゃ、呪樹海の元凶じゃったアンデッドの王古代竜リッチのゴーラも綺麗に浄化されとったぞ。城の中には、奴の浄化された骨と魔石が残っておった。討伐したのは、そなたじゃから、そなたの物なんじゃが、なかなかに手に入らぬ素材でもあるんで、我に骨と魔石を譲ってくれぬか?今までにない強力な魔道具がつくれるんじゃ。』
『いいですよ。それより父イルシャの持ってるアイテムボックスって何なの』
『おお、クミロワ大公国に伝わる異空間収納庫の魔道具じゃ。我が、4000年以上前に作ったもので、持つ者の魔力に相応した容量の物を保管できる。嘗て100個程つくったはずじゃ。クミロワ大公国には5個程保管されておったが、大公め、5人の息子に分け与えたんじゃろうな。ミスリル製のブレスレットになっているんじゃが、所有者権限が認められ装備できた時点で、隠蔽機能が働くようになっていて、外見からは解らん。また、所有者を殺して奪おうとしても所有者が予め指定しておいた場所に転送されてしまうので、略奪は不可能となっておる。その機能のおかげで望外な価格で売れたので、我の研究費用も潤ったもんじゃ。しかし、そなたの父程度の魔力じゃと、精々5トン程の容量しかないと思うぞ。』
『異空間収納って、その中は時間の経過が無いの。だったら肉も魚も腐らないってことだよね。生き物も入れられるの?』
『生き物は無理じゃ。そろそろ我は、ゴーラの骨と、魔石を我の住まいに持って帰りたい。ああ、それはそうとゴーラの城の中には、奴が掻き集めた宝玉や金銀財宝がたっぷり蓄えられておるぞ。希少金属のミスリルやオリハルコンのインゴットも大量にあったわ。必要になったら、取りにいくとよい。ゴーラの城周辺は我が結界を張っておるから、そなた以外入れんからいつでもよいぞ。』
そんな話をして、ヨシアの思念が消えたので、周りを窺うと、目を真っ赤にした父イルシャの顔と、そんな父の首ねっこを捕まえて鬼のように怒る母マリアの姿に、思わずチビリそうになった。
「なにを子供みたいなことを言ってるの。ニューセルムの街の人達には、いつも助けてもらっているのに。いい恩返しです。20日間でも30日間でも行ってきなさい。魔獣除けの結界も半年くらいは大丈夫ですから、何の心配も要りません。」
「だって、僕のアリアナと離れるわけには・・・」
『ドナ・ドナ・ドーナ・・・』と心で口ずさみ手を振っていると、
「ドラン殿、遠征の準備に連れていって下さい。なんなら、そのまま呪樹海探検に出発されても結構です。」と、父を押し付ける母の姿に
『こちらの世界の女の方が怖い・・、あれ、俺も今回は女だった。』と、とりとめもない思考で見なかったことにしようとしていると、非常に困った顔のドラン氏が、声も出せずに父を抱き抱え出て行った。
『心はいっしょに探検しにいくから、ガンバ!』と父を励まして眠ることにした。




