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黄金の魔女王  作者: 釣り師
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第45話 落ち込んだ後は買い食い

 宿に帰ったアリアナは、何事もなかったようにふるまい夕食を取った。しかし、

自分が思わず取ってしまった行動が、後になって本当に化け物になる寸前であった

ことに自覚すると、自分自身が怖くなってきた。ひとり、宛がわれた寝室に入って

思い悩んでいると、女神アリアのくれた鈴のことを思い出した。ええい、困った時

の神頼み。異空間収納から生まれたときに握っていた鈴を取り出す。「チリーン」


 寝室の中が真っ白な世界に変わる。目の前に、やさしい笑顔のアリア様が立って

いた。

 「やっと、呼んでいただけましたね。山野様、いえ、アリアナ様。どうかされま

 したか?」と、聞いてくれる。

 「はあ、」溜息おついて、今日の出来事を説明する。怒りに飲まれ、思わずピエ

 ル王子に殺気をあて、殺してしまいそうになったことを、包み隠さず話した。さ

 さいなことから、怒りに飲まれてしまった自分が怖くなり、女神アリアに助けを

 求めた。話を黙って聞いていた女神様は、

 「それで、アリアナ様はどうしたいのですか?すべての当事者からその記憶を消

 去しますか?」と聞く。

 「いえ、犯罪者でもない方々の記憶に干渉するのは、許されないことだと思いま

 す。ただ、ピエル王子にどうやって謝罪したものかと?」言葉が続かない。

 「ふふふ、あの方も同じように悩まれておられますよ。ゆくゆくは勇者の称号を

 得て、人間界を救う定めの方ですから、魔弓への欲望にのまれて不躾な行動をと

 ったことを悔やまれていますよ。」と、相手の状況を教えてくれる。

 「今回は、傍にいた方の制止で止めることができ、よかったですが、もし今後ま

 た、私が怒りに飲まれるような事があったらと思うと、自分が怖いのです。」

 「それは大丈夫ですよ。あなたが暴走しそうになったときは、私が必ずそれを止

 めるようにします。あなたには、黄金の女神アリアを継承していただかなければ

 なりませんから。」と、とんでもない事を言い出す。

 「そんなの嫌だよ。神様なんて出来る訳ないでしょ。」と抗議するが、

 「あなたは、魔族も人族もエルフも獣人も如何なる種族も隔たりのない一緒に暮

 せる世界にマースをしたいのでしょう。あなたが一生をかけて成し遂げたその世

 界は誰が見守るのですか?やるだけやって現世を離れたら知らないでは、貴方が

 住まわれていた世界に置いても、無責任とはいいませんか?」

 「子供を言い負かして、大人げないとも言います。」これだけしか言い返せない。

 「ほほほほ、こんな楽しい会話は久方ぶりです。もっと頻繁に呼んでください。

 それから、貴方の身体はまだ10才の子供なんですから、もうお休みなさい。ピ

 エル王子への謝罪のチャンスは必ず訪れますから。」

 そのまま、寝付いてしまったようだ。朝、クロシアのボディープレスで叩き起こ

される。ひとしきりベッドでクロシアとプロレスをしてから居間に行く。シロエが

居間のほうに朝食を運んできていた。皆でテーブルに並べ、パパに今日の予定を聞

きながら、朝食をとる。

 「パパ、今日はもう一日休養日だったよね。何か予定があるの?」と聞けば、

 「いや、明日の女王の謁見準備は出来ているから、特になにも無いぞ。昨日は余

 り時間も無かったから、ゆっくりエデンの街を探検してきたらいいぞ。」

 「うん、じゃあそうする。」シロエとクロシアにどうするか聞くと、一緒に探検

 すると言うので、昨日と同じようにパジャマから忍び装束に着替え、街へ繰り出

す。宿のフロントに声をかけていく。「お気をつけて、いってらっしゃい。」と昨

日と同じように送り出してもらい、今日は、まず屋台街の食べ歩きをゆっくりしよ

うと思った。なにも、クロシアとシロエをエサで買収するつもりではないことは、

ここではっきり宣言して置く。

 まだ、9時すぎなので、屋台も今から準備しているところが多い。見て回ってい

ると、ひとつもう美味しそうな匂いを出している屋台を発見した。覗き込むと、ス

ルメ烏賊の一夜干しみたいなものを焼いていた。これは絶対美味しいと確信をもっ

て、

 「おじさん、それ何?」とまず聞いてみる。エデンには海はなかったから、こち

 のら世界では、烏賊は湖にもいるのかな?と思ったので確かめてみた。

 「ああ、嬢ちゃんたち、これは烏賊というもので、カムールのずっと東の海に住

 む生き物なんだが、一度にすごく沢山取れるんだ。それでこうやって一夜干しに

 加工して大量にエデンに運んでくるんだ。これを考えた奴は大したもんだよ。そ

 のままじゃすぐに腐ってしまうものを、干すだけで、腐りにくくなり尚かつ旨く

 なってんだぜ。食ってみるかい?」

 「3本頂戴。」私はすぐにお金を払い串を3本受け取る。シロエとクロシアに1

 本づつ渡し、齧ってみる。同じだ旨い。シロエとクロシアが私の袖を引く。もう

 食べてしまったようだ。もっとくれと目が催促している。来る前に宿のフロント

 で金貨2枚を銀貨200枚に両替していたので、銀貨5枚分焼いてもらった。ク

 ロシアとシロエに10本づつ渡し残り5本を自分で食べる。やっと5本食べきっ

 て気がついた。なにも全部食べ切らなくても、異空間収納に入れとけば何時でも

 焼き立てがたべれるんだと。もっと欲しがる二人を宥め、

 「おじさん、金貨1枚分焼いてくれない?どの位かかるかな?」ときくと、

 「剛毅だな、500本か、一時間もあれば焼けるぞ。」と答えるので、金貨1枚

 をおじさんに渡し、「じゃあ、一時間後に取りに来るね。」といって他の屋台を

 見て回る。後でまた食べられると理解した二人は大人しく付いてくる。いか焼き

 で時間を潰したおかげか、他の屋台からも香ばしいタレの焼ける匂いが漂ってき

 たので、次から次に覗いて味見をしていく。串焼きにもいろいろな肉とタレで味

 が微妙に違うのがうれしい。昨日もこれにしとけば、落ち込むこともなかったの

 にと勝手なことを考えている。瞬く間に一時間が経ちいか焼きの屋台に戻る。

 「おう、嬢ちゃん、そこに包んであるぞ。」とおじさんの指さす先を見ると、か

 なりな量である。手を翳して異空間収納に収める。目の前からいか焼きの包みが

 消えて驚く店主に、「アイテムボックスに入れたのよ。」と教える。まだ食べた

 そうなクロシアとシロエにポコンと膨れたお腹を指さして、どこかで腹ごなしの

 運動をしようとなったので、ハンターギルドに行ってみることにした。

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