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黄金の魔女王  作者: 釣り師
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第44話 ピエル王子

 おじさんの言葉に今度は、私が固まった。すぐに気を取り直し、殺気を納めたが、

この場に留まる勇気もなく、クロシアとシロエの手を取り、宿泊施設の前に転移し

ていた。じいじが、友好関係になりたいと言っていたカムール王国の第2王子を殺

しかけたんだもの。クロシアとシロエはなにも解っていないようだ。よし、無かっ

たことにしよう。こんなことパパに言えない。


 忍者3姉妹が消えたセフィールの店では、恐怖から解放された3人の若者が、床

に座り込んだままだった。やっと意識を整えたピエルは、もう一度回りを見回し、

 「セフィール殿、先程は失礼しました。貴方が彼女達と話し中にも関わらず、貴

 方の魔弓への渇望に我を忘れた言動をとりました。ここにお詫び致します。それ

 から、そこの商人殿、貴方はあの3人を良くご存知なのですね。先程、アリアナ

 様と呼んでおられたが、如何なる素性の方達ですか? いえ、遺恨に思ってのこ

 とではございません。正式にお詫びをさせて頂きたいのです。」心のこもった問

 いかけにヤスイヤ商会のおじさんは、正直に答えることにした。

 「彼女達はクミロワ大公国のAランクハンターチーム【忍者3姉妹】です。先程

 あなた方に激怒されたのがリーダーのアリアナ様、獣人の二人は義理の妹様たち

 です。ご両親は、Sランクハンターの首薙ぎ公子と白銀のブリザードです。これ

 でお解りと思いますが、アリアナ様はクミロワ大公の実の御孫様です。」

 「それで良く解りました。あの年の少女がSランクハンター同等の殺気を放てた

 のが。もはや彼女たちには、我が国のどのAランクハンターでもかなわない程の

 力を持っているようです。ここにいる二人も国ではAランク相当と言われる近衛

 の実力者なのですが、私同様、殺気のみで身動き一つ出来ませんでした。しかし

 お怒りの顔も実にチャーミングでした。機会を見つけて誠心誠意お詫びさせて頂

 こうと考えております。」

 セフィールさんがここで口を挟む。

 「ピエル王子さま、卑下されることはございません。我がエデンの近衛隊50騎

 も、白銀のブリザード様と彼女達3姉妹に覇気を当てられただけで、降伏してい

 ます。あれほどの殺気を浴びて、すぐに意識を整えられる王子さまも流石としか

 言いようがございません。」

 「お気遣いありがとうございます、セフィール殿。いや、今日、本国から連絡が

 有り、クミロワ大公国では今、呪樹海の東側森林地帯に侵入して獣人やエルフの

 集落を襲っていたワグル帝国の奴隷商5人を捕縛し、法に則って処刑したそうで

 す。クミロワ大公国では、奴隷制度そのものが犯罪であり、奴隷商とその協力者

 は、重犯罪者として処刑されるのが常識だそうで、魔族、獣人族、エルフ、ドワ

 ーフ族、それに人族すべてに官職への門戸が平等に開かれており、閣僚として国

 家運営に当たっているそうです。我が国は、まだそこまで開かれた国家になり得

 ていないのが、現況です。現在このマース上に置いて、最も優れた国家だと私は

 思います。奴隷制度を否定し犯罪と認識していることと、種族間での差別禁止ぐ

 らいしか出来ていない我がカムール王国は、クミロワ大公国の進んだ制度を取り

 入れ、魔族界にも人間界にも奴隷制度のない世界をともに築いていこうと友好関

 係を結ぶように、父王から指示されていました。それなのに魔弓のことで頭が一

 杯の私は、あろう事か、クミロワ大公の御孫さんを怒らせてしまったのですから

 正式に赴いて謝罪すべきだと考えています。」

 「いや、それはお止めになったほうがよろしいかと思います。アリアナ様は、あ

 のとおり大変なお力を持っておられるのですが、非常にお茶目なところが有り、

 多分、今日のことはお父様にもお母様にも話されないと思います。おろらくは、

 なにも無かったことにすると思いますので、態々謝罪されると、またパニックに

 陥るかもしれません。」と、ヤスイヤ商会のおじさんがフォローしてくれた。

 「そうです。それにアリアナ様は魔道具に興味をお持ちのようでしたから、また

 しばらくしたら、この店に立ち寄られると思いますので、その時に私の方からお

 報せいたします。そこで、内々に謝罪されるのがよろしいかと思いますが。」

 と、セフィールさんの言葉に、

 「そうですか、解りました。ではそのように手配していただくようよろしくお願

 いします。ときに、クリスとワーズ、そなたたちも何も無かったと肝に銘じるん

 だぞ。」と、二人の騎士に念を押す。

 「承りました。しかし、ピエル王子様、あの二人の妹君たちの動きも、恐ろしい

 ものでしたな。アリアナ様の殺気に思わず膝を付いてしまった時には、既に首に

 短剣の切先を当てられていました。もう、Sランクと考えて問題ないかと思いま

 す。」とワーズが呟く。

 「一人で魔樹海のSランクモンスターを仕留めてしまう方の娘たちだ。成長した

 あかつきには、どなたかひとりでも我が国に居住していただきたいものよ。ああ、

 セフィール殿、魔弓の件は諦めます。もし気が向いてまたお作りになったらご連

 絡いただけたらありがたいです。では、これで帰らせていただきます。」

 なんとも、さわやかに帰っていく3人を、ヤスイヤ商会のおじさんとセフィール

さんが見送った。

 

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