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黄金の魔女王  作者: 釣り師
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第32話 パパ上機嫌

 「ところで、ママ、キートに来てから殆ど昼間パパ見ないんだけど、どこに

 居るの? 勝手にエデンに行くことにしちゃったら、パパも困るんじゃない

 の?」そういえば、キートにきて3か月、夕食の時間以降しか顔を見ていな

 い。ニューセルムでは、四六時中、ウザいくらい纏わりついてきた父イルシ

 ャが夜以外は忽然と消えていることに、初めて気が付いた。薄情な娘である。

 「パパならキートから出られるなら、文句なんて言わないわよ。今でさえ、

 朝早くから夕食の時間まで、都の外に飛び出して釣りや狩猟をして遊んでる

 だけだもの。」「ええ、なんで?」思わず私が尋ねると、

 「ふふ、パパはね、大公家に関係ある人や、おじいさまや伯父様たちが苦手

 なのよ。顔を合わせたら小言ばかり言われるのが嫌で、逃亡中なの。アリア

 ナ、サーチで探して思念で帰ってくるように言ってちょうだい。」

 私は、サーチを40キロ周辺に張ってみる。居た。南西方向に30キロほど

の所にひとりでいる。河の傍だから釣りをしているようだ。思念を当ててみる。

パパだ。通じた。「パパ、アリアナだけど、ママからの伝言よ。『すぐ帰れ』

 だって。私たち3人とパパの4人でエデン王国に行くんだって。」「本当か、

 解った。すぐ帰る。」

 「ママ、パパすぐ帰るそうよ。」

 「何回見ても、あんたの思念通信て便利だね。それはそうと、エデン王国へ

 の旅行中は、毎日、夜にママに思念通信で一日の出来事を報告するんだよ。

 どんな小さなことでも、漏れなく報告してちょうだいね。」

 「うん、解った。」ママの部屋を出て3人でヨシアの研究所に転移する。


 「ヨシアいる?」「おお、アリアナか?久しぶりじゃな。今日は何じゃ?。」

 「うん、今度ね、私たち3人パパとエデン王国へ行くことになったの。それ

 で、エデン王国の事が解る本がないかなと思って来たの。なんかない?」

 「ふむ、エデン王国か、ちょと待て、たしかカムール王国の魔法使いが纏め

 た書籍に、エデン王国に関するものがあったように思うぞ。書庫の左から3

 番目の列の奥の方じゃ。」

 「じゃあ、勝手に探すから、借りて行ってもいい?」

 「ああ、我には興味の無い本じゃ。くれてやるぞ。」

 「ありがとう、じゃあ貰っていく。」というわけで、その本はすぐに見つか

り、3人はキートの屋敷に転移して帰った。


 帰って、居間に行くと、父イルシャが帰ってきており、ママとポリーさんか

ら、ハイエルフの女王からの親書と、世界樹祭への招待の件の説明を受けてい

た。そして、父イルシャの勘当が解かれ、クミロワ大公国第5公子として、エ

デン王国との友好通商交渉にあたり、また、【忍者3姉妹】を引率して、世界

樹祭に出席し、ハイエルフの長老達と親睦を深めることが、今回の指名依頼と

なることを理解したようだ。

 「でも、正式に勘当が解かれ使節として派遣されるのなら、白龍城の謁見の

 間で勅命を受けなきゃなんないよね。やだなあ、あんな大勢の官僚や将軍た

 ちに取り囲まれて拝命しなきゃなんないだもの。」

 「何言ってんの、そのくらい我慢しなさい。この子達も一緒なのよ。偶には

 父親らしくカッコいいとこ見せなさい。それだけじゃないわよ、勘当が解か

 れたらニューセルム辺境伯の拝命は逃げられないでしょ。」

 「ええ、アリアナ達とエデンに行くのは良いけど、そんな面倒なことヤダヨ。

 俺が施政議会の面々を上から押さえて命令なんて出来るわけないよ。」

 「本当に馬鹿ね、ニューセルムは10年前からすれば10倍に大きくなった

 街よ。城壁も3重に広げられて、今じゃキートに次ぐ人口をかかえる30万

 都市なのよ。それを施政議会はなんの滞りもなく運営しているじゃないの。

 今まで、大公国へ支払っていた税収の50%は、20%にへるから浮いた分

 施政議会でニューセルムのために使わせれば問題ないわ。私たちは名前だけ

 の辺境伯家として、今ある屋敷を城のように改築して住んでれば良いじゃな

 い。別に税収なんてもらわなくても十分稼いでるから。」

 簡単に言い包められてしまった。まあ、こうなるとは予測していたが?もう

ちょっと父さん頑張ろうと、心で呟く。


 3日後、私たち3人と、父イルシャは、白龍城の謁見の間にいた。父が代表

して、大公から勅命を受けている。暇なので、周りの閣僚や将軍たちを観察す

る。人種の坩堝である。閣僚12名の内訳は、獣人3名、ダークエルフ4名、

人間族2名、魔族2名、ドワーフ族1名、である。将軍15名の内訳は、獣人

5名、ダークエルフ2名、人間族4名、魔族4名であった。人種はバラバラだ

が、何故か纏まっており、不思議な安心感のある国家運営である。皆のパパを

見る目はやさしい笑みがある。なんでパパは、嫌がるのかなと考えていた。そ

の間に使節への勅命、拝命と、辺境伯の拝命式も終了し、旅の準備を急ぎます

とのことで、退出後、すぐに屋敷に引き返した。大公と伯父様たちは、不満そ

うだっかが。


 屋敷に帰ったパパは、晴ればれとした顔になり、さあ、旅の準備をしようと

私たちと居間で打ち合わせする。エデン王国への道は、ハイエルフの騎士団が

通った山岳地帯越えの間道しかないため、うちの大きな馬車では通行できない。

2頭立ての小さな馬車を用意する。馬車ではゆっくり休めないので、テントを

持っていこうかとなったが、私が前の我が家だった山小屋を異空間収納に仕舞

ったままだと気が付き、夜になったら出して、出発のときに収納すれば問題な

いんじゃないかと決定した。くだものや野菜を今日中に買い込み収納していけ

ばいいし、肉は途中で捕獲できる。魚は3か月釣り三昧だったパパのアイテム

ボックスに売るほどあるということで、野菜とくだものの買い出しに4人で出

かけた。終始パパはご機嫌だが、ママはふくれていた。


 次の朝、パパが御者をする2頭立て馬車で私たちはエデン王国に向け出立し

た。城壁の東門を抜け、しばらく進んでから馬車を止める。馬車だけ私の異空

間収納に収容し、馬2頭も入れて手を繋いで、ハイエルフの騎士団と別れた地

点に転移する。すぐに馬車を出し、馬を繋いでゆっくり旅を再開する。世界樹

祭が2か月半後にあるため、エデン王国へは、2か月程で辿りつく予定だ。し

かし、今朝からのパパは、こんな顔が出来るのかというくらい上機嫌である。

ママには黙っていてあげるのが、武士の情けだろう。

  

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