第25話 天使の刃の引っ越し
ちょっと少ないです。
ポリーさんと、忍者3姉妹が、ニューセルム近郊の屋敷に帰り着いたのは、
ゴブリンキングとゴブリンクィーンを討ってから3日後であった。次の日に
南と西の拠点を殲滅に行ってみたら、もぬけの殻だったため、拠点の小屋や
柵を、焼却処分し、雑魚ゴブリンについては、討伐部位の右耳と魔石以外は
買い取り等してもらえないため、大きな穴を土魔法で掘り討伐部位と魔石を
取った600匹のゴブリンを投入して、火魔法で焼却処分していた。その他
の拠点についても、再度住み着くことが無いように、すべて焼却除去して、
更地にもどしていたのだ。そんな訳で、ニューセルムのハンターギルドに今
回の討伐達成報告をして、報酬を受け取りやっと帰り着いたところだった。
「あんた達、今までどこに居たのよ?帰ってきたら誰も居ないから、心配し
たじゃないの。」とママの声が飛んでくる。
「マリアとイルシャがキートから帰って来ないから、この子達と一緒に指名
依頼のゴブリンキングとゴブリンクィーンの拠点を潰してたのよ。あんた達
こそ何をやってるのか、私達に説明するのが先じゃない。」珍しくポリーさ
んが怒っている。私達3人もその言葉に肯き、ママを見る。
「へ、そんなことがあったの? ごめん、ごめん。それじゃ、私達が悪いわ
ね。謝る。先に、みんなに大公都キートでの計画を説明しとくんだった。す
ぐにイルシャと二人でみんなに報告するわね。イルシャ!来てちょうだい。」
父イルシャが居間に入って来たので、全員ソファーに座り父と母を見つめる。
「まず、貴方たちに黙って、二年間も月の半分を私とイルシャが、大公都キ
ートに滞在して何をしていたのか、ちゃんと説明していなかった事について
先に謝っておくわ。ごめんなさい。話は、アリアナが生まれた時から発生し
たの。実は、イルシャがこのクミロワ大公国の第5公子なのは、皆も知って
いることよね。アリアナが生まれた時に黄金の女神の聖光が、クミロワを包
みこんだの。その力で呪樹海のアンデッドは全て浄化させてしまったわ。他
の呪いや不浄な森等も全て浄化され、クミロワ大公国は、魔族界において最
も生の溢れる国になったの。これを知った大公と4人の公子は、アリアナこ
そ黄金の女神の降臨した姿ではないかと考え、魔族界を統一する女王に育て
ることに全員一致で決めてしまったの。イルシャは第5公子とは言え既に勘
当された身であり、私に至っては人間族の女ハンターでしかないから、5人
が本気になってアリアナを奪いにきたら、協力してくれる勢力がないの。只、
大公も公子達も、アリアナの姿を見てからは、アリアナに嫌われたくないこ
との方が、女王にする事より重要だったので、ちょくちょく顔を見に来る程
度に抑えているの。それに呪樹海のアンデッドの脅威から解放され、すでに
10倍規模の街となったニューセルムは、クミロワ大公国の一大自治領にな
ったために、5年前頃からまた、大公と公子達が知恵をめぐらせてアリアナ
に嫌われなくて、ゆくゆくは女王になってもらう良い方法として、イルシャ
の勘当を解きニューセルム辺境伯に据えて、両親の元で育ててから、女王に
祭り上げてしまおうと画策し出したの。そこで5年前、私とイルシャはこっ
そりと、大公都キートの白龍城に忍び込んでセリーヌ大公妃にお会いして、
5人の企みと、抵抗のための協力をお願いしたの。その御陰でこの5年間は
ニューセルム辺境伯の誕生は、セリーヌ大公妃が押さえてくれていたのだけ
れど、2年前にセリーヌ大公妃から手紙が来て、私達がこのままニューセル
ムに住み続けていては、発展し続けるニューセルムの辺境伯誕生を押さえ続
けられない、限度はあと3年よと。いっそ大公都キートにSランクハンター
チーム【天使の刃】の活動拠点を換えてみてはどうかと、提案されたの。
そこで、私とイルシャは2年前から、大公都キートで白龍城や貴族街から
遠く、ハンターギルドに近い大きめの土地を買い取り、Sランクハンターチ
ームに相応しい屋敷を建てていたの。それもやっと完成したので、皆で一緒
に引っ越そうというつもりでした。」
「あんた達、なんでそんな大事なこと、もっと早く私に相談してくれないの
よ。ハンターチームの仲間は家族と同じじゃないの。」ポリーさんが怒る。
「勿論、家族だよ。キートへも一緒に行ってもらうつもりよ。でも、大元の
大公と公子達の5人も、アリアナが可愛くて仕方がない人たちでしょう。実
害がないのに、正面から文句言えないうちは、事を荒立てないようにしたか
ったの。ポリーに言ったら、大公や公子達にどなり込むかと思ったの。」
「いくら何でも そんなことする訳ないでしょ。わたしは大虎か?」
「いいえ、豹よ。 ぷふふふ、」「ふ、くふふふ。」笑い出した。




