第21話 前世の思い出と感謝がなぜか
また、ブックマークが二人も増えました。
ありがとうございます。
シロとクロは私の部屋で一緒に暮らすことに決まったので、ベッドをキング
サイズに変更した。白亜の別邸の特別室ように作ったベッドよりは少し小さい
が、5才の子供3人で寝るには大きすぎる。大人3人でも十分休めるサイズで
ある。お風呂と、夕食の後、その部屋に戻り3人でこれからのことを相談する。
「シロとクロはまだ、魔物と戦ったことが無いでしょ。それに魔物のことも
殆ど知らないわよね。魔術も訓練さえしてないから、5才の身体能力だけで
戦うなんて無理なの。そこで、お姉ちゃんの私が、魔物についての知識と、
魔法の知識や術式を徹底的に明日から教えるから、頑張ってくれる?」
「うん、頑張って、悪い奴らやっつけるにゃ。」「わたしも、やっつける。」
二人ともやる気があるのは、良いことだ。でも、知識については、ヨシアの
記憶転写魔法をつかって、必要な知識を写してしまうつもりなので、そんなに
頑張る必要ないんだけど。と思いながら、
「じゃあ、クロから魔力量と属性を調べるね。」と言って、クロの額に掌を
あて、同気する。「ふううん、魔力量は獣人族にしては多いわね。猫人族は
魔力特性があるのかな。人族の魔法使いの倍近い量よ。属性は、闇と風と火
の三つもある。これなら、空間魔法も使えるようになるから、転移も自分で
可能になるわね。よし、次はシロ確認するわよ。」といって、シロの額に掌
を移す。「ふむふむ、ちょっとまって、シロもクロと同じくらいの魔力量が
あるじゃない。獣人族って本当は人族より魔力量が多いんじゃないのかなあ。
身体能力が大きい分、魔力に頼らない傾向が見られるから、魔法を知ろうと
しなかったのかもしれないわ。シロちゃんの属性は、えっと、光と水と土の
3属性か、ふふ、二人揃えば全属性対応ね。すごいじゃない。さすが、私の
妹たちね。これはすぐに魔法操作を教えれば、実地訓練ができそうね。」
先の展望が開けたので、今日はもう就寝することにする。3人で川の字にキ
ングサイズベッドへ潜り込み横になる。勿論、私が真中で、ふたりが両側から
抱きついてくる。私にくっ付いていると、安心できるようなので、そのまま休
むことにしている。すぐに、寝付いてしまった。
夢をみた。前世での思い出が蘇ったのか目のまえに老人のやさしような顔が
近づいてくる。前世の私、山野岩男の顔だ。これはクロの夢なのだろう。
「おお、良い毛並みじゃな。女の子か、爺ちゃんの子供になるか?」私の声
がする。「にゃあぁ、」クロが答えた。思い出した。これが、クロと私の出
会いだった。80歳で妻に先立たれ、なんとなく生きていた。そこに甥の子
供が子猫を拾ってきた。可愛かった。育てようとすぐに思った。すぐに今度
は姪が紀州犬の子犬を私のためにもらってきてくれた。私を心配してくれた
のが解ったので、いっしょに育てることにした。1匹の子猫と1匹の子犬が、
私になんとなく生き続けさせてはくれなくした。なんとも忙しく、楽しい毎
日を過ごすうちに、趣味だった渓流釣りも再開し、シロの毎日の散歩に足腰
も復活した。15年間、老衰で死ぬまでわたしの傍にいつも2匹がいた。私
は、2匹を見送るとき、「来世でまた会えるといいな」と声をかけていた。
それが今回は、獣人とはいえ、言葉を交わせ心を通じ合える形で再会させて
くれた、黄金の女神に感謝した。妻との死別した時とちがい、シロやクロと
の別れは、わたしにとってさみしさ以上の、満ち足りた幸福な時間を与えて
もらった感謝の気持ちに埋められていた。一人になっても、毎日の散歩も渓
流釣りも続けていけた。そういえば、黄金の女神様には鈴をもらっていたな。
一度、お礼をいうのに呼んでみてもいいかな?なんて考えていたら、朝にな
っていた。
苦しい!!、お腹の上に何かが、重い。で、目覚めると、やはりクロが私の
お腹の上にしがみ付いて寝ていた。猫の時の習慣を取り戻されても、大きさが
違うんだから止めてほしい。また、ほっぺをつねって目覚めさせる。涙目で睨
んでも、あんたが悪いんでしょ。思わず涙ぐみそうな思い出の夢が、目覚めの
苦しさに、霞んでしまった。ええい、今日から徹底的にしごいてやる。1ヶ月
でCランクハンターぐらいの実力を付けさせてやろうじゃないか。ほんとに苦
しかったんだから。




