第15話 狩りは続くよ、どこまでも
サーチを使い次の獲物を探す。北側になんかいるけど、魔獣のように赤い表示
ではない。5つの青い点が、西に向かっている。どうも他のハンターチームのよ
うだ。ポリーさんにそう言うと、「じゃあ、お茶の時間にしよう。」といって私
がプレデントした自分の獲物袋からテーブルとイスを出し、入れたての紅茶を出
してくれた。ショートケーキまで用意していた。「お昼にはまだ早いから、すこ
し甘いものを取りましょうね。」と、ポリーさんはイスに座り、優雅に紅茶を飲
む。私もショートケーキをいただきながら、紅茶を飲んだ。
「ニューセルム近郊は 魔物 少ないね」
「私たちがちょっと獲りすぎたかもね。」
「他のハンターさん達 困ってないの?」
「討伐専門て、うちのチームぐらいだから、逆に危険が少なくなったと喜んで
たよ。 それに彼らの獲物はゴブリンやオークだから すぐに湧いてくるよ。」
「天使の刃は強い魔物しか相手にしないの?」
「ここ2年は、Bランク以上の魔物専門に、ギルドから指名依頼うけてるよ。」
そんな話をしながら、ティータイムを楽しんでいると、サーチに赤い点が現れ
た。方向は、北東の山岳地帯、回るように動いてる。飛んでいるようだ。飛竜隊
の飛竜みたいだが、こんな山岳地帯を単騎で飛ぶことはない。
「北東20キロにワイパーンらしき反応あるけど、どうしよう?」
ポリーさんに尋ねると、
「野生のワイパーンか、ランク自体は、Bランクだけど、山岳地帯は元々奴ら
の縄張りだし、本来、人に危害を加えることは少ないの。縄張りの中で、獲物
の魔獣を狩って足りているときは、人里へは来ないから、強いて討伐する必要
はないわ。それより、その周辺の魔獣もあまり狩らない方が良いわね。」
「解った。じゃあ、北西方面に少し飛んで、獲物を探してみるね。」
ティータイムも終わり、ポリーさんにフライをかけて、一緒に北西方向に50
キロ程飛ぶと、山際の森林地帯が、続いている。少し開けた丘に下りて、サーチ
で探索すると、いるわいるわ、ゴブリンの群れ、コボルトの群れ、オークの群れ
と、いたるところに団体さんが居る。
「ポリーさん、この森の中には、ゴブリンの100匹近い群れが4つと、コボ
ルトの30匹ぐらいの群れが6つ、それからオークの200匹くらいの集落が
1つあるよ。」探索結果をポリーさんに報告する。
「ちょっと待って、オークの200匹の集落って言えば、最上位種のオークキ
ングがいるよ。国を挙げて討伐隊を組んで殲滅しなければならない規模だよ。
この場所だと、ニューセルムからは90キロ位離れているけど、キートへの街
道からだと50キロもないね。浚われて来て慰みものにされている魔族や獣人
族の女がいなければ良いけど。集落の中の様子は解らないかい。」
「思念体で気配遮断をかけて見てこれるよ。ちょっと待っててくれる?」
「ああ、頼む。」
私はすぐに思念体になり身体から離れ、気配遮断してフライで集落に飛んで行
った。真ん中に大きな小屋があるな。砦のように、木の柵で集落全体を囲ってる。
見張り台は4カ所か。あれ、東の柵の外に馬車みたいな物があるな。なに、これ
檻になってるよ。中に子供が2人いる。犬人族と猫人族の子供だ。放心状態だ。
柵の中側から、悲鳴がしたので覗いてみると、今まさによく太った人族の男が
裸に剥かれ串刺しにされたところだった。その周りには同様に串刺しにされ、火
にかけられた6人の人族の男たちがいた。もう死んでるけど。その奥の方の小屋
から女の悲鳴がする。飛んで行って覗いてみると、奴隷狩りに捕まっていた兎人
族の女が2人と、奴隷商の妻と思しき人族の女が3匹のオークに犯されていた。
先に檻の中の子供だけでも助けようかともおもったが、感づかれて、女達を殺
されてもいけないと思い、すぐにポリーさんの元に飛んで帰り、本体に戻って見
てきた事を報告した。
ポリーさんの決断は早かった。すぐに二人でニューセルムに転移する。ハンタ
ーギルドに飛び込み、ギルドマスターに面会し、天使の刃にオーク集落の討伐依
頼を出してもらう。私は母マリアに状況を思念で送り、すぐに父イルシャととも
にハンターギルドに来てもらった。ギルドマスターが、施政委員会の議長に連絡
して、施政委員会からハンターギルドへの依頼とした上で、大公都キートに飛竜
便で、状況報告する。また、救出隊の要請を、ギルドに居たハンター達にして、
虎人族のアムルとドラン兄弟を含む5人が、馬車で、向かってくれるように手配
した。今から出発しても、90キロの距離を馬車でいくら急いでも5時間弱かか
るので、すぐに出発してもらう。天使の刃と私はフライで少し飛んでから、転移
魔法を使い偵察していた丘に転移する。
「アリアナ、パパと私とポリーは、集落の正面から突入して、オークを殲滅し
ていくから、おまえは2人の子供と、女達を救出してちょうだい。正面の柵を
吹き飛ばして、オーク共が、私たちに集中してからするのよ。」
「ええぇぇ・・ 」 「言うことを聞きなさい。討伐依頼は天使の刃が受けた
の。あなたが、一番うまく救出できるでしょ。適材適所はチームリーダーが一
番解ってるのよ。」母マリアの言葉はまさに正論であった。
「ううぅぅ、解った。」 「良い子ね、愛してるわアリアナ。さあ、行こうか」
買い物にでも出かけるような3人のAランクハンターは、かっこよかった。




