第11話 父イルシャ地雷を踏む
呪樹海探検隊の報酬は、20日間の調査報酬に金貨5枚、採集した薬草及び
果実の引き取り額 金貨10枚、そして{{皇仙草}}200株の引き取り額が一
人あたり金貨1,000枚となった。12名公平に分配してだ。みんな、日本
じゃ一億円プレーヤーになってしまったようだ。ここで、我が父イルシャは地
雷を踏んでしまった。
「今回の報酬だ。」父イルシャが金貨15枚入った袋を母マリアに差し出す。
「お疲れ様でした。」と、それを受け取り、中を検めてから、
「アイテムボックスの中の金貨1,000枚は、どうするつもりですか?」
怖い、父が固まった。ギルドの受付のポリーさんは、母マリアの友達なのに、
すぐにばれることするなよ! 襟首を締め上げられ、私の顔をうらめしそうに
見ながら、
「いやあ、あれは、{{皇仙草}}の分け前で、勿論あとからお前に渡そうと思
っていたんだよ。」と、金貨1,000枚入った袋を取り出した。
このお金の御陰で、我が家は、山小屋から、石作りの3階建て屋敷に改築さ
れた。私の魔法で、温水洗浄機能付き水洗トイレと、10人以上入れるお風呂
を設置したところ母マリアは、大変気に入り、同じトイレを全ての階に設置す
るように私にいうので、無条件で各階に2個づつ取り付けた。このトイレは、
思いつきで、水魔法と、火魔法、闇魔法を組み込み、給水・温水洗浄・分解機
能を持たせた魔道具である。本当に小さなゴブリンの魔石でも1年以上は機能
できる省エネタイプにすることができた。母マリアが、私に10,000個作
らせて、白銀のブリザード作【全自動洗浄トイレ】として、どこにいくらで売
ったのかは、何も聞かないことにした。父イルシャがアイテムボックスに全て
収納し、大公都キートに運ばされたなんてことは、私は一切知りません。
私の1才の誕生日に、おじいちゃんと、4人の伯父さんが来て、トイレに感
動していたが、その後20個トイレを作らされた。次の日、一番下のギアナ伯
父さんが取りに来てたのも、私は知らない。あれが、大公都の城に取り付けら
れたのも、私の知らない世界のことだ。
2才になって、自分で歩けるように成ったので、ヨシアの言っていた、古代
竜アンデッドの王ゴーラの城に転移してみた。もちろん、父、母にはヨシアの
研究所で魔法の訓練をしてもらっていることにした。父はどこへでも付いて来
たがるが、無視することにした。
ヨシアの案内で巨大な遺跡としか言えないゴーラの城に入る。
「まず、宝物庫を見るか?」
「ううん、オリハルコンや、ミスリルのインゴット見せて。」
「ほほう、剣でも作りたいのか?」 「うん、私の刀を作るの。」
「刀??、どんな剣じゃ? 出来たら見せてくれ。」「うん。いいよ。」
地下の資材保管庫に移動する。聞いたとおり保管庫の奥には、ミスリルとオ
リハルコンのインゴットが、大量に積み上げられている。どこの国にもこれだ
けの量は保有していないと思われる量だ。それぞれ1個を異空間収納に移して
戻ろうとすると、入口の近くに無雑作に積み上げられたインゴットがあるのに
気付く。
「これ、鉄じゃないの?こんなところに置いといて、サビないの?」
と、ヨシアに聞いてみると、
「これは魔鉄じゃ。魔素の非常に高い場所にある鉄鉱石からは、魔力を含有
した鉄が取れるのじゃ。この城の地下には1000年以上にわたり、アンデッ
ドの王ゴーラの魔力を浴び続けた鉄鉱石の鉱脈があるようだ。そこから採掘し
て取り出したのが、この魔鉄じゃろう。高価なミスリルやオリハルコンの剣に
たいして同等の強度と柔軟さを合わせ持つ金属じゃよ。錬成魔術で鍛えなけれ
ばならんが、魔法付加がし易いから、重宝するぞ。」と、言う。
「強度と柔軟さって日本刀に最適じゃん。よし、これで作ろう。」と、1ト
ン程、異空間収納に魔鉄を収納する。「じゃあ、帰るね。」というと、
「宝物庫も見ていかんのか? 結構な量の金やプラチナがあったぞ。宝石類
も、すごいものが有ると思うがな。まあいいか、どうせお前の物じゃ。欲しく
なったら取りにくればいいか。」などとぶつぶつ言っているが無視する。
屋敷の自分の部屋に転移する。気配を探ると、パパもママも居ないみたいだ。
たしか、今日はキートのヤスイヤ商会に二人で出かけている筈だ。でも下の階
に、気配が有るので、サーチするとポリーさんが、居間にいた。最近、ニュー
セルムの街の家を出て、部屋の多いこの屋敷に引っ越してきた。もちろんハン
ターギルドの受付は続けているが、なぜかお休みが多い。後で聞いた事だけど
{{皇仙草}}の金貨1,000枚の報酬の件は、やはりポリーさんからママに速
報があったとのことだ。父イルシャの地雷はすぐ近くに住みついた。




