あの世の世界
あの世の世界に来てしまった湖池は
自ら悪魔と名乗るメラと共に
ここ、悪魔大学校の長い廊下をとぼとぼと歩いていた。すれ違う悪魔はみんな人間に見えた。
「今の奴も悪魔なのか?」
人の目を盗んでメラに聞く湖池。
「ええ、そうですよ。」
メラは平然と答える
「と言っても、みんながみんな悪魔って訳ではないですよ。」
「どーゆーこと?」
「悪魔は現実世界とこの世界を行き来して、人間をこの世界に連れてこられる。まぁ、殺さないといけませんが。」
表情何一つ変えないメラが怖く見えた。
「それで、連れてこられた人間はここで戦闘の訓練を受けて鍛えていきます。」
「へ………?なんのために?」
そう聞くとメラは足を止め、湖池を見つめながら告げた。
「我々の敵。【天使】との戦いに備えてです。」
悪魔と天使は敵同士。
どちらかが消滅するまで止まらない戦い。
そんな戦いに湖池は参加することになっていたのだ。
「まてまて!ここってあの世だろ?戦いって……もう1度ここで死ぬのか?」
「ここで死んだらまた新しい命となって現実世界へと送り込まれる。」
それはつまり……
「………延々に続くじゃないか。そんなの。終わらないじゃないか。」
「別にいいじゃない。また生き返るのだから。」
メラがそう冷たく言うと
湖池はとてつもない腹が立った。
「よくない……よくないよ!それじゃあ命の大切さがないみたいじゃないか!」
湖池が焼けにこだわるのは訳があった。
「湖池さんの気にさわったのなら、今の言葉は謝ります。すみませんでした。」
深々とお辞儀をし、メラは再び歩き出す。
「ああ、こっちも言い過ぎた。ごめんな………。」
湖池もメラに続く様に歩き出す。
「もう一ついいか?」
「はい?」
「なんでメラは俺を選んだんだ?」
「私達に協力してくれるのですか?」
「ああ。誰かがやるなら俺がやった方がいいからな。
で?なんでなんだ?」
「それはあなたがとても退屈そうでしたし。面白い性格してるからですかね?」
そうメラに言われた湖池はガクッと肩を落とす。
「確かに退屈だったけど。入学式がだぞ!」
「何故、今ガクッと肩を落とされたのですか?」
「いや、もっと『あなたがかっこよかったから!』とか言ってくれるのかと………。」
「調子に乗らないでください。このゴキブリ野郎。」
「ひ…………ひどい…………。」
彼の悪魔の日常は始まったばかりだ。
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「ここが今日からあなたに住んでもらう部屋となります。」
メラと湖池が「120号室」と書かれた扉の前で話している。
「ほほー。ここが。」
そう言っていると扉が開いた。
そこには畳16畳と言ったところか、
一人部屋にしては十分な広さだ。
しかし。物が何も置いてない。
「あれ?ベッドとか、机は……?」
「あ、すみません。まだ説明してませんでしたね。
ここはあの世の世界。頭で思えば何でも出てきますよ。」
「は………?」
「例えばベッドを頭の中で想像してみて。」
と言われるので言われた通りに思い描く。
と、そこにはとても高級感溢れるベッドがいつの間にか置いてあった。
「うぉぉー。本当だすげー。」
「反応が薄すぎて逆にキモいです。」
「ひどいよ……。さっきから…………。」
そんな調子でアンティーク製の机と椅子。電灯にはシャンデリア。おまけにティーカップなどを部屋に飾り。とてもリッチな部屋に仕上がった。
「こんなところかな?」
「はい。っと、そろそろお眠りの時間ですね。また詳しいことは明日説明しますので。それでは。」
扉の前で深々とお辞儀をしてまるでメイドの様に退出した。
一人になった湖池は高級ベッドに飛び込み
いろいろな思いを抱きながら呟く。
「あーあ。明日起きたら現実世界に帰っています様に。これは夢であります様に。」
そう願い眠りについた。