序章
人は何故飯を食べるか。大半の人はこう答えるだろう。
「腹が減ったから」と。
その答えはマルでもバツでもない。サンカクと言ったところか。腹が減るのはなぜか。簡単なことだ。1回飯を食べてしまったからだ。飯を食べたらその感覚は頭から一生離れない。その感覚を常に保つために人は飯を食べる。
◆ ◆ ◆
ウクルーシ王国。王国とは言えど現代社会、世界の日本の雰囲気と酷似している。近辺にはイトラント国、セーヴル国がある。
かつて、そのニ国とは争いが絶えず、三国共にまともに食事もとることは出来なかった。後にウクルーシ王国となる、ミスラ侯国の侯、ミスラは食事が好きだった。ミスラの食事を出来ないことに対する怒りは限度を知らなかった。
【争いは飽きた。共に飯を食おう。この世界のものとは思えない程美味しいぞ。食べたいならば七日後、ミスラ侯国の王宮へ来てくれ。私はこれを機に貴方方を殺そうとは思わない。もし、私を信じてくれるなら、是非来てくれ。】とニ国の長へ手紙を送った。
ミスラの側近からは、馬鹿げてる、こんな時に何を考えてるんだ、などと散々言われていた。
七日後、きちんとニ国の長は来た。
「こんな時になんだ。もしも裏切る様なことをすれば殺すぞ」
などと殺気立っていた。
王宮の奥の部屋に入る途中、
「こんな厳重警戒状態でもてなしか。」
イトラント国の長は嫌味混じりにそういった。
奥の部屋。目を疑う様な豪華な料理がたくさんある。
・マータァ米の筍ご飯(マータァ米:超高気圧で育った特殊米。特定の調理方法で料理しないと腐る)
・トロリポークのソテー
・黄金の水で育ったレタスのサラダ…etc
「ほぉ…す、すごいな…」
二人は合わせて息をのむ。
「さぁ、お二方、食べましょう」
三人はゆっくりと椅子に腰を降ろす。
「「「いただきます…。」」」
一口食べてしまったらもう、止まらない。
マータァ米のもちもちとした食感…
トロリポークの舌でとろける食感…
レタスのシャキシャキ且つ、みずみずしい感じ…
涙が止まらなかった。【食】を忘れ、争いに没頭した日々…この世のものとは思えない美味しさ…これを戦士達にも食べさせてやりたい。そんな気持ちで溢れていた。
「これは、これはまだあるのか!?」
セーヴル国、国王は叫んだ。
ミスラは指で側近の者に合図をして、食糧庫を見せた。
「多い…。これを我が国の戦士達に食べさせて良いか!?」
「勿論。まぁ焦るな。今日の本当の目的の食材だ。」
ガラガラ……
側近は光る実を差し出した。
その光は各々の瞳を輝かせる。
「あー。まだ名前はないがな。食べてみてくれ。」
「「「い、いただきます。」」」
手元にあるナイフとフォーク。
シャクッ……
「なんだ!この切れ味はっ!?」
イトラント国の国王は驚いて、叫ぶ。
ミスラは微笑みながら二人を見つめ、二人はゆっくりとそれを口に運んだ。
「あぁぁぁぁぁ……!!!」
言葉が出なかったようだ。
「美味いか?」
「あぁ。あぁ。美味い。美味いよ!」
それを淡々と食べ続けていた。
数日後。争いはすぐに終わり、三国の戦士全員に前のメニューを食べさせた。
皆、泣いた。
「うわぁぁぁん!おいしい!…うわぁぁぁん!」
◆ ◆ ◆
そして数年後、ミスラ侯国はウクルーシ王国に名を変え、一人の男の英雄譚が幕を開ける……
続きも見てくれるとありがたいです。
この小説はラストとかも一切考えてないので物語がたまによくわかんない方向へ行くかもです。ご了承ください。
まぁ一応、自分の中で最高傑作だと思う小説がありますので、気が向いたら投稿します。