表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

砂岩の嘲笑

作者: 風連

川の向側に、砂岩で出来ている山が、連なっている。

冗談のようだが、中身が、砂なのだ。

草や木が、生えていて表面上は、わからないが、山の片面が、削られていて、砂の顔をさらしている。

川の土手を散歩してると、ゆるいカーブの場所で、足が止まる。

あのまま、景気が良かったら、砂岩の山は、見る影も無く、削られて、マンションでも、立っていただろう。

あそこには、1度行ったことがある。

日曜日の冒険だった。

川の向こうは、中々行けない。

クラスの仲間と、水筒と弁当だけで、出発した。

すこし、川上に、向かうと、川の勢いを殺す飛び石が、作られている。

コンクリートの真四角なそれは、間が均等に開いていて、去年だったら、飛べなかっただろう。

ポンポンと越えていき、意外と簡単に向う岸に、わたれた。

何をするでもなく、反対側から、川を眺めた。

この辺りで1番大きな川だ。

土手も高く、河原も広い。

大人が何人も集まって、ワイワイ騒いでいる。

反対側だから、なんだか良く見えない。

中洲が、幾つかあって、釣りをしてる人が見える。

ザリガニ釣りはするが、こんな大きな川では、しないから、興味はなくただの景色だった。

何も発見がなく、ただ反対側というだけで、期待はずれ感が、みんなの口を重くしていた。

飛び石が、ピークだと、あまりにあっけない。

だいたい冒険に、ならない。

誰かが、山に行こうぜ!と、言った。

運搬作業用道路が、簡易的な鎖の向こうに見える。

子供でもまたげる高さだ。

打開策としては上々だ。

皆で、ゾロゾロと、登る。

すぐに木に囲まれて、川からは、見えない。

楽に上がっていくと、思ったより広い場所にでた。

山肌が削られて、砂岩が丸出しで、非日常的な感じに興奮した。

木で周りから隠されていて、秘密基地っぽかった。

弁当を食べ、変に興奮して、あちこち見たり、砂山を掘ってみたりした。

砂岩を集めた砂山が、大小4つあり、追いかけっこをしながら、はしゃぎまくった。

1人が山肌を手で削った。

意外と削られる。

「弁当のふた、使おうぜ。」

手では、すぐ痛くなったし、これは、画期的なアイデアだった。

すぐ、穴が開く。

ちょっとした穴から、ドンドンデカくしていって、砂のかまくらだーと、騒いだ。

1人が、奥に奥に、掘り進んだ。

砂岩の山の穴は、俺らをすっぽり、隠すほどになっていた。

「出よう。」

怖くなった奴が、真っ先に出る。

後を追って、俺らも、ゾ〜っと、しながら、出た。

なんでもないし、何も起きない。

慌てた自分らが可笑しくて、笑う。

でも、もう穴に入る気は失せた。

弁当のふたをしまい、帰り仕度をした時だった。

穴が崩れた。

砂が、落ちてふさがった。

その後、一目散に降りて、家に帰った。

穴は、開けた前と同じになったのだ。

確かに掘り出した砂が、入り口のあった場所に、こんもりと盛り上がっている。

だが、山は、そのまま。

跡形もなく、元に戻っていた。

あのまま、埋まったら。

掘り進んでいたら。

中で遊んでいたら。

誰も口をきかなかった。

最近の集中豪雨やゲリラ的な雨の振り方は、この辺でも顕著だ。

何十年も変わらなかった、あの山が、崩れた。

豪雨は、川を濁らせ、土砂と木々を根こそぎ奪うと、怒涛をあげて流れていった。

あっけなかった。

あの日、待ち合わせの公園にいた1人遊びの少年がついて来たのだ。

学校も違う彼は、記憶の中で、ぼやけて揺れている。

それも、もう確かめられはしない。

大きな傷跡が出来た砂岩の山が、笑っているように見える。

誰も名前を知らず、あの中に埋もれた少年は、もういない。

密やかな笑い声が、聴こえた気がしたが、轟々と流れる川がそれも流して行ってしまっていた。

今は、ここまで。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ