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記憶が流れてくる。


かつて私は人間だった。


今いるのとは違う世界の人間。


魔法の代わりに科学が発展したとか言われてるけど、そもそも魔法は夢物語だって言うのが私のいた世界の常識。


だから魔物も召喚獣もいない世界。


私はそんな世界に産まれた女。


死んだとき何歳だったか記憶にないけど女の子って年令は過ぎていたはず。


あの日の事はよく思い出せない。


死んだショックで記憶が一部欠けているって言われた。


私が死んだのは間違いだから正さないといけないとか。


でも体は燃えつきてしまっているし時を戻す事は出来ない。


だから新たに産まれてくる必要があった。


本来なら同じ種族で産まれてくるはずだったけど、私が拒否した。


人間は嫌。生まれ変わるなら鳥がいいと………


そんな私の死に関わってしまった存在は不死鳥だった。


私の強い願いと死ぬ間際に偶然、不死鳥の血を飲んだ私は不死鳥(珍種)に生まれ変わった。


珍種って酷くない?


本来は一匹しかいない不死鳥。

その一匹が繰り返し生まれ変わるのが決まり。

それ故に珍種………

元の世界にはいない存在だから私はこの世界で生まれ変わった。


生きてる間に血を飲んでいたら私も不死鳥の様に甦ったのかもしれないけど、あの時すでに体は燃えつきていたし飲んだと言うより口に入っただけだから果たして生き返ったかどうか……


私は不死鳥の様に何度でも甦るのか?

神獣と言われる不死鳥の様な能力を持っているのか?


初めての珍種だからデータは真っ白。


真っ白って事は何でもチャレンジし放題って事よね!


前世の知識があるといっても虫食い状態だから役にたつのか分からない。


珍種なりに色々やってみる!


2度目の人生。満喫してやるんだ!!


そんな誓い?を立てた所で目が覚めた。



「ピヨ?」


「ホノカ!!良かった……このまま目が覚めなかったら……」


リアンが私をそっと包むように抱き上げ涙をポロポロ流しながら頬擦りしてくる。


心配かけたのは悪かったけど、私の体で涙拭うのは止めて!


「ビヨ!」

「あれ?初めて聞く鳴き声」

「機嫌が悪いのでは?」

「えっ?」

「涙……ホノカの体で拭いていますよ」

「あっ!ゴメン!そんなつもりじゃ」


アワアワとしながらリアンは袖口で私の体を抜いだす。


ハンカチぐらい持ってないの!?


「ビヨビヨ!」

「うわっ………ますます機嫌悪くなってる……なんで?」

「リアン。これからはハンカチぐらい持ちましょうね」


そう言って先生は真っ白なハンカチで私を拭ってくれた。


あう!そこそこ。気持ちいいです先生。


「ピヨピヨ」

「良かった。いつもの鳴き声に戻った」


まったくリアンたら。もっとビシバシ躾てやるから覚悟しなさい!


「ビョ!」

「うわっ……なんか凄く嫌な予感が……」

「やれやれ。ホノカどこか具合の悪い所とかありますか?」

「ピ!」

「えっとNoだから…無いかな?」

「ピヨ!」

「Yesだから…?…」

「成る程。具合の悪い所は無いで合っているですね」

「ピヨ!」

「ではホノカあなたは文字が読めますね?」

「えっ!先生。召喚獣って文字が読めるんですか?」

「イイエ。少なくとも私は聞いた事がありません。ですがホノカは別です。気を失う前、本棚のタイトルを読んでいた様に見えました」

「ホノカ本当?文字が読めるの?」


さて、どうしましょう。

とぼけてもいいけど、いつまでもYesとNoだけじゃ拉致あかないしな……


「ホノカ文字が読めるならYesと答える代わりに今から言うタイトルの本を見つけて私に教えてください『召喚獣の種族一覧』」


う~ん……先生の考えがよく分からないけど…乗った方が良さそうだ。


私は本棚が見渡せる所まで歩いて行くと一冊ずつタイトルを確認していく。


あっ!見つけた!!


見つけたのはいいけど……どうやって教えたらいいの?

飛べれば楽なんだけど。まだ一度も成功してないんだよね……


ええい!女は度胸!!

あれ?違ったかな?

まぁいいや。

今なら飛べる!気合いだ気合い!!

人間。じゃなかった珍種でも不死鳥なんだから飛べる!

飛べるったら飛べる!


私は羽根を広げて何度か羽ばたいてみた。


おっおっ!浮いた。浮きました!

よし!このまま飛ぶぞ!


パタパタ……


うん飛んだよ。

ものの見事に飛んだよ。

まさかのウッ○ストッ○飛び……


頭か!頭が重いのか?!


いかん!このままでは頭に血が上る!

しかし体勢を立て直したくても思うようにいかない。

たーすーけーてー!


「ホノカ」


心の叫びが聞こえたのかリアンが私の体を反転してくれた。


助かった!


背骨(鳥の場合も言うのか知らないけど)に力を入れて頭が下にならない様に体を反らして、飛び続ける。


うむ。無理な体勢みたいで体が痛い。


それでも何とか目的の本の所までたどり着き背表紙にかじりついた。


「先生!」

「確かにその本であっています。やはり文字が読めたのですね。まぁリアンとのやり取りを見ていても言葉を完全に理解しているとは思っていましたが……」


あらバレてた!


そうだよね。リアンとは漫才みたいなやり取りしてるから普通は気づくよね。

もちろんリアンがボケ担当です。


「文字が読めるなら書くのはどうですか?」


羽でペンを持てと?

じっと自分の羽を見る。


うん。無理。

先生なかなかの無茶振り素敵です。


「羽で羽根ペン…………だじゃれ?」


ああ!成る程。


「シャレではなくホノカなら出来そうだなと」


なんですか?その異様な信頼感は?


「ああ確かに。ホノカなら出来そうですね」


飼い主お前もか?!

私の羽はマグネット付いてる訳じゃ無いんだぞ!

どう見てもペン持てる形状じゃないでしょう。


「でもペンは無理じゃないですか?」

「ペンを使わなければ良いのでは?」


はい?

一休さんのトンチ問答ですか?

ペンを使わずに文字を書く方法なんて……

元の世界ならパソコンとかあるけど。

むむ。


「先生には何か考えがあるんですね?」

「やってみる価値はあるかなと言った程度ですがね。ホノカ魔法陣には文字が使われています。あなたは空中に魔法陣を出現させた事があるぐらいですから、同じ要領で文字だけを空中に書く事が出来るかなと思うのですが……試してみませんか?」



成る程!

空中というか空間をモニターに見立てて頭の中でキーボードを叩けと?


ル○ン三世のタイトルみたいに出すのもおもしろそうだけど、この世界にはタイプライターないからウケは取れそうもない。

だったら派手にやりましょう!


空中で文字に変化する様にイメージしながら口から炎を吐く。

うん。文字になる前に騒ぎになりそうだ。

現にリアンがアワアワしてる。


では吐くのではなく飛ばしてみたらどうかな?

慎重に一文字ずつ炎を飛ばして文章にしてみる。

まぁ及第点?


「……面白い発想ですね……」


先生。口と顔色が反比例してます。

楽しそうな口調に大して青ざめた顔色って初めて見たわ。


「着眼点は悪くないと思いますが、場合によっては攻撃と見なされますから。もう少し穏便な方法を考えましょう」


攻撃?ああブレス攻撃ね。うん。うっかりしてました。

雛の体でブレス攻撃………私はドラゴンかい!って自分で突っ込んでみたりして(笑)


他に……

ふと目を落とせば羽根ペンが……

羽で羽根ペンってさっきのリアンのだじゃれを思い出して、あらためて自分の羽を見て思った。

いけるかも!


私は右羽に炎を灯して空中に文字を書いていく。

このままだと小さくて読みにくそうなので一通り書いてから二人に見える様にサイズを大きくしてみた。


「ピヨピヨ?」(どうかな?)

「凄いけどなんで小言なの?」


そう私が空中に書いたのは小言。


『リアン好き嫌いしてばかりだと大きくなれないよ』


「間違いなくホノカが書いたと分かるからでは?わざわざ自分の悪口を書く人はいないでしょう?」

「……納得は出来ますが、複雑です……」


『気にするな』


「ホノカ………」


リアンがうなだれてるけど知~らない。


「これで話は出来ますね。この様子なら思念で会話が出来るようになるのも早いでしょう」


『一つクリアしたと思ったら、もう次の課題ですか?さすがは先生!容赦ない』


サド先生って呼んでみたり(笑)


「誉め言葉と受け止めておきます」


うむ。メンタルも強い!


『所で先生の御名前は何と言うのですか?知らないままだとこれから大変そうなので、教えてください』

「おや?ホノカは私の名前を知らないのですか?」

『リアンがいつも先生としか言わないから……』

「僕のせい?!」

「まぁまぁ。では、今更ではありますがあらためて自己紹介しましょう。私はジュール。専門は召喚獣の研究です」

『研究?学者さんですか?』

「ええ。私はリアン専属の臨時教師です。もっとも他の生徒には内緒の話なので分け隔てなく教えていますがね」


へ?リアン専属ってどういう事??


そしてジュール先生によって落とされた爆弾は、これからの人生をお気楽満喫予定の私としては思わずorzしたくなる物だった。


雛の姿じゃ無理だけどね(笑)







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