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あれから一週間。

どうも召喚獣のホノカです。


あの日マスターになったリアンと話し合い?の結果、意志疎通の為の決まり事を作りまして現在進行形で改訂中。


とりあえずYESは「ピヨ!」にNoは「ピ!」語尾?を強める事で解決。


リアンが先生から聞いた話では人間の言葉を話せない召喚獣でも長い間使役していると思念で会話が出来る様になるとか…

現在、生まれたての雛である私が思念で会話出来る様になるのは何年後になるのか、そもそも雛の召喚獣じたいが始めてだから完全手探り状態。


私が言葉を話せないだけで思考はリアン達と変わらないって事にも気づいていない。


他の召喚獣に会って話が聞ければ少しは解決作が見つかるかなと思ってみたけど、それを伝える術が無い!歯がゆい!


他に何か無いかと考えていたら……むっ!


「痛い!なんで頭、突っつくんだよ!」


「ピピヨ!ピヨピピヨピ!」


「………何、言ってるか分からないけど………怒ってる?」

「ピヨ!」


私はリアンの頭から華麗に飛び立ちは出来ないけど、羽を駆使して左肩に降りると気づいたリアンが左腕をテーブルまで伸ばしてくれる。

ここ一週間の成果というか…ゴニョゴニョ

私は伸ばされた腕の上をヨチヨチ歩いてテーブルにたどり着くと羽でお皿の上を指しリアンを睨む。迫力はないだろうけど…


「あっ………グリンピース…」


どうやら私の言いたい事が分かったらしく小声で「残したっていいじゃないか」とか言いながらそっぽを向くリアン。


甘いわ!

左手の甲をクチバシでズンと突いてやるとかなり痛かったのか涙目で慌てて手を引っ込め、右手で擦っている。


好き嫌いは許しません。

「ピ!」


「ダメ?どうしても?」

「ピヨ!」(ダメ!)


それでも食べようとせずにスプーンで弄くりまわすリアンに呆れて私はテーブルの上を疾走する。

「ホノカ!」


助走つければ飛べると本能で知っていた。

テーブルの端まできてイザ!羽ばたかんと羽を広げた所でリアンにホールドされた。


うむ。やはり雛の足より人間の足の方が早いか。

しかも私は真っ直ぐ走っていたから予想もつきやすいだろう。


がっしりとでも潰さない様に私の体を捕まえるリアン。

器用だな。

だがしかし!私は怒っているのだ!!


掴むリアンの手をズンズンとクチバシで突っつくと痛い痛い言いながらも私を放さず、席に戻ると片手で私を拘束しながらお皿を取り一気にグリンピースを口の中に流し込んだ。


気持ちは分かるが食べれば良いってもんでもないんだけど…


ああ、泣いてる泣いてる。


そんなに嫌いかグリンピース?私は好きだぞ?

塩味でカラッと揚げた豆菓子。

ポリポリと手がすすむ。


あれ?


菓子?


菓子ってなんだ??


なんか忘れてるような…


「召喚獣に躾されているという噂は本当の様ですね」

「先生……そんな噂が?………」


あっ!一週間ぶりです先生。

出来たら名前知りたい。

先生ってだけじゃ学校内には大勢いるから区別つかないよ。

それにしても躾って……バレてたか。

まぁリアンには自覚無いだろうけど。


「ホノカ?………僕は君に……」


えっ?何の事?ホノカ知らない。


小首傾げてみせたらリアンにおもいっきり溜め息つかれた。

何よ!可愛いでしょ。


証拠に一部始終見てた女生徒が可愛い可愛いって連呼してるじゃない。

文句があるなら契約解除して新しい召喚獣でも呼べば?!


「ホノカ!契約解除はしないから!!」


私の眼前に魔法陣が浮かんだのを見てリアンが慌てだした。


ん?この魔法陣ってそうなの?


「今すぐ魔法陣消して!」


どうやって?

出し方も知らないのに消し方なんかもっと知らない。


「ホノカ。リアンと本当に別れたいのなら仕方ないが、そうでないのなら契約続行を」


先生?えっと契約続行って考えれば良いのかな?


魔法陣は浮かんだ時と同様、唐突に消えた。


むむ!仕組みが分からん!


「良かった。ありがとうホノカ」


礼を言われる覚えはないが貰っておこう。善きに計らえ!


「やはり……そうなのですね」


先生は何故か一人で納得している。なんでしょう?


「リアン。今日の授業が終わったら私の部屋に来るように」

「はい先生」


なんか意味深な目で見られた……

ちょっと怖いかも………




さてさて今日の授業は召喚獣との連携。

とは言っても雛の私に出来る事は何もない。

必然リアンと一緒に見学中。


大型犬と契約したクラスメートは召喚獣に囮をさせて、その間に魔法の詠唱をして攻撃するってパターンを練習していて、時々タイミングが合わなくて自分の召喚獣を攻撃している。


せめてもの救いはマスターがちゃんと謝れる子って事かな。


攻撃が当たると真っ青になってごめんなさいを連呼しながらオヤツをあげている。


召喚獣には回復魔法が効かない。


それは召喚獣が厳密に言うと生き物ではないから。


精霊とかに近く普段はこの世界にはいない。

契約者であるマスターの呼び掛けに応じてこの世界に現れる。


呼び出された間はマスターの魔力で体を維持して、帰還命令で帰る。

どこに帰るかは不明。

他にもマスターの魔力切れや、予め設定されている体力が0になると帰ってしまう。


オヤツは唯一の体力回復剤。

だから召喚獣のマスターはみんなオヤツを持っている。


でもこのオヤツ。

はっきり言って不味い!と言うか味がない!!


雛の私は出ずっぱりでもたいしてマスターの魔力を使わない。

むしろ帰ったら呼び出す方のが膨大な魔力を使うという、雛にあるまじき仕様なので私は一週間ずっとリアンの側にいる。


その間に2回オヤツを貰ったけど……

1回目はあれ?オヤツってこんな味だったけ?で、2回目は違う!オヤツはもっと美味しいはず!になって3回目は拒否しました。


今では、みんなよくこんな不味いの文句も言わずに食べてるなぁーって感心している。


見ているとオヤツって言っても色々あるみたい。

そうだよね。雛の私は少しの量しか食べないけど、大型犬なら量がいる。

もしかして質より量?


雛用のオヤツは売ってないからリアンは寮の厨房借りて手作りしてるけど、多分みんなは市販品だろうしそもそも精霊に近いせいか召喚獣には食べるという習慣がない。


だから味なんて分からないはず……


なのに私は味が分かるというか知っている。


このオヤツ。工夫次第でもっと美味しく出来るはず。

せめて砂糖はケチらないで欲しい。

言えないのでストレス溜まる一方です……


「はぁ……見ているだけじゃな………ホノカの種族だけでも解れば他にも何か出来るかも知れないのに………」


溜め息と共に吐き出された愚痴はスルーします。


種族か……それは私も知りたい。


ただの鶏だったら笑えるわ。


あ、でも鶏だったら雛じゃなくてヒヨコか……


そういえば何故に鶏の雛だけはヒヨコと言うのだろう?

謎だ。


「雛である以上は鳥系の種族だよな……鳥……コカトリス?……尻尾、蛇じゃないから違うか……まさかハーピー?……ハーピーは顔、人間だったよな。あとはなんだ?」


ぶつぶつと何やらうるさいけど授業そっちのけだと怒られるよ。

先生に代わってお仕置きよ!


「ピ!」

「痛い!どうしていつも頭を突っつくのさ?」

「おや。上の空だったから怒ろうと思っていたのにホノカに先を越された様ですね」

「えっ?そうなのホノカ?」

「ピヨ!」

「実によく出来た召喚獣です。マスターを躾なんて……」


ふっふっふっ。甘いですよ先生。

リアンの躾はまだ始めたばかり!

これからビシバシやりますからね。期待しててください。


「ホノカ………なんか善からぬ事、企んでない?」


気のせいだよ!


「それにしてもリアンの頭がすっかりお気に召した様ですね。ホノカは小さいから君の紅い髪に埋もれてると何処にいるのか分からなくなります」

「はい。この間なんか髪の毛の中で寝てたから気づかなくてクラスメートに何処に落としてきた!って怒られましたよ」


ハハハと苦笑いするリアン。

なぜ苦笑いかというと、この話には続きがあるのよね。


リアンの頭にクラスメートの男の子が手を突っ込んできたからびっくりして攻撃しちゃったのよ。

いつものようにズン!って……


大袈裟に痛がってたからマズイって思って羽で撫でて、ごめんなさいって気持ち籠めて頬擦りしたら男の子トロトロに溶けて「モフモフも良いけどフワフワも捨てがたい!」って……

いけない道に誘った?私ってば悪女?なんて自分で言って虚しかったわ。


それから暫くリアンがイジケテたのよね。


僕には頬擦りなんてしてくれた事ないのにって。


だからつい苦笑いになるのよね。


仕方ないから慰めてあげるよ。私は出来た召喚獣だもの。


リアンの頭を羽を使ってナデナデしたら見えてなくても感触で分かったみたいで、ホワホワとした気持ちが私に流れ込んでくる。


これは繋がりが強くなってる証拠。

双方の感情が時には色とかで分かるんだって。

これなら言葉を理解出来ないタイプでも信頼関係をもてるって訳。


リアンの気持ちが分かるのは嬉しい。

私の気持ちはリアンに届いているのかな?


「リアン。少しホノカと話がしたいので、次の授業の間ホノカを借りてもいいかな?」

「えっ?」

「次は確か剣術だろう?雛のホノカを頭に乗せたままでは危ないからね」

「あっ!そうですね。うっかりしてました」

「おいでホノカ。私の頭では落ち着かないだろうけど…」


別に頭にこだわりは無いです。

たんに肩より安定感あるし見晴らしいいから頭に乗ってるだけなんで。


私は先生の差し出す手に乗ると腕を伝わって肩に座った。

大人の人は腕も長いわ。昇るだけで疲れた。


「ホノカ………授業が終わったら迎えに行くから……先生の所で大人しく待ってるんだよ」


分かってますよ。

だからそんな世界の終わりみたいな顔しないでよ。

私のマスターはリアンだけだからね。


語尾にハートマークつける勢いで脳内で喋ってもリアンには伝わらない。


早急に何とかしなくちゃ。

リアンは才能あるくせにネガティブ思考だから、考えなくても良いことばかり考えちゃうんだよね。


まぁ俺様になるよりマシだけど。


早く迎えに来てねって気持ちで小首傾げたら少し伝わったみたいで、頬がほんのり染まった。


うむ。私、悪女である(笑)




そんなこんなで現在、先生のお部屋にお邪魔しています。

お部屋といっても教員が使う準備室なので、あるのは本棚と書き物用の机と椅子だけ。


本棚にはびっしりというかギッチリ本が詰まっていて一冊抜いたら抜いた所から崩れていきそうな………


どんな本があるのかな~なんて興味本位でタイトル読んでみたら、全部お仕事つまりは授業に関連する書物でした。

だよね。誰が見るか分からない本棚に自分の趣味本なんか入れとくはずがない。

基本、準備室は誰でも入れる。もちろん生徒も出入り自由。


授業で分からない事があったり、関連書籍で調べたい時には部屋を管理している先生の許可を取ればこの部屋で読み放題。


学校には図書館もあるけど、そちらはわりと一般的な物しか置いてない。


高度な魔法に関しては本とはいえ取り扱い注意な物も少なからずあるので、こうして専門の教師が管理している。


先生は召喚獣に関しての授業全般を受け持っているから必然的にその関連書籍ばっかり。


あっ。現在分かっている召喚出来る召喚獣の種族なんて本がある。


これ見たら私の種族も分かるかな?


嫌でもまてよ。

先生も私の種族が分からないって言ってたから、私ってこの本にも載ってない珍しい種族なのかな?


それとも雛だから分からない?


普通、召喚獣は成体が喚ばれるから幼体の状態まで分かっている召喚獣は、ほとんどいない。


幼体が分かっているのは喚ばれた召喚獣同士が番いになって、そのままこちらの世界で子供を産んだのが何体かいたのと、あとは犬とか猫タイプの召喚獣は普通の犬猫と変わらない生態を持っているから幼体も想像がつくってだけ。


雛であるからには私は鳥タイプの召喚獣で間違いはないだろう。


リアンはコカトリスとかハーピーとか言ってたけど、どっちも魔物だから召喚獣にはならないはず………


自信はないけど。


「……もしかしたらとは思っていましたが……ホノカ。あなたは文字も読めるのですね?」


ギクッ!


「あなたの行動はどう見ても言葉を理解しているとしか思えない。鳥タイプの召喚獣には何度か会った事がありますが、あなたの様に思慮深い瞳をしたものはいない」


え~っと………


「………あれは本来、召喚獣になるような存在ではありませんが、あなたを見ていると過去に一度だけ会った事があるアレを思い出してしまう………ホノカ。あなたの種族……いえ、あなたは不死鳥ではありませんか?」


不死鳥?

それリアンも言ってた。私の赤い羽根を見て不死鳥って…………


「不死鳥は神獣で、一体しか居ないと過去に会った不死鳥が言っていました。それゆえ召喚される事はないとも……不死鳥が召喚される時は神の力でも借りなければならないほどの事が起こった時だと」


私が神獣?まさかそんな!


「不死鳥は何百年か毎に体を再生する為に自らを燃やし、その火から新たに産まれる。故に火の鳥とも呼ばれている。あなたはその再生した雛ではありませんか?」


自らを燃やし、新たに産まれる?


それ知っている。

ううん。私、見た。


目の前で見たこともない真っ赤な鳥が燃え上がって………


そして私の着ていた服に火が移って…………


パリーンと何かが割れる様な音がした。

あれはきっと私の記憶を蓋していた物。


雛の私には抱え切れない程の記憶の本流に、私は抗い切れずに意識を失った。















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