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6/9

そのロクでもない・・・

相変わらずの、キャラ崩壊必死です・・・

しかし、こんな作品でも毎回読了をいただく不思議・・・

ありがとうございます・・・


では、毎度のことながら、覚悟のあるお方のみ、どうぞ・・・

 

 

 

 

「わーっがきみぃ~。♥。・゜♡゜・。♥。・゜♡゜・。♥。」

「はい、何ですか? 姫、また盛大にハートマークを飛ばしてきましたね?」


 筆を滑らせていた木簡から視線を上げた真に向かって、うふふ~、と薔姫は何か意味ありげに笑ってみせる。身体を『く』の字に曲げて、小首をかしげつつ手を後ろ手にしているポーズは、実にあざとかわいい。


「こんなお手紙が来たの」

「何でしょう?」


 バッ! と差し出されてきたのは、何やらピンクピンクした可愛い封がしてある書簡である。薔姫の態度からして、既に中身を検めているのだろうが、『中身見ちゃってないもん!』と言い訳がたつくらいには、綺麗に再梱包してある。

 やれやれ、と肩で息をしつつ、封を切って、書簡を広げてみる。


 するとそこには。



【 来る11月22日 

 いい夫婦の日に覇王の走狗内においてのカップルによる

 ✽~いいふぅふの日選手権~✽を開催いたしますわ

 どのカップルが、最もイヒヒフフフ……

 もとい、最もいい夫婦であるか

 これを機に世に知らしめようではありませんか

 (個人的に)楽しみにお待ち申し上げておりますわ 】


「……何方ですか、こんなイベントを目論む、いえ、催そうという酔狂、いえ、変わった御方は……」

 呆れつつ、書簡の最後まで読むと。

【 禍国帝室四品四位 蓮才人 】

 と、名前と印が押してあった。

 ああ、成程、と大いに納得して真は手紙を折りたたむ。


 ――成程、最近出番がなくて暇なので、ここらで一発イベントぶちかまして存在感をアピールしようというわけですか。


 折りたたんだ手紙の角で、ボリボリと後頭部を掻いていると、いやぁん、我が君、そんなことしちゃだめ! と薔姫の悲鳴が飛んできた。

 ぷう、とむくれながら真の手から書簡をひったくり角を撫で付けると、薔姫は改めて手紙を広げた。

 にこにこしながら、母親の書いた文字を何度も何度も読みふけっている薔姫の姿をみると、真には到底、行きませんよ、とは言えない。


「分かりました。それでは姫、用意を致しましょう」

「ホント!? 我が君、やったぁ。♥。・゜♡゜・。♥。・゜♡゜・。♥。」


 またまた盛大にハートマークを飛ばしながら、薔姫は真の腕に絡みつくように抱きついてきた。

 

 

 ✽✽✽



 禍国の王宮につくと、既に本選が始まっている、と告げられた。


「おや、おかしいですね?」

 記載されていた時刻通りに到着したはずなのだが、と首を捻る真に、舎人が笑う。


「ああ、真様御夫婦はシード権がありまして」

「シード権?」

「予選免除されておられます」


 どうやら、母親である蓮才人の親バカモードが発令したらしく、自分と薔姫は特別扱いらしい。


「他にもシード権の方がいらっしゃるのですか?」

「はい、郡王陛下御夫妻です」


 成程、親バカここに極まる、ですね、と頷く真と薔姫の胸にバラの花のコサージュが付けられる。

 いささか照れを感じつつ、真は薔姫と広間へと入場していった。



 ✽✽✽



「さ~あ、これで出場カップルがすべて揃いましたわ! では、エントリーしているカップルの紹介と参りたいと思います」


 やたらノリノリでマイクをフリフリ司会に興じるのは、当然、発起人である蓮才人である。

 何やら宝塚風コーデというか、18世紀ヨーロッパの軍服を思わせる白いタキシードに身を固めている。ハッキリ言って、こりゃコスプレである。どうやらハマっているらしい……何に、とは言わないが。


「わー、お母上様、素敵、似合ってる」

 しかし薔姫は素直に、一歩間違えばかなり痛い母親のコスプレに拍手を贈っている。娘の反応に気をよくしたのか、蓮才人はウィンクをしつつ、小指をぴき! とおったててマイクを握り直した。


「で~わぁ! エントリーカップルのご紹介とまいりますわ!


 エントリーナンバー・その1!

 祭国郡王・戰陛下と椿妃殿下!

 戰陛下はわたくしの義理の息子の縁を結んでおりますわ!

 ちなみに、この御夫妻! なんとお互いがはぢめての相手でしたのよ! チェリ○ボ○イだったなんて! 今時考えられませんわ! 戰、可愛くて母は褒めてさしあげたくてよ!」


 蓮才人の紹介に、ぐぎゃぁあぁぁぁああぁぁ! という戰の叫び声が覆い被さる。

 しかし構わず続ける蓮才人、さすが魔窟である後宮で生き延びてきただけの肝っ玉だ!



「エントリー・ナンバーその2!

 禍国兵部尚書にして宰相・優様とその側室・こう様!

 フルムーン超えの熟年夫婦のネットリ感で、ラヴラヴファイヤーな若者カップルを撃破するところを是非ともみたいですわ!


 エントリー・ナンバーその3!

 遼国王・灼陛下と王妃・涼妃殿下!

 姉さん女房の亜茶様を始め後宮にいらっしゃる多数のお妃方からも祝福されての御成婚! その種馬ぶり、うちの戰にも見習って欲しいですわ!」



 蓮才人様、趣味丸出しすぎです、と真っ赤になっている母・好を気の毒に思いながら真はため息をつく。


 その横では腕を組んだ遼国王・灼が、ふっふっふ、と何やらカッコつけた笑い声をあげている。

 種馬『イコール』モテ男、と都合よく脳内変換してくれたらしい。

 絶倫えっち以外能無しばか、という意味だと知ったら外交問題ですよね、コレ、と真は内心でホッとする。



「エントリー・ナンバーその4!

 河国(元)王・創陛下と王妃・伽耶妃殿下!

 河国王・創陛下は、前回に引き続き、死んじゃったのにご登場してくださる、昭和ジ○ンプなご都合主義の心意気を見せてくださっておりますわ!

 

 エントリー・ナンバーその5!

 禍国大保・受殿と御正室・染姫様!

 なんかちょっとぉ、このお二人ってばぁ、晩婚化を象徴しちゃってるんですけどぉ、よるのイトナミの方ってぇ、大丈夫ぅ、なのかしらぁ?」



 蓮才人の明白な誂い口調に、染姫が着物の袖の端を噛んで、ヒギィィィィィィィ! と叫んでいる。

 トーン的には3オクターブほど上がっており、いわゆる、黒板を爪でひっかく系の音に近い。

 皆が耳を押さえて、ぐわあああああ! とのたうっている中、慌てず騒がず目を閉じて座っている受の耳には耳栓がしっかりと詰めてある。

 さすが夫婦だ。



「そして最後! エントリー・ナンバーその6!

 祭国兵部尚書・優様の御子息・真様と、わたくしの娘、薔姫!

 以上がエントリーされているカップルですわ!」



 たりらりら~ん♦♫♦・*:..。♦♫♦*゜¨゜゜・*:..。♦という音楽が聞こえてきそうな見事なステップを踏み踏み、蓮才人は、真と薔姫を、ビシ! と指し示す。


 異様な火花の散る中、強行軍で禍国にやってきたせいでお腹が空いた薔姫と真は、立食式のご馳走に舌鼓をうっていた。



 ✽✽✽



「では先ず!

 エントリー・ナンバー1の祭国国王御夫妻と、エントリー・ナンバー2の兵部尚書御夫妻の戦いから始めていただきますわ!」


 カーン! という、ボクシングの試合などで見られる丸っこい鐘みたいなヤツを鳴らしながら、雰囲気あるぅ! と飛び上がってひとり喜んでいる蓮才人を横目にしつつ、会場の真ん中に戰と椿姫、そして優と好が進み出る。


「いやしかし意外でしたな。登場当時、陛下がチェリ○ボ○イであらせられたとは……」

「い、いいから! 兵部尚書! そ、そこ、今突っ込むトコロではないだろう!」


「は、そうですな、今はちゃんと突っ込む(・・・・)ところをわきまえていらっしゃいますし」

「ひょ~ぶしょぉぉぉぉ~しょおぉぉぉぉぉ~! や、ややややや、やめてくれ! い、いいいいいい一体全体、ど、どどどどどど、どうしたんだ!?」


「ふっふっふ、幾ら陛下と言えども此度は敵ですからな。勝たせてもらいに言っておりますぞ!」

 チェリ○攻めで動揺の激しい戰に、不敵な笑みをこぼす優。


「しっかし、いったいいつの世の中の話ですか? シーラカンスでもあるまいに。というか、どうやってそっち(・・・)方面・・の欲求の処理・・をなさっておられたので?」

「う、うわぁぁぁぁあぁあぁ、そ、それ以上言うな、兵部尚書!」


「ふっふっふ、結婚されて子供も居るのに、未だに

「椿……。♥。・゜♡゜・。♥。・゜♡゜・。♥。」

「戰……。♥。・゜♡゜・。♥。・゜♡゜・。♥。」

「……。♥。・゜♡゜・。♥。・゜♡゜・。♥。」

「……。♥。・゜♡゜・。♥。・゜♡゜・。♥。」

 という、四弾ぶち抜き点描キラキラバックを背負って、徐々にアップになる見つめ合いをなさるとは……なんつったっけか、コレ!? いや、まあいい! とにかく痒い! 痒くなるおママゴトぶりですぞ!」

「アナタ、それ、昭和ジ○ンプのラブコメ代名詞、『キ○クオフ』ごっこ、ですわ」

「おお、好、ナイスフォローだ」


「……というか、兵部尚書……」

「は、何でしょうか? たとえ陛下と言えども今回は引きませんぞ。父の勇姿をあいに見せてやらねば!」

「いやその……兵部尚書、うしろ、うしろ……」


 戰が恐る恐る指差す先には、ふんがー! と鼻息も荒くしつつ戰に食ってかかっている優の背後から、ゆらぁぁぁぁ……と亡霊のような影が近づいてくる。

 ひゃぁっほうぅ!? と飛び上がる優の前には、あ~なたァ! とザンバラ髪で迫ってくる正室・たえの姿が!


「アナタ! 何故、夫婦が呼ばれる席でわたくしではなくこのそばめが呼ばれているのです!?」

「ええい、やかましいわ! 私のさいといえば、それだけ誰もがこうであると認めているということだ!」

「なんですってぇ!?」


 キィィィィィィィ! と叫びながら優に掴みかかる妙。

 始まった盛大な喧嘩から逃れる為に、こそこそと戰と椿姫、そして好は会場から逃れていった……。



 ✽✽✽



「あら、どうやらどちらも試合放棄のようですわね? 仕方ありませんわ、でわぁ、次の試合とまいりましょう! エントリー・ナンバー3遼国王御夫妻と、エントリー・ナンバー4の河国王御夫妻、どうぞ中央へ!」



「ふふん、因縁の対決だな。よもやこんな形で見えようとは」

 遼国王・灼が胸を反らせると、背後に添うように立っていた涼がたしなめるような視線を向けてきた。

「えー、でも、私もう死んじゃってるしー、別にこんなトコロきたくなかったんだけどー」


 手に越乃寒梅の一升瓶を抱え込みながら、河国王(死亡済)・創がブツブツ行っている。

 腰が引けまくっているのは、灼の鋭い眼光と、どっからくるんだその自信! でもなんか似合うから許すぞ! 的な勝ち組オーラに押されているからである。


「ふん、所詮、その程度か」

 フッ、と鼻でセセラ嗤うアレ(・・)的な侮蔑な笑いを口の端に浮かべる灼だが、美味しいお酒があればいいんだもーん、とばかりに創は一升瓶から手酌しで酒を呑んでいる。


「陛下! いけませんぞ、そのようなやからに言い様に言われて悔しくはないのですか!?」

「え~、また出てきたの、相国~、面倒臭くなるからいいのに~」


「いえ! 言わせていただきますぞ! そもそも、陛下には数多くの後宮の美姫が揃っていたはず! 曲がりなりにも彼女らも陛下と御夫婦と捉えられましょう! なれば彼女らも乱入させましょう!」

「あ~、余計にめんどくさいじゃないか~、も~」

「そうですわ、だいたい、わたくしが許すとお思いなのですか、相国や」


 ギロリッ……と恨み辛みを込めて睨んでくる伽耶の迫力に、ふぬぉ! と息を止める秀。そんな河国王の評価暴落ぶりに、灼は余裕のよっちゃんでカラカラと笑い飛ばす。


「何だなんだ、後宮を連れてきて良いのであれば、わしも亜茶たちを連れてこれば良かったぞ、のう、涼よ」

 はい、と朗らかに答える涼に、満足げに灼は、おう、と答える。


「ふっふっふ、さっさと負けを認めて引っ込まれるが良いぞ、秀殿」

 いつの間にか現れた遼国相国・のびまでもが、腕を組み、うんうん、と頷いている。


 見せつけられた創はさすがに、なんだよコイツラー! なんで正妻と妾が仲良くできる、不思議な世界に生きていられるだよー! と一升瓶抱えて歯軋りしきりである。

 が、酔っ払った創と、もう有り得ませんわ! 帰りたいんですけど! と、これみよがしにブツブツ言ってる伽耶の二人に、勝ち目などありえない。


「ふ、ふーんだ! 我が陛下はなぁ! お前んトコの小坊主と違って、お子様も多数産ませておいでなのだぞー! 何十人と妃を抱え込んだってなー! 一人も懐妊させてない『種無○』に何言われたって、ウチの陛下の方が上なんだーい! ふーんだ! 股にジベレリンでもブッかけられたんだろぉ! この種無○ぃぃぃ野郎ぉぉぉぉぉ!」

「え、ちょ、おま、相国、これちょっと流石に言いすぎ……」

「ふぐぁ!」

「陛下!?」

「へ、陛下! 秀、貴様! 我らもかなり長いこと胸の中にしまっといたヤバい一言だったのに!」


 『種無○』の一言に胸をえぐられてぶっ倒れる灼。介抱にかかる涼は甲斐甲斐しいが痛ましさが漂う。

 燹と秀、互いの国の相国が額をくっつけ合って睨み合う!


 まさに一触即発! 

 その時!

 カンカンカーン! という、ボクシングのアレな鐘の音が鳴り響く。


「はーい、遼国王御夫妻も、河国王御夫妻も、しっかーく!」

「は!?」

「なんですとぉ!?」


「これは、あくまでも『良い夫婦選手権』ですから。『オラが国王さが一番でね選手権』ではありませんの、相国様方が出てきた時点で失格ですわ」


「お、おおおぉぉぉぉぉ……、この燹、な、なんという不覚っ……!」

「陛下、陛下、申し訳御座いませぬ、この秀、次回はこの命に代えましても陛下に勝利を捧げるべく、策を練ります故、平にお許しを!」

「てか、ちょ、相国、おま、もう死んじゃってんじゃん? 何を来年って張り切ってんの?」

 

 燹も秀も、暑苦しいくらいに国王あるじ命! な、態度を示しつつ、グイグイと審判員に追い出されていく。

 気を失っている灼は戰と優とが担ぎ上げて、何とか第二組の夫婦の退場が終わった。



 ✽✽✽



「さ~あ! 大変ですわ! なんということでしょう、退場者失格者続出だなんて! 波乱含みのこの大会! 次のエントリーカップルの勝者が、栄えある第一回の優勝者となってしまいますわ!」

 大盛り上がりの大コーフンで、マイクをブンまわし気味に蓮才人は唸る、吠える!


「さあ! 事実上の今大会の決勝戦ですわ!

 エントリー・ナンバー5の禍国大保御夫妻、そして、エントリー・ナンバー6! 禍国兵部尚書子息夫妻、どうぞ、中央に!」



 ✽✽✽



 用意されていたボックス席で、これまでのグダグダな試合を観戦していた真は、ヤレヤレですねえ、と席を立つ。

 しかし、薔姫が立つ気配はない。


「姫?」

 横に座って、パーティ会場でたらふくご馳走を食べ、更におやつを食べながら観戦していた薔姫は、疲れとお腹がいっぱいになったのと、母親である蓮才人に会えた満足感とで、すやすやと寝入っていた。


 仕方ないですねえ、と苦笑いしながら、真は薔姫を抱いて立ち上がる。

 会場の中央に真が薔姫を抱いて現れると、破れんばかりの歓声と拍手が降り注ぐ。


 さすがにちょっとこれは照れますねえ、と頭を掻きたくなるのを我慢しながら、大保・受と正室である染姫の登場を待つ。


 待つ……のだが、これが一向に現れる様子がない。


「おかしいですね……? どうしたというのでしょうか?」

 首を捻りつつ、真は背伸びをする。


 大保たちの控え室を兼ねたボックス席の様子を探ると、何やら染姫がギャンギャン叫んでいる。

 が、受は素知らぬ顔で目を閉じて、やり過ごしている。

 どうやら受は、先ほどの耳栓をしたまま外していないようで、染姫のヒステリーがまるで聞こえていないらしい。


 泰然自若といえば聞こえがいいが、コレ、耳栓してて聞こえなかったと知られた後の方が怖いんでね? とこっちが恐ろしくなる状況だった。

 なかなか会場に降りてこない受と染姫の方を何度も伺いつつ、蓮才人は時計をチラチラと気にしだした。


 そして。


 カンカンカンカンカァーン!

 ボクシングのアレ的な鐘の音が鳴り響く。


「試合会場に現れない大保御夫妻は、戦いを放棄したものとみなしますわ!

 よって!

 第一回 ✽~いいふぅふの日選手権~✽ の優勝者は!

 禍国兵部尚書子息・真様と、わが娘、祭国郡王義理妹・薔姫のカップルに決定ですわ!」

「へ?」

「おめでとうございますですわ~♦♫♦・*:..。♦♫♦*゜¨゜゜・*:..。♦」


 蓮才人が嬉しそうに宣言すると、更に歓声と拍手は大きく響めき、反響する。

 何だ、このノリ、と呆れていると、薔姫が騒がしさに目を覚ました。


「ん~……我が君ぃ……? どうなったの?」

「はあ、何か知りませんが、どうやら私たちが一番になったようですよ?」

「え? ホント?」


 一番、という響きに、一気に目が覚めたらしい。

 薔姫は、ガバ、と飛び起きる。


 ちょうど、優勝者へと送られる商品の目録を蓮才人が読み上げているところだった。


「京○西川様より、最高級ハンガリー産マザーグースダウン使用キングサイズ布団セット一式と、YES!NO!枕ひと組!」


 思わずズッコケる真。

 おいちょっとまて、と叫びたくなるを必死でこらえている真の襟首を、薔姫が、くい、と引っ張った。


「ねえ、我が君、教えて?」

「はい、何をですか?」


「いえす・のー、まくらってなあに?」

「あ、はい、え~と……そのですね」


「ねえねえ、我が君、なんなの? ねえってば」

「……は、ははは、い、いやその、ですね、い、いつか! いつか、もうちょっと姫が大きくなったら、ね、……ね?」

「え~!? いつかいつか、ばっかりなんて、やだあ、今がいいの! ねえ、いまぁ~!」


 残っていた眠気から、わーん、とグズグズ泣き出した薔姫を抱きながらあやしつつ、真は、泣きたいのはこちらですよ、いったいあと何年このままなんですかねえ……、と呟いた。




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