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そのいちなりよ

その1



 かぽーん


 此処は戰の私邸の、大浴場。

 現代の銭湯よろしく巨大な上に、男湯と女湯に何故かわかれ、しかもご丁寧に番台のようなものまであった。チリチリパーマを「あてた」【 チリチリパーマは「かける」のではなく、「あてる」ものだ! 】おっさんのような昭和臭いオバちゃんがどっかりと腕組をして座っている。


 取り敢えず、真はしょう姫と男湯と女湯にわかれる。

 しょう姫は「我が君と一緒のお風呂に入りたい」と、かなりブツブツ言っていたが、こればっかりは仕方がない。


 ま~・ちょっとは残念ですけど、仕方ないですねぇ。いくら夫婦といっても、男湯と女湯に分かれてはいらなくっちゃ。


 しっかりと掛湯をして身体の垢を落してから、真は浴槽に深々と身を沈めた。

 正直、これは戰が皇子だからこそ与えられた贅沢だ。

 自薔しょう姫だけは当初、母屋で貰い風呂をとらせ、後々湯殿を設えたが、自分ははっきり言って行水だけで済ませている。

 身分の差ゆえに、真は湯には浸かれないのだ。

 行水を取れるだけでもマシな方だと真はケロリとしたものだったのだが、それを戰が気遣って、しょう姫と共に私邸に招いてくれたのだった。


 しかし、戰に誘われて風呂にやってきたは良いが、とうのその戰が急用だとかで共に入れないと言われてしまった。

 ただぼんやりと待っているのも詰まらないだろうから、先に入っていてくれと言われるままに、しょう姫と夫婦二人で浴場へと赴いた、という訳だ。



 いつも冷たい水で済ませている肌に、暖かい湯はこの上もない極楽浄土感を真にもたらしてくれた。

 これは本で読むだけでは得られない知識だ。

「う~ん、広い風呂がこれほど気持ち良いものだったとは……。祭国に行ったら、公営の浴場を設営するべきでしょうかね~……」


 折りたたんだ手拭を頭の上に乗っけて、肩まで熱い湯に浸かると、正直うつらうつらとしてくる。

 と。


「わ~が・きみぃぃ~♦♫♦・*:..。♦♫♦*゜¨゜゜・*:..。♦」

 ん~……なんでしょう姫の声が……本気で寝ぼてるのかな、私は……。


「わ~っがきみッ!。♥。・゜♡゜・。♥。・゜♡゜・。♥。」

「う、うわぁ!? しょ、しょしょしょしょしょ、しょう姫!? な、ななななななんで男湯コチラにッ!?」

「え~? 男湯と女湯の仕切台にいたチリチリ頭の男オバちゃんに『家族はあん人しかいねえのけ?』って言われたから、男湯あっちにいる人だけよって答えたら『そっだら、そっちゃでなぐで、こっちゃこう』って仕切板上げてくれたの~」


 男女別公衆浴場の混浴OKはう~ん、するというと8歳がボーダーラインということですかね?

 ……番台のチリチリ頭男オバちゃん、しょう姫、実に分かりやすり表現をありがとう!

 ――じゃない!


「しょ、しょう姫、ちょ、ちょっと、あのですね」

「ねぇねぇ、我が君、ちょっと教えて欲しいの」

「な、何がです?」


 一応、礼儀として薄い襦袢のようなものを着ているしょうひめだったが、がば~! とそれを御開帳する。


「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


すっぽんぽんになったしょう姫は、くる! と振り返って小さなお尻を真に向けて突き出した。


「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」


「ねぇねぇ、我が君? なんでお尻にこんな青いアザがあるの?」

「ほへっ!?」


「椿姫様のお尻はねえ、丸っこくてぷちぷちして白くてほんわか桃色で、『桃まん』みたいに可愛いのに、私のはこんな青いアザがあるんだもん」

「【 桃まんのお尻、当然脳内構築ぅっ! そしてREC! 永久保存! 】ぅぶぶッ!!!!」


「我が君? なんで鼻血出してるの?」

「……あ、ああ、のぼせたんですよ姫。あと、そのアザは『モーコハン』といって、大人になれば自然に消えるアザですよ……」


「ホント!? じゃあ、我が君、ちゃんと消えていくか、これから毎日見張ってて!」

「い、いえ、姫、見張らなくても大丈夫ですから! と、とにかく出ましょう!」


「ええ~!? 今、入ったばっかりなのにぃ~!?」

「と、とにかく早く!」


 しょう姫の肩に襦袢をかけつつ、自分も腰巻を巻き付けて、後ろからほいほいと背中を押していた真は、何かを足の裏で踏んづけた感覚を覚えた。

 それが舶来品の「石鹸」とかいう、深い碧色の塊の癖に、白い泡をぶくぶくだすやらたと滑るヤツだと知るやいなや、真の体はつるりと滑っていた。


「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」


 つるるる~ん……ごちーん!

 盛大な音をたてて、真は見事にすっ転び、頭を打って大の字になって伸びてしまった。さすがの石頭も叶わなかったらしい。


「我が君っ!? 我が君ぃ~!?」

 慌ててしょう姫が駆け寄る。


「我が君ぃぃぃぃぃ~!!!!!」

 ゆさゆさと激しく真を揺さぶるが、白目を向いて気絶上等・昇天状態だ。


 気が付く素振りも見せない。

 そこへ、がら! と引戸を開け、やっと戰が現れた。


「いやぁぁぁあああん、我が君ぃぃぃぃぃ~!!!!!」

「いや~、済まないな、真、蓮才人からまた小煩く……」


 頭をかきかき浴場に脚を入れた戰は、目を丸くした。

 大の字になって鼻血を出した真に、しょう姫が寄り添って叫んでいる!?


「し、ししししししししし、しんっ」

「お兄上様?」

「お、おおおおおおおおおお、お前、やっぱり!? やっぱり!?」



 その後暫く、戰と真の主従関係がぁゃιぃモノになっていたのは、言うまでもない……。







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