あれから
私情により、終了させていただきます。
朝人が来てから数日。
シェアをしている人とも大体打ち解けて、表情が豊かになってきていた──
「朝人くん、ちょっと買い物頼める?」
休日。尋子が買うものをメモした紙を朝人に渡して言う。
「麻奈美ちゃんは仕事だし、世津奈ちゃんはバイト行ってるから──お願いできる? 私ちょっと近所の集まりがあるから」
「はい、わかりました」
「お願いね」
「はい──」
準備を始める尋子を見ながら、朝人は自分の部屋に行き、財布とスマホをポケットに突っ込んだ。
「よし。行ってきます──」
一声かけてから、玄関を出る。
出る間際に、行ってらっしゃい。という尋子の声を聞いて、はい。と返事をしてから、朝人は歩き出した。
*
「トマト、きゅうり、豚肉、牛乳、ほうれん草……」
メモを見ながら、カゴに入れていく。
「今日は、何を作るんだろうか──」
そんなことを考えながら、会計を済ませ、店を出た。
*
「ただいま──」
「おかえりー」
「おかえり」
「ありがとう。はい、これ代金」
リビングで尋子と買い物袋とお金を交換する。
イスには、麻奈美と世津奈が私服で座っていた。
「じゃあ、作りますか」
「そうですね」
「はい──」
尋子から麻奈美が買い物袋を受け取り、キッチンに移動する。
世津奈と朝人も麻奈美に続いてキッチンに移動する。
「じゃあ、アサがサラダ担当ね」
「はい」
「世津奈は私とメイン作るよ」
「わかった──」
たんたんと準備を進める中、朝人が訊く。
「あの、サラダは何を……?」
「え? 適当に野菜切って器に盛ればいいよ」
「わかりました」
適当に──朝人は冷蔵庫から野菜を取り出し、適当に切って器に盛っていく。
「アサ?!」
「はい?」
麻奈美が器を見て驚いた声をあげた。
「盛りすぎ! それにちゃんと均等に盛るんだよ」
「えっ、まばらですか?」
一つの器は、トマト重視。もう一つはきゅうり重視。そして、どれも量が定まっていなかった。
「見ればわかるでしょ!」
「もうちょっとトマトときゅうり入れ替えたら?」
「あ、すいません……慣れないもので──」
と朝人はトマトときゅうりを入れ替えていく。
入れ替えながら、料理向かないなぁ……と朝人は思う。
でも、ちゃんと出来るようにしないとな、包丁さばきとか……頑張ろ──と心に誓う。
来てから数日。まだまだ、慣れないことが多い朝人の日々は、まだ始まったばかりだ──
短い間でしたが、ありがとうございました。