心羽家のルール
ルールというか、なんというか。
「じゃ、いただきます──」
『いただきます』
テーブルを囲んで麻奈美、その隣に世津奈、前に朝人、隣に尋子の順で座って、カレーを食べる。
「……ん。おいしい」
「でしょう? これから毎日食べられるわよ──」
と尋子は笑う。
麻奈美と世津奈もおいしそうに食べている。
少ししてから、尋子が口を開く。
「じゃあ、規則って言うのかしら。ルールを言っておくわ。麻奈美ちゃんや世津奈ちゃんが来たときも言ったのよね」
「そうそう」
「はい」
「やっぱり、大切なお子さんを預かる身だから、ちゃんとしとかなきゃいけないから。ね」
と朝人に顔を向ける。
朝人は、はい。と頷いた。
「はじめに、一緒に住むからにはちゃんと名前で呼ぶこと。苗字だと何か堅いイメージがするから。またはニックネームとかもいいわね」
「わかりました」
「じゃあ私、アサって呼ぶね」
と麻奈美が手を挙げる。
「はい」
「まあ、そこは本人が嫌じゃないのにしてね──次」
麦茶を一口飲んで、尋子は続ける。
「自分の部屋は、自分で掃除すること。やっぱり、人に勝手に入られたら嫌じゃない? だから。で、土曜日と日曜日は炊事を三人にやってもらいます。毎日やってると、私も嫌になっちゃうから」
「なるほど」
と朝人は頷く。
「アサは料理出来るの?」
「……あんまり」
「ま、大丈夫大丈夫。世津奈もいるし」
「麻奈美さん──」
世津奈は、そんなに出来ませんよ。と横から口を挟む。
「はいはい、で次はお金のことなんだけど」
と尋子は一旦黙らせてから言う。
「私も最近パートやってるし、麻奈美ちゃんは仕事行ってるから、お給料から生活費もらってて、世津奈ちゃんもバイトやってるからお給料から少しもらって今までやってきたんだけど、朝人くんもバイトしてるから、お給料から少し出してくれる? 生活費に回すから。あとは家賃とかに」
「わかりました」
「これで大丈夫ね。あとは質問とかある?」
「質問……」
と朝人は少し考える。
すると麻奈美が手を挙げた。
「歳はいくつですかー」
「ヒミツ」
「いいじゃん、尋子さん。教えてくれたって」
「麻奈美ちゃん。本当に知りたい?」
尋子の目が鋭くなる。
「いいです。知りたくないです」
「でしょ?」
にこりと微笑む。
すると遠慮がちに朝人が口を開いた。
「あの、何でやろうと思ったんですか? その、シェアハウスを」
尋子は、そうね。と前置きして話し始めた。
「夫がね、先に逝っちゃって。それで、やっぱりつまらないじゃない。独りは──でも、こうやって皆で生活出来たら、つまらなくないでしょ? だから」
「……すいません」
と朝人は小さくなる。
そんな朝人に、尋子は笑って言う。
「謝ることないわ。いずれは話すことになったんだし。それが早まっただけの話だから。それに、もう二人は知ってるから」
「うんうん」
「はい」
と二人は頷く。
「そうなんですか」
ほっと朝人は息を吐いた。
「じゃあ逆に質問! アサは、兄弟とかいるの?」
「えっと、姉が一人います……」
「いくつなの?」
「麻奈美さんと同じくらいです……」
「どんな人?」
「うるさいです。あと、酒癖が悪いです」
「まあ、麻奈美ちゃんとそっくり」
と尋子が口元に手を持っていく。
「そんな悪くないよ! ね、世津奈」
「私にふられても……」
困るというように世津奈は顔を背ける。
「ちょっとちょっと。アサ、私そんなに酒癖悪くないからね?」
「ぇ……はい──」
と朝人は目を背けながら頷く。
姉の酔った姿で、容易に麻奈美を想像出来てしまった。
「信じてないでしょ! 私、酒癖悪くないからね!?」
麻奈美の小さな叫びは、悲しいものだった……。
そして、新しい日々の幕が開くのだった──
新しい日々が始まります。
後々、友達やらバイト先の人やら出したいと思います。
休日投稿でしょう。たぶん。