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夏が来た  作者: デンスケ
5/5

正直者は馬鹿を見る。

今回は短めになっています。


不定期ですみません。


よろしくお願いします。

「もう、無理…」


俺は20キロある袋をどさっと落とし、その上に崩れ落ちるように腰を下ろす。


夏とはいえ、あたりは暗くなり、空には星がぱらぱらと見え始めていた。


「ご苦労様。一回も休まずに運べるなんて、結構頼もしいところもあるのね」


桃花はここまで一度も休まずにここまで肥料を運んできたの頭をポンポンと叩き、ほめる。


「やめろよ、恥ずかしい」


俺はその手を右手で払う。


桃花は手を弾かれて不満下な顔になる


「せっかくほめてるんだから、素直に喜んだら?」


こんなことで褒められてもうれしくない。


良いように使われただけなのだから。


「わー、うれしいなー」


投げやりにそういうと、桃花は今度は呆れた顔になる。


「素直じゃないんだから、もう」


そうですとも。素直じゃありませんとも。


俺はまだ桃子にフラれたことから立ち直れずにいた。


きっと、桃花は俺のことを気にかけて家に来てくれたのだと思う。(勝手な妄想だけど)


桃花は人のちょっとした変化にすぐに気づく。


きっと今回もそれなんだと思う。


何があったのかはわからずとも、なんとなくで察しているんだと思う。


「もう遅いし、肥料倉庫にしまいましょう。明日使うから」


「了解」


肥料から腰を上げ、もう一度肥料を持ち上げたその時、



グキッ



あ、…



肥料を肩に乗せて、そのまま後ろに倒れこむ。


「イテテテッテテテテテテ」


「ちょっと!大丈夫!?」


桃花が駆け寄ってくる。


なんだ!?この痛さ、う、動けない。


「動ける?」


桃花は俺の肩を持ち、体を起こそうとする。


「無理!イタッ痛いからやめて!」


「ごめん!」


桃花は俺の肩から手をぱっと放し、それと同時に立ち上がる。


これが、ぎっくり腰なのか?この年にしてぎっくりって、…


痛さでまったく動くことが出来ない。痛さで表情がゆがむ。


「ど、どうすればいいの?」


桃花はテンパっているのか、目が泳いでいる。珍しい。


「とりあえず、ちょっとそっとしておいて」


「分かった。…ふっ、あははは」


桃花は突然笑い始めた。


なんなんだよ、いきなり。


俺が冷めた視線を向けていると、桃花がこっちに気が付く。


「なんか、冷静になってみたら、おかしくて、ぎっくり腰って、あははは」


そんなに笑わなくても良くない?


桃花はおかしくてしょうがないと、文字どおり腹を抱えて笑っている。


「でもさ、なんか今日の淳平はおかしいなって思ってたけど、ぎっくり腰って、あははは」


「ぎっくり腰は関係なくない?俺の様子がおかしいのとはさ」


「えっ?そう?あははは」


どうやら桃花の笑いのツボの入ってしまったらしく、笑いが止まらなくなってしまっている様だ。


「もういいよ、そうやって笑うがいいさ!」


諦めて、空を眺めていると、桃花の笑いが時期におさまっていく。


「はー、おかしかった。ところでさ、淳平なんかあったんでしょ?どうしたの?」


桃花は笑い涙をぬぐいながら質問してきた。


「今聞くか?」


「だって、動けないんでしょ?動けるようになるまで、その話をしよう」


確かに動けないのだが、桃花にあの話をするわけにはいかない。筒抜けになるのは目に見えている。


それに、ぎっくり腰で動けない時にする話ではないと思う。


「嫌だ」


言うわけないだろ?実の姉に。


「そんなこと言っていいのかな?」


桃花は、そういうと、俺の腰に足をかける。


「おい、ないする気だ!やめろ!」


「さあ、白状しなさい、さもないと、分かってるでしょ?」


「くっ」


俺は、バカ正直だとよく宗治に言われる。この時の俺もバカ正直だった。


「…実は」


俺は今日俺の部屋であったことを、なるべく正確にすべて話した。


適当にごまかせばいいものを、正確に。これが正直者というものだ。


「振られたの?桃子に?あっ、だから鞄届けてってことなの?あははははは」


またもや桃花は笑い始めた。


「この白状者!!オニ!」


俺はそう言いながら怒りにまかせて体を起こすと、すっと起き上がることが出来た。ぎっくり腰が治ったようだ。


「良かったじゃない、腰治ったみたいで、そういうことなんだ、それじゃあ、バイト、楽しみにしておいてね」


「バイト?」


「そう、バイト。それじゃあ、腰も治ったことだし、帰ろうか」


桃花はそういうと肥料を担ぎあげた。


肥料をそのまま倉庫にしまい、分かれて解散となった。






今日は散々な一日だった。好きな子には振られるは、人生初のぎっくり腰になるは、桃花にはからかわれる。


今年の夏はスタートでさっそくこけてのからのスタートになった。

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