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夏が来た  作者: デンスケ
2/5

占いはあてにならない

2話です。

不定期になりますが、よろしくお願いします。

月曜の朝はみんな起きられないなんて言うけど、俺にはそれが分からない。


俺は今まで一度だってそんなことを考えたこともなかった。だって、こんなにすっきり起きれるのだから。


目を開け、ゆっくりを体をお越し、目覚まし時計を確認すると6時58分。目覚ましが鳴る2分前だ。


俺はなぜか目覚ましが鳴る前に起きてしまう。2分損した気分から一日が始まる。


顔も洗わず、着替えもせずに茶の間に向かうといつも道理の朝食が用意されている。今日は卵焼きのようだ。


台所を覗くと母がフライパンを洗っていた。


「おはよう」


俺が挨拶すると


「おはよう」


母はいつものように何気なく返す。家は結構家族間の仲は良い。


あいさつを済ませたら、茶の間に戻り、テレビの電源をつけてこたつの自分の席に座る。テレビでは政治のニュースをやっているが、何のこっっちゃ分からない。


食べ始めると間もなく母も洗い物を終えて席に座る。


家の朝の食卓には会話が無い。仲が悪いわけでは無い。さっき言ったように仲は良好といえる。でも、毎日顔を合わせていれば話題もなくなっていくのは必然だと思う。


一言も言葉を交わすことなく食事を終え、食べ終わった食器を台所に持っていき、水道にためてある水の中に沈め、洗面所に向かう。歯を磨き、顔を洗い、自分の部屋に戻り学校の制服に着替える。俺の通う学校はブレザータイプの制服だ。しかし、今は夏服なのでワイシャツだけだ。


特に何も入っていないカバンを持ち茶の間に向かう。カバンに何も入っていないというのは、教科書などは全部置き勉してあるからだ。テレビでは今日の占いコーナーが流れている。俺は毎日これを見てから学校に行く。


「今日の1位はおうし座のあなた、思わぬ人から告白されるかも?ラッキーアイテムは焼きそばパン!」


焼きそばパンって、ずいぶんピンポイントなアイテムだな。まあ、こんな占いがあてにならないことぐらい分かっているが、情けないことながら、こう言う類のものはとても気になったりする。昼は焼きそばパンにしようかな?


1位だったということもあって、気分よく自転車をこぎ、学校に向かう。学校に向かう道、同じ学校の生徒とはほとんど会わない。流石に普通は会うのだが、俺はギリギリの時間に着くように家を出るため、会うことがほとんどない。


占いを見てから家を出るとちょうどいい時間なのだ。占い様様だ。


教室に入って一番最初にすることは時間の確認。8時19分。1分前に到着。よし。



――昼休み


よし、焼きそばパンを買いに行こう。


席から立ち上がり、1階の購買部に向かおうとすると、教室の扉のところで身長の高い短髪の男と鉢合わせた。


「なんか買いに行くのか?」


杉田祐二はクラスメイトでいつも昼飯を一緒に食べる仲だ。


「焼きそばパン買いに」


杉田は顔の前で手を合わせ俺をことを拝みなら


「三浦さん、俺のも買ってきてお願い!」


「なんでだよ」


「いやさ、昼休み部活の集まりがあってさ、俺の席に置いといてくれればいいからさ」


杉田は陸上部で短距離をやっている。よく昼に集まりがあり、昼飯を食べれないという日もしばしば。


「分かった。適当に買っておくから、後で金払えよ」


杉田は少し屈んで両手で俺の肩を掴み、まっすぐ俺の顔を見て


「やっぱり、持つべきものは友達だな。それじゃ頼んだ!」


そういうと陸上部の部室へと去って行った。


流石に忙しそうな友人の頼みを断るほど冷めた心はしていない。しかし、これで今日は一人での昼飯が決定した。虚しい。とりあえず昼飯を買いに行かなくては。友との約束を果たすために。


昼の購買部とはいえ、我が校の購買部は閑散としている。大体の生徒は弁当を持ってくるかコンビニで買ってくる。購買部で買うのは一部の生徒だけだ。俺も日によって、弁当の時もあるし、コンビニの時もある。まあ、大体は購買部だけど。


お目当ての焼きそばパンと杉田の分もろもろを買って教室に戻るり、杉田の席に杉田の分のパンを置き、自分の席に座ろうとすると俺の席はすでに他の人たちに占拠されていた。


さて、どうしようかな?どうしようかな?屋上?熱いよな。他の人の席は借りたくないし、校庭にでも行こうか?


「何突っ立ってるの?」


後ろからいきなり声を掛けられてビクッとなる。振り返るとそこには桃花が立っていた。いや、桃子か?


「桃花よ。今どっちだかわかんなくなったでしょ?」


桃花は目を細め、腰に手を当ててため息を吐く。


「吃驚しただけだって」


桃花は俺の持っている購買部で買ってきたビニール袋に目を向ける。


「ご飯まだなの?」


「ああ、まだ」


「先生の手伝いしててさ、私もまだなんだ。一緒に食べる?」


珍しいこともあるもんだ。


「ああ」


これは、占い1位の効果なのか?きっとそうだ、焼きそばパン買いに行ったから、偶然鉢合わせたってことだろう?占いってばかになんないなあ!


「じゃあ、行こうか」


桃花はそう言うと振り返り教室から出て行った。俺はそれについていく。


生徒会室


「おいおい、良いのかよ?勝手に使って?」


「いいのよ、生徒会役員の特権よ」


桃花は生徒会の会計で次期生徒会長有力候補。桃花はためらいもなく鍵をあける。


それにしても、鍵がかかってるということは、二人きりということなんじゃないか?これも焼きそばパン効果なのか?それに昨日桃花が言っていた、「好きな人」ってもしかして…


おれか?


「何ぼけっとしてんの?早く入んなさいよ」


「あ、はい」


桃花は鍵を抜き、先に生徒会室に入って行った。ぼっけとしている場合ではない、しっかりしなくては。


「適当に座ってよ」


「ああ」


桃花は電気をつけ、しまっていたカーテンを開ける。俺は適当に左から2番目の席に座った。すると桃花が


「あ、そこ私の席なのに」


俺はあわてて立ち上がった。


「何処でもいいっていたじゃん」


すると桃花はクスッと笑い


「ウソよ、冗談だから。私の席はここ」


そういって俺の隣の席にすわった。


「近くない?こんなに席あるんだからさ」


生徒会室にはほかにも10個以上の席が空いている。女子に抵抗が無い、ましてや桃花に隣に座られるとどうしても緊張してしまう。


「しょうがないじゃん、ほんとに私の席ここなんだから」


桃花はそういいながら弁当の包みをほどく。


いや、しょうがなくないじゃん。俺は何も言わずに左に1個ずれると、桃花も一個詰めてきた。


「そこお前の席なんじゃないのかよ?」


「なんで逃げんのよ、良いじゃん」


内心はドキドキでとてもうれしい気持ちでいっぱいなのとは裏腹に、避けるような発言、行動を取ってしまう。はあ、これだからだめなんだよな。俺は。


「まあ、良いけどさ…」


浮かない顔の俺を見て桃花は俺の顔をじっと見る。


「私のこと嫌い?」


「そんなこと無いって!ただ、二人きりだと緊張するというか、いつも四人だから…」


はずみでとっても恥ずかしいこと言ってしまった!!


桃花は恥ずかしくて顔を伏せる俺に桃花は追い打ちをかける発言をする。


「私も…緊張してるよ?」色っぽい声で。


ピキッ


俺は恥ずかしさとうれしさと恥ずかしさで、全身が文字通り、ピキッと固まった。


「何かたまってるの?私が緊張するわけないじゃん?あはは」


石像のように固まっている俺をしり目に、笑いだす桃花。ああ、そういうことですか、冗談ですか。へえ~。


最初は笑っていた桃花だが、いつまでもかたっまたままの俺を見て、やりすぎたと思ったのか心配そうに


「何そんなにショックうけてんの?ちょっとした冗談じゃない」と苦笑いで俺の肩をゆする。


そうさ、ちょっとした冗談。冗談を真に受ける俺が悪いのさははっ。


無性に腹が立ってきた。俺は両手を机について立ち上がり、いきなり立ち上がった俺を見て驚いた顔の桃花に向かって声を張り上げる。


「お前はさ、自分が美人なんだから、そういう冗談あんま言わない方がいいぜ?ほとんどの男子はお前にそんなこと言われたら、本気にするってマジで!」


だって、こんな生徒会室で二人きりで、隣に座り、良い雰囲気の中であんなこと言われたら、そりゃあ、勘違いだって起こすだろう?占いだって、1位だったんだぞ?焼きそばパンも買ったんだぞ?


カッカする俺に向かって桃花はニコニコしながら今度はこんな質問をしてきた。


「ってことは、私のこと好きなの?」


俺は口ごもりながらも、カッカした勢いそのままに声を張り上げた。


「まあ、あれだよ…そうだよ!」


ああああああー!恥ずかし言ったら無いよ!もう!自分でもわかるよ、絶対に顔真っ赤っかだよ。


そんな俺を見て今度はさら軽口をたたく。


「じゃあ、私と付き合ってみる?」


また冗談を、今度は騙されないそう思った。が、それにしては桃花の表情は今までとは違い真面目な顔で、それに嫌に落ち着いた声だった。


その顔を見てなんだか調子がくるってしまった。


「いや、それは…」


口ごもる俺を見た桃花はまたクスッと笑う。


「また本気にして、学習しないなあ。ほら、早く食べないと時間ないよ?」


ですよね、そうですよね。何を本気にしているんだか。流れ的にどう考えて冗談なのに本気にしちゃってさ、ほんとバカだなあ俺…。


二人が食べ終わる頃には、昼休みは終わりに近づいていた。生徒会室からでて、鍵を閉める。鍵を閉めながら桃花がかしこまった声で話し始めた。


「あのさ、そろそろ夏休みじゃん?家の果樹園さ、夏休み梨狩りやってるんだけど、人手足りなくてさ、バイトしない?ほら、宗治は部活だし、頼めないからさ。」


よくもまあ人であれだけ遊んだ後にお願いができるなあ。でも確かに夏休みは暇だ。特に部活をしているわけでは無いし、金もない。家でゴロゴロしているぐらいなら、


バイトした方が有意義だ。


「やるよバイト」


桃花は手こずりながら鍵を抜き


「ありがとう、じゃあ後で日時は連絡するからね」


キーンコーンカーンコーン


昼休み終了のチャイムだ。


「ヤバッ、早く戻らないと」桃花が言った。


俺らは急いで教室に戻ることにした。




――放課後


放課後はみんな部活。でも帰宅部の奴らもいる。たとえば俺とか。


軽いカバンを持ってそそくさ家に帰ろうとすると、下駄箱のところに長い黒髪の女子を発見。桃花か?桃子か?後ろ姿だけでは見当がつかない。


「おい、今帰り?」


後ろから声を掛ける。すると、ビクッとなり、バッと長い髪を振りながらこちらに振り返る。


「淳平かよ」


桃子だった。後ろから声かけないでよと言いながら乱れた長い髪を手櫛で整える。


「桃子、部活は?」


「私はゲームすることが部活のようなもんだから」


綾瀬姉妹の残念な方は姉とは違い、ふらふらしている。


「ねえ、淳平ん家に行っていい?」


おっと占いの効果か?靴をはきかえながら嬉しさを表情に出さないようにこらえる。


「家に帰ってゲームじゃなかったのかよ?」


桃子はふふふっと意味ありげな微笑みを浮かべながら口の前で人差し指を立てて低い声で


「淳平の家でゲームする」


ゲーム目当てだとしてもうれしい。昼は姉と飯を食い(遊ばれたけど)放課後は妹とゲーム。素晴らしい日なんじゃないか?そうなんじゃないか?やっぱり焼きそばパンのおかげなんじゃないか!?


ピピピピピピピピ


「あ、私のだ」


桃子の携帯の着信音のようだ。桃子は携帯を開き、メールを確認すると、そのままとぼとぼ歩き始めた。どこに行くんだ?


「どこに行くんだよ?」


桃子は携帯を見たままだ。カコカコとメールの返信を打っているらしい


「ごめん、用事出来たから帰る」


と、言い残しそのまま行ってしまった。


あ、そうですか。


俺はそのまま自転車置き場に向かい、5時だというのにさんさんと照る太陽の下、自転車をこぎ帰ることにした。


部活、やろうかなあ。

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