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玄関の先に

「三波。」



玄関を出るとそこに敦司が立っていた。十波に見せていたくだけた表情はない。













あのあと、十波の復習とやらは終わらず三波は二人を残して家に帰った。母へのプレゼントはまた別の日にいけばいい。


部屋へ帰ったのが6時の話。

どうやらウトウトしていたらしく目が覚めると8時を回っていた。


目をこすって部屋を見渡すとすっかり日も陰り、室内は薄暗くなっていた。手元のリモコンで部屋の明かりをつけ、ベッドから起き上がる。


三波の年頃の姉妹には珍しく、二人はいまだに2段ベッドで寝ていた。部屋は別にあるのだが、ベッドだけは三波の部屋に置いてある。部屋をわけた際にベッドを後回しにし、ものぐさ家族がそのままにした結果がこの始末だ。


三波は下、十波は上。


木目調のアイボリー色をしたベッドは二人のお気に入りだ。ベッドから起き上がり、上を見るが十波がいないところを見るとまだ帰ってきていないのだろう。




「お母さん、ちょっとコンビニいってくるね。」


階下に降りて、母に告げると50も近い母は驚いた顔を見せた。


「あら?いたの、三波。十波と出かけるって言ってたからてっきり三輪さんちからそのまま行ったのかと思ってたわよ。」


「そのつもりだったんだけど、十波が三輪さんちで敦司君にテストの復習受けてるの。邪魔しちゃ悪いからこっそりひきあげてきちゃった。」


「そうだったの。敦司君も本当に熱心にやってくれてるわよね。今度また何か敦司君の好きなものでも差し入れしようかしら。あ、ご飯いる?」


「ううん、物理のノート欲しいからちょっとコンビニまでいってくるよ。」


「そう、じゃ用意しておくわね。」




明日使う物理のノートだけは今日中に手に入れなければならない。



近所のコンビニまではものの5・6分でつく。ついでに十波にデザートでも買ってきてやろうか。

ずっと平均ギリギリだった十波が、最近は通知簿に高得点がずらりだ。敦司の家庭教師はなかなかの成果をあげているらしい。頑張った可愛い妹へのご褒美だ、十波の喜ぶ顔が浮かんだ。








玄関を出たところで、敦司に呼び止められた。




「三波。」



「え、敦司君!?どうしたの?」



え、なに。なんで敦司君がうちの前にいるの?


無意識に緊張が走る。とてもお隣に住む幼馴染とは思えない緊張感だ。


「さっき、コンビニで三波にノート買ってきたけど渡すの忘れててさ。

 気がついたら三波帰ってたし。」



「あ・・・ご、ごめん。っていうか、買ってくれてたの!?うわ、ごめん。ありがとう!!」


「あの流れで買ってこなかったら俺、鬼だろ。」


「あ、そんなつもりで言ったんじゃ・・・。」


「・・・。」


「・・・。」




き・気まずい。顔がこわばっている自覚がある。敦司も目を合わせてこない。

本当に苦手だ。いい人なのはわかっているが、もう今やそういう問題ではない。あえていうならこれは長年積み上げてきた「苦手意識」だ。小学4年生の頃、1つ下の敦司が引っ越してきてから始まったこの関係も今では12年目だ。歴史は長い。


十波なしで敦司に向き合うなんて到底できるわけがない。



「どこかいくわけ?」


「・・・コンビニに。」


ノートを買ってきてもらえたなら行く必要はない。でも、この場から逃げる言いわけにとっさに口をついて出てきてしまった。


「・・・そう。」





沈黙。





気まずすぎる沈黙である。


ノート、渡したのになんで帰らないの。。

何か用があるとか?






「ついて行ってやろうか。」








なんで!!?






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