第6話:『天駆ける聖女――白銀は共鳴する』
黄金の光をまとい、空から舞い降りたのは、透き通るような銀髪を持つ少女だった。
彼女が背負う機械仕掛けの翼が、光の粒子をまき散らしながら静かに閉じていく。
「……あ、あぁ……ルナ様! ルナ様、助けてください! この泥棒めを、今すぐ処罰して……!」
泥まみれのカインが、すがるように彼女の裾を掴もうとする。
だが、聖女と呼ばれた少女――ルナは、冷徹なまでに彼を一瞥もしなかった。
彼女の瞳が見つめているのは、ただ一点。
俺が駆る、白銀の巨神『ゼクセリオン』だけだ。
「……ようやく、見つけました」
ルナが歩み寄る。
一歩、近づくたびに、ゼクセリオンのコックピット内に警告ではない、心地よいメロディのような共鳴音が響き渡る。
『ピポ……!? アルト、これ見て! ゼクセリオンの出力が、勝手に上がっていくよ!』
ビットが驚きの声を上げる。
モニターに映し出される数値は、何もしなくても限界を超え、白銀の装甲が淡く発光し始めていた。
俺は吸い寄せられるように機体を降り、地面に足をつけた。
目の前には、絵画から抜け出してきたような美少女。
「君は……ルナ、なのか?」
「……やはり、あなたは『答え』を知っているのですね」
ルナは優しく微笑むと、ゼクセリオンの脚部にそっと手を触れた。
その瞬間、俺の右目【ガラクタ鑑定】が、かつてないほどの輝きを放つ。
《ロスト・レジェンド:【聖女の鍵】を検知》
《ゼクセリオン・第ニ形態への進化パスを解放しますか?》
「……進化?」
「アルト様。この機体は、ただの兵器ではありません。失われた光を繋ぎ、世界を再定義するための『審判の器』なのです」
ルナの声は、直接脳内に響くような不思議な響きを持っていた。
「エクリプス軍は、この力を独占し、世界を恐怖で染めようとしています。……どうか、私と共に来てください。この子が、本当の姿を取り戻すために」
「……ちょっと待て! 勝手に話を進めるな!」
割り込んできたのは、コーヒーカップを片手にしたセシルだ。
彼は剣の柄を握り、ルナを警戒するように俺の前に立った。
「聖女ルナ……エクリプス教団の象徴が、なぜこんなゴミ山上がりの男に接触する。これは罠ではないのか?」
「罠かどうかは、アルト様の『目』が一番よく知っているはずですよ。……騎士様」
ルナの真っ直ぐな視線が、俺を射抜く。
俺は、自分の右目を見た。
鑑定結果は、嘘をつかない。
彼女から溢れるエネルギーは、ゼクセリオンのそれと全く同じ、純粋で、どこか懐かしい光だった。
「……わかった。あんたを信じるよ、ルナ」
「感謝します、アルト様」
その時、遠くから無数の駆動音が響いてきた。
カインの失態を聞きつけた、エクリプス軍の本隊――「黒色騎士団」の主力部隊だ。
「追手ですね。……アルト様、ゼクセリオンの『真の翼』、見せていただけますか?」
「ああ。……リンク・アップ! ゼクセリオン、再定義!」
ルナの光を受け、ゼクセリオンの背中から、光り輝く白銀の翼が展開された。




