第5話:『公開処刑――その新兵器、俺が直したゴミ以下だぞ』
「――これこそが、我がエクリプス軍が誇る救世の輝きである!」
街の中央広場。
集まった大勢の民衆と有力者たちの前で、カイン・エクリプスは高らかに宣言した。
彼の背後には、漆黒の装甲に身を包んだ新型ロボ『エクリプス・ゼロ』が鎮座している。
俺が軍にいた頃、心血を注いで調整していた機体だ。
「無能な鑑定士を追放し、真のエリートのみで完成させたこの機体があれば、我が軍は不滅! 泥棒同然に逃げ出したアルトなど、もはや過去の遺物よ!」
カインの嘲笑に、取り巻きの兵士たちが下卑た笑い声を上げる。
だが、その笑いは、地響きとともに断ち切られた。
ズゥゥゥゥゥゥゥン!!
広場の入り口から、一台の機体が姿を現す。
泥にまみれ、ガラクタを纏いながらも、その芯から溢れる白銀の輝きは隠しようがない。
『ゼクセリオン』。
「な……アルトか! 貴様、どの面下げて戻ってきた!」
「カイン。あんた、その機体を『完成させた』って言ったな」
俺はゼクセリオンの外部スピーカー越しに、冷静な声を届けた。
「ああそうだ! 貴様の介在する余地などなかったのだ!」
「……だろうね。だから、あんたは気づかなかったんだ」
俺はゼクセリオンの指先を、黒い新型機へと向けた。
右目の鑑定が、その機体の内部構造を透かし見る。
「右肩の動力パイプ。俺がいた時は『強度不足』で廃棄リストに入れてたはずだ。それを、見栄えがいいからって無理やり繋ぎ直しただろ?」
「な、何をデタラメを……! 衛兵、やれ! そのガラクタを粉砕しろ!」
カインの命令で、新型機が巨大な剣を振りかざして突進してくる。
だが、ゼクセリオンは一歩も動かない。
「ビット、エネルギー反転。鑑定データをフィードバックして」
『了解! 一番弱いところ、見ーっけ!』
ゼクセリオンが、新型機の剣を「人差し指」一本で受け止めた。
キィィィィィィィィン!!
凄まじい衝撃音が響くが、ゼクセリオンは微動だにしない。
逆に、新型機の右肩から不吉な火花が散り始めた。
「な、なぜだ!? 出力はこちらが上のはずだぞ!」
「出力の問題じゃない。……構造の問題だ」
俺は静かに告げる。
「あんたがゴミだと捨てた俺の【鑑定】。それがない機体なんて、俺からすれば……ただの欠陥品の寄せ集めだよ」
ドォォォォォォォン!!
俺が指摘した右肩が、自らの出力に耐えきれず爆発。
新型機は無様に膝をつき、そのまま広場の地面に転がった。
「あ、ありえない……! 私の、私の最高傑作がぁぁぁ!!」
泥まみれになり、観衆の前で這い回るカイン。
かつての傲慢な姿はどこにもない。
民衆は沈黙し、やがて一人の子供が声を上げた。
「……すげえ。白銀のロボットの方が、ずっと強いや!」
その声は、瞬く間に広場全体へと広がっていく。
カインの権威が、ガラガラと音を立てて崩れていくのが分かった。
だがその時。
空から、見たこともないほど巨大な光の翼が舞い降りた。
「――そこまでです」
凛とした声。
ゼクセリオンのセンサーが、これまでで最大の反応を示す。
「……ルナ?」
俺の口から、なぜか知らないはずの名前がこぼれた。




