第4話:『騎士の魂、巨神の剣――シンクロ・リンク』
「……速いっ! 鑑定が、追いつかない……!」
ゼクセリオンのコクピットで、俺――アルトは歯を食いしばった。
目の前で火花を散らすのは、エクリプス軍が放った無人暗殺機『スローター・エッジ』。
人型を捨て、四足歩行の獣のような姿をしたその機体は、スクラップの壁を蹴り、残像を残して迫り来る。
『アルト、危ない! 左、時速400キロで突っ込んでくるよ!』
ビットの警告で間一髪、ゼクセリオンの腕でガードを固める。
ガキンッ、と激しい金属音が響き、装甲が火花を散らした。
「くっ……パワーはないが、この速度で急所を狙い続けてくるとは……!」
「主殿あるじどの! 落ち着け! その鉄屑は速いのではない、予備動作がないだけだ!」
生身で、飛来する破片を避けながら叫ぶのはセシルだ。
彼は、常人には見えないはずの暗殺機の動きを、その鋭い眼光で捉えていた。
「セシル、何か対策はあるのか!?」
「我が一族に伝わる『無拍子の位』……筋肉の動きを消し、最短距離で断つ剣技だ。主殿、私の動きを、その『鑑定』とやらで読み取れるか!」
セシルが瓦礫の上で、折れた剣を構える。
その瞬間、彼の存在感が消えた。
俺の右目が、熱を帯びる。
《固有スキル:セシルの剣術ログを解析中……》
《完了。ゼクセリオンの駆動OSへコンバートします。同調率80%》
「いける……! ビット、右腕の出力設定をセシルの重心移動に合わせて最適化して!」
『了解! シンクロ・リンク、開始!』
俺はゼクセリオンの右手を、近くに突き刺さっていた「巨大な鋼鉄の支柱」へ伸ばした。
「鑑定……リンク・アップ! 【剛剣・アンスレイ】!」
ただの鉄の棒が、ゼクセリオンの魔力とセシルの技を宿し、白銀の光を放つ。
暗殺機が、とどめを刺すべく空中で身を翻した。
まさに、死神の鎌が振り下ろされるその瞬間。
「――そこだ」
ゼクセリオンが動いた。
巨体からは想像もできない、無駄のない最小限の旋回。
「『秘剣・一ノ型』……」
セシルの声と、ゼクセリオンの駆動音が重なる。
「――絶ぜつッ!!」
一閃。
横一文字に振られた鉄の柱が、空中の暗殺機を、その核コアごと一刀両断にした。
爆発。
炎が夜のゴミ山を照らし、二つに割れた暗殺機が泥の中に沈む。
「……ふぅ。すごいな。セシルの技をトレースしただけで、あんなに動きが変わるなんて」
「ふん……。私の技を、これほど巨大な鉄人てつじんで再現するとは。主殿、貴様もなかなかどうして、狂っているな」
セシルはそう言って、初めて不敵に笑った。
『ピポッ!(ボクの計算のおかげだよ!)』
ビットが誇らしげに周囲を飛び回る。
勝利の余韻。だが、破壊された敵機の残骸から、一つの不気味なホログラムが投影された。
『……テストデータ回収、完了。ゼクセリオンの起動を確認……』
それは、カインの冷酷な声だった。
「カイン……まさか、俺たちを試していたのか?」
俺はゼクセリオンの拳を強く握りしめた。
本当の戦いは、まだ始まったばかりだったんだ。




