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第3話:『騎士と機械と、時々、コーヒー』

「……信じられん。この私が、家宝の剣を直された恩義があるとはいえ……」


銀髪を揺らし、泥のついた騎士服を払っている男がいる。

セシルだ。


彼は元・エクリプス軍の有望株だったが、カインの汚職を告発しようとして逆に追放された、絵に描いたような「不器用な正義漢」である。


「ねえセシル、そんなに突っ立ってないで、そこに座ってよ」


俺が作業の手を止めずに言うと、セシルは顔を赤くして反論した。


「座れるか! どこを見ても歯車とネジしかないではないか。万が一、我が尻で重要な部品を潰してしまったら……」


その時だった。

セシルの足元で、丸い球体が不機嫌そうに光った。


『ピポッ! ピー、ピピピ!(そこ、ボクが並べたネジ! どいて、この銀髪デカブツ!)』


「なっ……!? い、今、この鉄球は私を侮辱したのか!?」


セシルが驚いて飛び退くと、ビットがパカッと変形し、小さなマジックハンドをわきわきと動かした。


「あはは、ごめんセシル。ビットはちょっと綺麗好きなんだ」


ビットはセシルの足元まで転がっていくと、掃除機のような音を立てて、セシルが持ち込んだわずかな土埃を吸引し始めた。

そして、セシルのブーツの先を「ペシペシ」と叩く。


「な、なんだ。掃除をしているのか? ……ふん、殊勝な心がけだ。機械にしては」


セシルが少し表情を緩めた、その瞬間。


『プシュッ!!』


ビットの排気口から、吸い込んだ埃がセシルの顔面にピンポイントで噴射された。


「ゴホッ、ガハッ!? 貴様ッ! やったな! この鉄屑め!」


「ピピピピピ!(自業自得だー!)」


セシルが鞘のまま剣を振り回し、ビットは空中に浮かんでそれをヒラリと避ける。

狭い洞窟の中を、一人と一機がぐるぐると追いかけっこを始めた。


「こら、二人とも。……あ、そうだ。ビット、セシルにお詫びのコーヒーを淹れてあげて」


アルトの指示で、ビットは背中のハッチから小さなドリップセットを取り出した。

驚くセシルの前で、ビットは手際よく豆を挽き、正確な温度の湯を注いでいく。


「……ほう、香りは悪くないな。……むぐっ」


差し出されたカップを一口飲んだセシルが、目を見開いて硬直した。


「……どう? ビットのコーヒー、美味しいでしょ」


「くっ……認めん、私は認めんぞ……! こんな、生意気な球体が淹れたものが、王都のカフェより美味いなどと……っ!」


そう言いながらも、セシルはカップを離そうとしない。

ビットは得意げに「ピポポ!」と勝利宣言の声を上げた。


俺は苦笑しながら、再びゼクセリオンの【鑑定】に戻る。

(賑やかになったなぁ。……でも、これなら退屈しなさそうだ)


だがその時、ゼクセリオンの瞳が赤く点滅し、警告音を鳴らした。


「……敵か。セシル、コーヒーはそこまでだ。準備して!」


「ふん、言われずとも。主殿あるじどのの背中は、この私が守ろう!」


ゴミ山に響く、騎士の号令とロボットの電子音。


俺たちの、本当の戦いがここから始まる。

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