第24話:『絶望の初期化(リセット)』
「……カ、ハッ……。なぜだ、なぜ俺が……ガラクタのお前に……」
黒い泥を吐き出しながら、アビスの残骸とともにカインが崩れ落ちる。
ゼクセリオンの白銀の剣が、カインの胸元で止まっていた。
「……カイン、お前は鑑定を間違えたんだ。世界をゴミだと思った時、お前自身もゴミになった」
アルトが冷静に告げたその時、玉座の奥から、心臓を鷲掴みにされるような「音」が響いた。
ドクン。
「……お見事だ、アルト。カインという『不純物』を排除し、白と黒が一つに混ざり合った」
皇帝が立ち上がる。その背後の壁が開き、そこには巨大な『世界の心臓』が脈打っていた。
「アビスとゼクセリオン。二つが揃い、極限まで高まった今こそ……神の鑑定を執行する時。……全物質の、初期化を開始せよ」
ゴォォォォォォォォッ!!
帝都の塔から、空を突き破るほどの巨大な光の柱が放たれた。
それは雲を焼き、空の色を「無」の色へと塗り替えていく。
地上のあらゆる建物、植物、そして人間までもが、デジタルノイズとなって分解され始めた。
《警告:世界再定義が承認されました》
《鑑定対象:全人類……判定『不要』。消去を開始します》
「やめろ……。こんなの、俺の望んだ鑑定じゃない!」
アルトが叫ぶが、ゼクセリオンのシステムもまた、巨大な意志に飲み込まれていく。
『アルト……、ごめん……。ボクのプログラムが、書き換えられちゃう……。ボク、君の友達じゃなくて……ただの消去ツールに……っ!』
ビットの瞳から光が消え、無機質な赤色に染まる。
「ルナ! ルナ、しっかりしろ!」
隣にいたルナの体も、透き通り始めていた。
彼女は悲しげな笑みを浮かべ、アルトの頬にそっと手を伸ばす。
「……これが、私の正体。リセットのスイッチなんです。……アルト様、どうか……私ごと、この世界を……」
「嫌だ……。そんなこと、絶対にさせない!」
右目のセンサーが、崩壊していく世界を映し出す。
ガストンたちが戦っている街も、セシルが守っていた門も、すべてが「消去」のカウントダウンに飲み込まれていた。
「……鑑定しろ。……鑑定しろ、俺の右目!!」
アルトは自分の脳が焼き切れるのを覚悟で、システムそのものを『逆鑑定』し始めた。
「このリセットの『バグ』を……、この絶望を覆す『ガラクタ』を……見つけ出せ!!」
視界が真っ白に染まり、世界の終わりを告げる鐘の音が響き渡る。




