第23話:『玉座の間――皇帝とカインの再会』
塔の最上階。重厚な扉を突き破った先には、静寂が支配する巨大な謁見の間が広がっていた。
玉座に鎮座するのは、エクリプス帝国皇帝。
そしてその傍らで、異様な黒いオーラを放ちながら立ち塞がっているのは――。
「……ようやく来たか。ゴミ山のアリん子が、ここまで這い上がってくるとはな」
歪んだ笑みを浮かべる男。かつてアルトからすべてを奪い、追放した元親友、カインだった。
「カイン……。お前、その姿は一体……」
カインの半身は、漆黒のナノマシンに侵食され、血管のように脈打つ赤いラインが肌を這っていた。
右目のセンサーが、カインの生命反応を「鑑定」し、警告を鳴らす。
《警告:対象は人間ではありません。アビス・コードとの完全融合を確認》
「力が欲しかったのだよ、アルト。お前を、そしてこの不完全な世界を、根底から否定するための絶対的な力がな!」
カインが手をかざすと、玉座の影から漆黒の巨神『アビス』が姿を現した。
カイン自身の憎悪と融合したアビスは、以前よりも禍々しく、その輪郭を陽炎のように揺らしている。
「カイン、目を覚ませ! それは力なんかじゃない、ただの『呪い』だ! お前自身も、その機械に食われてるんだぞ!」
「黙れッ! 鑑定しか能のない出来損ないが、偉そうに説教するなァ!!」
アビスが吠え、黒い衝撃波が玉座の間を粉砕する。
「……アルト。お前の『鑑定』で、この男を、そして私を救えるか?」
玉座に座る皇帝が、初めて口を開いた。その瞳は、すべてを見透かしたように冷たく、それでいてどこか「答え」を待っているかのようだった。
「皇帝……。あんたが何を企んでいようと関係ない。俺は、俺の大事なものに手を出すガラクタを……片っ端から片付けるだけだ!」
「ふん。ならば見せてみよ。……世界を再定義するに足る、貴様の意志を」
皇帝の合図とともに、カインとアビスが一体となって襲いかかる。
ガギィィィィィィィィン!!
ゼクセリオンとアビスの剣が交差し、火花が散る。
「リンク・アップ、ビット! カインの『心のガラクタ』ごと、叩き切ってやる!」
『了解だよ、アルト! ボクたちの絆、その偽物の黒色に見せつけてやろう!』
白と黒の火花が、崩壊する玉座の間を埋め尽くす。
復讐から始まった物語が、今、宿命との対峙へと変わる。




