第2話:『そのスペック、規格外――伝説の再定義』
「……はぁ、はぁ……。やった、のか……?」
静寂が戻ったスクラップ山。
俺――アルトは、白銀の巨神『ゼクセリオン』のコクピットで、荒い息を吐いていた。
目の前には、エクリプス軍の最新鋭重機ロボだった『鉄屑』が転がっている。
ただの一撃だった。
一撃で、軍の誇る装甲を紙細工のように引き裂いたのだ。
「……ステータス表示」
俺は震える手で、空中に浮かぶ半透明のウィンドウを操作した。
【ガラクタ鑑定】がゼクセリオンとリンクしたことで、これまで見えなかった詳細な情報が流れ込んでくる。
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【機体名】ゼクセリオン
【動力源】アンサー・エンジン(出力:ERROR)
【装甲値】測定不能(自己修復機能:アクティブ)
【スキル】
・全パーツ再定義:周囲のガラクタを最適パーツへ変換する。
・虚空歩行:短距離の空間転移を可能にする。
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「なんだこれ……バグってるのか?」
出力ERROR。
通常の重機ロボの出力が『1200』程度であることを考えると、文字通り桁が違いすぎる。
「ピポッ! ピポピポ!」
その時、足元で電子音が響いた。
見ると、ゼクセリオンが拾い集めたガラクタの中に、一つだけ妙に激しく発光している球体がある。
俺がそれを手に取ると、視界に新たな『文字』が走った。
《神話級ナビゲーター:ビットを検出しました》
《ゼクセリオンの補助システムとして、再構築リンク・アップしますか?》
「実行だ!」
俺が叫ぶと、球体は瞬時に銀色の外装へ変貌し、空中にふわりと浮き上がった。
『ピポポ! リンク完了! アルト、よろしくね!』
「……喋った!?」
驚く俺をよそに、ビットはゼクセリオンのコクピット内に陣取り、周囲のレーダーを勝手に展開し始めた。
だが、感傷に浸る時間はなかった。
『アルト! 上空に高エネルギー反応! エクリプス軍の第二波が来るよ!』
ビットの警告と同時に、空が割れた。
現れたのは、カイン直属の精鋭部隊――『黒色騎士団』。
「……見苦しいぞ、アルト。その白銀の機体、どこで盗み出した?」
拡声器越しに聞こえるのは、聞き慣れた、反吐が出るほど傲慢なカインの声だ。
「カイン……わざわざ自分からやってくるとはな」
「ふん。その不格好なガラクタ人形を差し出せば、命だけは助けてやろう。……もっとも、両手足をもいでスラムの肥溜めに放り込んだ後だがな!」
カインの合図で、一斉にミサイルが放たれた。
数十発の炎が、ゼクセリオンへ殺到する。
「アルト、右の鉄屑を鑑定して! パーツに変換できるよ!」
ビットの叫びに従い、俺は瓦礫の中に転がっていた『壊れた大型冷却ファン』を指さした。
「鑑定……リンク・アップ! 【ブレイズ・アーム】!」
瞬間。
ゼクセリオンの右腕が、周辺の熱を吸収し、真っ赤な高熱を帯びた。
降り注ぐミサイルが、ゼクセリオンに触れる前に、熱波だけで爆発四散する。
「な……何が起きた!? ミサイルを……蒸発させただと!?」
狼狽するカインに、俺はゼクセリオンを加速させた。
「カイン、あんたに教えてやるよ。俺の鑑定は、ゴミを拾うためのものじゃない」
ゼクセリオンの右拳が、紅蓮の炎を纏う。
「世界を、塗り替えるための力だ」
一閃。
炎の拳が空を薙ぎ、カインの精鋭部隊の半分を、ただの熱風だけで吹き飛ばした。
「……これこそが、失われた光の答えだ」
炎の中に立つ白銀の巨神を見て、カインは絶叫した。
「ありえない……! あんな無能の鑑定士が、なぜこれほどの力を――!!」




