第16話:『空中艦隊を墜とす者』
ドォォォォォォォォォォン!!
地下都市の排気口を突き破り、白銀の閃光が空へと噴き出した。
「……な、何だ!? 地下から、何かが来るぞ!」
空中を埋め尽くしていたエクリプス軍の艦隊から、動揺の叫びが上がる。
雲を切り裂き、爆炎の中から姿を現したのは、右目に紅い大型センサーを、全身に無骨な外部装甲を纏った――新生ゼクセリオンだった。
「アルト……。貴様、死に損なっていたのか!」
艦隊の中央。大破した機体を強引に修理したヴァルガスの『グロリアス』が、四本の腕をこちらへ向ける。
だが、今の俺には、その動作が止まって見えた。
「右目、同期。……艦隊全ての、弱点ポイントを確認」
脳内に流れ込む、無数の幾何学的ライン。
地下の仲間たちが作り上げた新しい『目』は、一万個を超える敵艦のパーツの中から、連鎖爆発を引き起こす「たった一つの歯車」を正確に示していた。
「ビット、エネルギーの指向性を左腕に。……セシル、露払いをお願い!」
「承知ッ! この新しき剣、その身で味わうがいい!」
ゼクセリオンの肩から、セシルの剛剣を模した超大型の振動ブレードが展開される。
一閃。
真空を切り裂くような衝撃波が、接近してきた敵の飛行部隊をまとめて塵へと変えた。
「……バ、バカな! 我が軍の誇る重装甲機が一瞬で!? 全艦、撃て! そのバケモノを空から叩き落とせ!」
ヴァルガスの絶叫とともに、数百門の主砲が一斉に火を吹く。
かつて俺たちを絶望させた光の雨。
「鑑定……『ゴミ』判定。……そんなバラバラな攻撃、俺には当たらない」
俺は操縦桿を最小限に動かした。
光の弾幕の「隙間」を縫い、ゼクセリオンが空を舞う。
右目が示す回避ルートは、まるで糸を通すような正確さで俺を安全圏へと導いていた。
「ルナ、出力を貸してくれ。……艦隊まるごと、再定義する!」
「はい、アルト様。……私たちの、新しい未来のために!」
ルナの祈りが光となり、ゼクセリオンの胸部に収束していく。
「――再定義:【銀河墜】!!」
ゼクセリオンの拳が空を叩く。
放たれたのは破壊の光ではない。敵艦隊の動力炉に「過負荷の信号」を強制的に送り込む、電子の嵐(EMP)だ。
ガガガガッ、とノイズが走り、一隻、また一隻と、空中艦のエンジンが火を吹いていく。
「あ、ありえない……。我が精鋭艦隊が、ただ一機の攻撃で……っ!?」
空を覆っていた黒い影が、次々と火だるまになって地上へ墜ちていく。
それはまるで、偽りの夜が明け、本当の星が降るような光景だった。
「……次はあんたの番だ、ヴァルガス。その『七星』の座、ガラクタとして俺が回収してやる」
爆発の連鎖を背に、新生ゼクセリオンが敵の総旗艦へと牙を剥いた。




