第15話:『再定義(リ・アンスレイ)! 新生ゼクセリオン』
火花が舞い、金属を打つ音が地下都市の空気を震わせる。
「……いいか、アルト。お前の右目はもう元には戻らねえ。だが、人間には作れない『目』なら、俺たちがいくらでも作ってやる」
ガストンの合図とともに、巨大なクレーンが新しいヘッドパーツを吊り上げた。
それは、アンダー・ギアが何十年もかけて軍の残骸からかき集めた、最高純度の超伝導センサーの塊だ。
「……やるよ、ビット。準備はいいか?」
『ピピッ! もちろんだよ! ボクも新しいサブプロセッサを積んでもらったからね。今のボク、軍のスパコンより速いよ!』
俺はゼクセリオンのコックピットに潜り込み、神経接続用のプラグを首筋に差し込んだ。
一瞬、脳を焼くような感覚。
だが、今度は痛くない。地下の仲間たちが調整してくれたフィルターが、俺の負荷を肩代わりしてくれている。
「――リンク・アップ! 【再定義】!」
ガガガッ、と重厚な機械音が響き、ゼクセリオンの外装が組み換わっていく。
軍の規格を完全に無視し、実用性と拡張性だけを突き詰めた「継ぎ接ぎ(パッチワーク)」の装甲。
だが、その隙間から漏れ出す光は、以前よりも鋭く、そして力強い。
「……見える。……見えるぞ!」
真っ暗だった右側の視界に、デジタルの光が奔流となって流れ込んできた。
外部センサーが捉えた熱源、空気の震え、そして敵機の構造ログ。
失った右目は、ゼクセリオンの『目』と完全に同期し、人間の限界を超えた「神の視界」へと変貌していた。
「すごい……。これなら、あの七星の攻撃さえ、スローモーションに見える……!」
「アルト様……」
いつの間にか目を覚ましていたルナが、ゼクセリオンを見上げていた。
彼女の目には、単なる「部品」としてではない、一人の戦士としてのアルトが映っているようだった。
「ルナ、待たせたな。……セシル、準備はいいか?」
「ふん。遅すぎるくらいだ、主殿。この新しい剣の重さ、試したくてうずうずしていたところだ」
セシルの手には、地下都市の職人が打ち直した、超振動破砕機能を備えた巨大な剛剣が握られている。
「よし……行くぞ! アンダー・ギアの連中が繋いでくれたこの命、エクリプス軍に叩き返してやる!」
ゼクセリオンが、地下のカタパルトへと足を踏み出す。
かつての「神の遺物」は今、ゴミ山に生きる人々の「希望の象徴」へと生まれ変わった。
轟音とともに、ゼクセリオンが地下から地上へと射出される。
空を覆う軍の艦隊。
その真っ只中へ、白銀と油にまみれた新しい巨神が、反撃の産声を上げた。




