第12話:『紅蓮の反撃』
「……馬鹿な。我が『グロリアス』の主砲を、正面から飲み込んだだと……!?」
要塞機を駆るヴァルガスの声が、初めて動揺に震えた。
爆炎の霧を切り裂き、そこに立っていたのは、紅蓮の光を全身から噴き出す白銀の巨神。
装甲の隙間からは、過負荷に耐えるゼクセリオンの咆哮のような排気音が漏れている。
『アルト、限界だよ! エネルギー変換率、120%突破! あと三十秒で自壊しちゃう!』
ビットの警告がコックピットを赤く染める。
左目で見つめる世界は、溢れ出した熱量で歪んで見えた。
「……三十秒あれば十分だ」
俺は操縦桿を限界まで押し込んだ。
ドォォォォォォォン!!
空気が爆ぜた。
翼を使わず、純粋な熱エネルギーの噴射だけで、ゼクセリオンがヴァルガスの懐へと潜り込む。
「調子に乗るなよ、小僧ぉぉッ!」
ヴァルガスの四本の腕が、至近距離から迎撃のガトリングと破砕爪を繰り出す。
だが、今のゼクセリオンは、その一撃が触れる前に「熱の防壁」で全てを焼き切っていた。
「鑑定……リンク・アップ! 【紅蓮・アンスレイ】!」
俺は、右拳に全てのエネルギーを収束させた。
ヴァルガスの機体――グロリアスの「右胸」にある疑似コア。
さっき左目で無理やり見抜いた、唯一の綻び。
「そこだぁぁッ!!」
ゼクセリオンの拳が、要塞機の重装甲を紙のように貫いた。
「な……我が『七星』の装甲が……ただのガラクタの拳に……ッ!?」
「ゴミ山を舐めるなよ。……俺たちは、壊されるたびに強くなるんだ!」
熱が、コアを内側から焼き焦がす。
大爆発。
ヴァルガスの機体が、内部からの誘爆によって四散し、吹き飛んだ。
「……はぁ、……はぁ、……やった、のか……?」
紅蓮の輝きが消え、ゼクセリオンの全身から白い煙が上がる。
動力を使い果たした機体は、そのまま膝をつき、動かなくなった。
静寂が戻った戦場。
だが、その沈黙を破ったのは、ルナの震える指先だった。
「アルト様……、見てください。あそこ……」
爆炎の向こう。
大破したグロリアスの中から、ヴァルガスが血を流しながらも立ち上がっていた。
「……クク、……ハハハ! 素晴らしい、素晴らしいぞアルト! 我が機体をここまで追い詰めたのは、十数年ぶりだ!」
ヴァルガスの背後に、さらなる影が現れる。
それは、一機ではない。
空を埋め尽くす、エクリプス軍の本隊。
そして、その中央に鎮座する、カインさえも跪くような「真の皇帝の機体」の威容。
「……七星の一人を倒した程度で、勝ったつもりか?」
空が、絶望で塗りつぶされていく。
「ビット……、まだ動けるか?」
『無理……。アルト、もう、指一本動かせないよ……』
力尽きた俺たちの前に、皇帝の使者が静かに降り立った。




