水上の王、神を討つ
ゴリゴリ本編に関わってくる番外編です。
番外
ーーメリアとガーベラが出会う少し前ーー
「ブルシア嬢よ。本当にメリアという人物が戦に参加するかどうか問わねばならぬのか?」
静かな執務室で皇王は問いかけた。
「えぇ。メリアは王以外で初めて魔王軍幹部を倒した人物。きっと陛下のお力になれるわ。……まぁ、あの方なら、止めても参加するでしょうけど」
ブルシアは穏やかに微笑む。
「……そうか」
皇王は目を伏せる。
「それより、国民の避難は順調か?」
「手筈通り進んでるわ。……だけれど」
わずかに沈黙。
「やはり陛下も避難なさった方がよろしいのでは?」
皇王は小さく笑った。
「冗談はよせ、ブルシア嬢。貴女も“余”の立場なら、こうするであろう?」
「……そうね」
一瞬、通信が乱れる。
「では、他の報告がある。ここで失礼する」
「えぇ……ご武運を」
通信が途切れる。
古びた魔導通信機は、しばらく雑音を残して沈黙した。
ツー、ツー、ツー……
「……ん? あぁ、レーネ・クリュスタか」
『拙の呼び方は“レーネ”で良いと言っているでしょう、エリオ』
「お前に対しては何か壁を作っておかないとまずい気がするのでな」
短い沈黙。
『そう。それより――こちらでは貴方の国民の避難は済んでいるわよ』
「余の国民ではない。水上国家の民となるのだがな」
くすりと微かに笑う
『あら。ブルシアとの会話ではそのような事は仰っていなかったのに』
エリオの目が細まる。
「余とブルシア嬢は、“余の国民”などとは言っておらぬ」
『……それもそうね』
『では』
ツー、ツー、ツー……
通話は一方的に切れた。
「……相変わらず、訳の分からぬ奴だ」
「なぁエリオ、レーネって誰だ?」
「メリアか。あいつはだな――余より強い王女だな」
「いやいや、それはないでしょ」
エリオは珍しく笑わなかった。
「水上国家を知らぬ者はそう思うのだな。水上国家……否、レーネ・クリュスタは――この世界で唯一、神を含む全ての生物に“有利”を取れる者だ」
「……え?」
「水上国家の王を決める戦いの覇者だから納得もいくだろう?」
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王よ! またしても侵入者が!!
「あはははは!!あの野良神またやられに来たわけ?」
「王よ!笑っている場合では!」
「拙が行くわ。貴方は休んでいなさい」
「ありがとうございます!」
ちゃぷん。と水音が響く。
砂浜に立つレーネは空からこちらを一瞥する神を見上げる。
人型だが全身は白く、体の各所から無数の棘が伸び、心臓の位置にはぽっかりと穴が空いており小さな星が浮かび、静かに光を放つその姿は畏怖と異形の美を同時にたたえていた。
「相変わらず意味の分からない見た目ね」
……。
「月一ペースで来るけど、たまには喋ったらどう?」
……、。
「……まぁ、喋らせないけど」
次の瞬間、神の姿は瞬きをする間に空高くへと吹き飛ばされていた。
衝撃だけが遅れて海面を揺らす。
「星にお帰り。……やっぱり名も無い神は相手にならないわね」
「という感じでだな。野良の神とはいえ、あいつは毎回、神を殴り飛ばしているらしいぞ」
「えぇ……化け物じゃん……」
あいも変わらずコメント待ってます




