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銀世界の花の海で少女は散る  作者: 廃墟無


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7 分岐点 決別

――やめておくか?ガーベラ、メリア」


 そう言いながら、エリオが玉座に腰を下ろそうとしたその時ーー


 パリィッ!


 先ほどまで子供を眺めていた窓と結界が派手な音を立て砕け散る

飛来したチャクラムをエリオは空中でぴたりと止めた。


「ほう……奇襲か。単騎で突っ込んでくるとは相当腕に自信があると見える」


 そう言って止めたチャクラムを軽く持ち上げ、何もないはずの柱の下へと投げる。


(雑に投げただけで柱が崩れるほどの威力…エリちゃんはやっぱり異次元だね…)


「……躱すか」


 ギギギギギギ……


 異様な軋み音が玉座の間に響き渡った。

 エリオと謎の侵入者はエリオの魔力を挟み、武器を構えたまま真正面から睨み合っている。


「さっきのチャクラムを止めたのもこれか!」


「そうだ。ただの魔力圧にしては凄いだろう?」


 侵入者が距離を取る。


「余の魔力圧を間近で受けて平然としている者は初めてだ。名を名乗れ」


「……名など持たん。強いて言うなら――」


 侵入者は淡々と告げる。


「ヴィシュヌ神の加護を受けし者……“アヴァターラ”とでも名乗っておこうか」


「अवतार!?」


 驚愕に体を縛られたまま、メリアが叫ぶ。


(魔王は……本当に何者なんだ……)


「……もう少し話をしたかったが、生憎と忙しくてな」


 エリオの魔力が跳ね上がる。


(!? 押し潰される……!!)


「…まいずれ再開することになるだろう、その時はまた合間見えようぞエリオ・ザイオン」


「――終わりだ」


 次の瞬間。


 侵入者の姿が、三階から一気に地下へと叩き落とされていくのが見えた。


「……深いね〜。やりすぎちゃったんじゃない? エリちゃん」


 ガーベラが呑気に言う。


「最近、魔力を使いすぎてな。少々、加減を誤った」


(なんて精密な魔力操作……神殺しの称号もやはり伊達じゃないな……)


「どうだ、二人とも。王の強さを目の当たりにした気分は? さぞ光栄であろう?」


「……今さら王っぽい雰囲気を出さなくてもいいでしょ」


「ほんとそれ」


 二人の即答に、エリオは肩をすくめる。


「冗談は置いといて……そうだ、メリア。どうせならガーベラと観光に行くといい。ついでに鍛冶屋に寄って、お前の武器でも作らせろ」


「武器は今のところいらないかもな」


「メリアよ。コピーした代物は所詮模倣した偽物に過ぎん。本物や現存する武器より劣る。ひとつくらい本物の武器を持っておくのも悪くはないだろう?」


「確かに……でも、俺に合う武器なんて今は思いつかないしな」


 そこでガーベラが口を挟む。


「短剣とかは? それかエリオみたいなザ・騎士の剣!って感じのやつとか」


「……鍛冶職人はな、見ただけで合う武器が分かる。気にする必要はない」



「……そうだ。余は観光にはついて行けん。用事があるからな。護衛は必要か?」


「護衛は大丈夫かな」


「うむ。ならば行ってくるがよい。城を出て真っ直ぐ進めばあるはずだ」


「ありがと、行ってくる」


「エリちゃん、ばいばーい」


 二人が去る。


 ……

エリオはゆっくりと目を開いた。


「……魔力結界が、一瞬弱まったな」


 ――トッ。


「動くな。ここから先は余の庭だ」


「……当方は魔王軍幹部、フォース・フォネー。赤髪に陽光の瞳を持つ其方は、エリオ・ザイオンで間違いないな?」


「余の言葉を無視するとは……外に出る際は存在を弱めるローブを着用していたつもりだが、まあいい。何故、余の張った防御を通り抜けられた?」


「……魔術だよ。――話がずれたな。当方の目的は其方と交渉をしに来たのだ」


「……ほう」


「お前が魔王以上の強さ、あるいは可能性のどちらかを持つのなら――当方は其方の味方になろう」


「何故、余の味方に?」


「面白い方につきたいからだ。それ以外に理由がいるか?」


 瞬間。フォースの姿が消える。


「――ッ」


 気づいた時には背後。対応が間に合わない。


 ドォンッ!


 庭へと吹き飛ばされたエリオの身体が庭にある小さな森の奥で壁に激突する。


「……威力が桁違いだ」


 土煙の向こうで、エリオはゆっくりと立ち上がる。


「油断していたな…性別を気にしている場合ではないか」


エリオは目を閉じ、腰の剣に手を掛ける。


 ――カッ。


「ほぅ。魔術も使わず、目を閉じたまま当方の攻撃をいなすとは」


 フォースの声がわずかに愉快そうに揺れる。


「異常なほどの速さだな……」


 キィン――


 鋭い金属音。


 次の瞬間目を開けたエリオの視界が真っ白に染まる。


 耳鳴り。


 剣を落としかけるエリオ。


 空中で身体を反らせ、弓を引くような構えを取るフォース。


 視界が戻らぬまま、エリオは正面の気配を捉えきれず――


 吹き飛ばされ




 たのは、フォースの方だった。


 魔術ではない。魔力の塊でもない。

 エリオの渾身の一撃が、空間ごと抉るようにフォースを穿つ。

地面を削りながら着地したフォースが、低く笑う。


「……あれだけ魔術をぶつけたにも関わらずかすり傷だけとは。神殺しの称号はどうやら嘘ではなかったようだな」


 エリオは剣を構え直す。


「お前の魔術は……音か?」


 返答の代わりに光が弾ける。光速で迫る光弾。エリオはそれを正確に弾き続ける。


「光と音か……強力だな」


「……このままでは泥試合かな。可能性はあるが、まだ足りない。次に会う時は――互いに本気でやり合おう」


 そう言い残しフォースは一瞬で姿を消した。


 ――


「貴方が鍛冶師か」


「おぉ! ザイオンの言ってた坊主とガーベラの嬢ちゃんじゃねぇか!」


「俺のことはもう知っているのか?」


「当たり前よ! ほら、とりあえず手ぇ出せ。無料で作ってやるからよ!」


 メリアはわずかに笑みを浮かべ、手を差し出す。


「……斧、いや剣か? ……槍か? うーん、坊主。お前あれだな。どの武器も“そこそこ”扱えるが、達人にはなれねぇタイプだな」


「……俺が一番分かってるよ…」


「じゃあ私は? 私は?」


「嬢ちゃんは弓か短剣だな。両方作っとくか?」


「お願い!」


「よし、二人分作る。夜まで待っててくれ!」


「あぁ。また取りに来る」


 城下町を二人で歩く。


「……意外と人が残ってるな。商売をしている者もいれば、昼から酒飲んでる者もいる」


「そうだね。なんでだろ?」


「さぁな。……そういえば、泊まるところどうする?」


「私が貰った家に泊めてあげる」


「……めちゃくちゃ汚れてそうだな」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「綺麗……だと!?」


思わず声が漏れる。


「当たり前でしょ」


自慢げに胸を張るガーベラ……くそ、ちょっと悔しい。


「そうだ。少し手紙を書きたい。その後に作戦を考えよう」


「いいよ〜。机に置いてある紙、使って〜」


手紙を送る相手はブルシアだ。

今自分は大丈夫だということとそしてそちらは安全かと、それと使用人をクビにしないでくれという事を。

短い文だがそれでいい。


便箋を折り畳みながら息を吐いた。


「……それで、作戦はどうする?」


「そうだな。戦争に参加してくる幹部は他にもいるだろうが、今分かっているのはテウクロスとアヴァターラだ」


「そうだね。……メリアが言いたいこと、大体分かるよ。私にアヴァターラをぶつけたいんでしょ?」


「すまない。俺はテウクロスを抑える。エリオは他の幹部を相手どるとなると、、アヴァターラはお前に任せたい」


一瞬、言葉を選ぶ。


「倒せとは言わない。引き寄せてくれればいい」


ガーベラは小さく笑った。


「分かったよ。任せて」


頼もしい。これほどまで安心する見方というのも初めてだ。


「精鋭の軍より強い人間が、あと一人二人いれば助かるんだがな」


「そういえばエリちゃんが、背中を任せられる人が一人いるって言ってたよ」


「どんな奴だ?」


「そこまでは聞いてない」


「……そうか。でも、それだけで十分だ」


話し込んでいるうちに、気づけば夜になっていた。


「二人とも、ここにいたのか」


振り向くと、エリオが立っていた。


「相性がいいのか。喋り出したら止まらないようだな」


「悪い?」


「いや。悪くない」


エリオは肩をすくめる。


「ともかく、そろそろ武器が完成した頃だ」


「行ってくる!」


「また後で、エリちゃん!」


「走り出して行くとは、忙しない奴らだ。」



夜。街灯に照らされた橋を渡る。


川面が黒く揺れていて風が少し冷たい。


「……ここなら大丈夫かな」


ガーベラが足を止めた。


「メリア。私と魔力を繋ごう」


「なんで?」


「繋いでいればメリアがいつ時間逆行を使ったか分かる。……それに、万が一コピーが使えなくなった時、私が魔力を送れる」


「魔力が切れても、俺の時間逆行は常時発動型だぞ?」


「そうじゃなくて! 保険、保険なの!」


ぐい、と距離を詰められる。


「私の手の甲に口付けして。それで繋がるから」


「……本当か?」


「本当」


疑いと恥ずかしさがありながらも、俺は腰を落とし片膝をついた。

そして、そっと唇を触れさせる。


その瞬間。


指先から温かい何かが流れ込んできた。魔力だ。

お互いの魔力が結びつくのが分かる。


だがそれだけじゃない。


胸の奥が、わずかにざわつく。

鼓動が一拍だけ速くなる。


ガーベラも同じなのか、わずかに目を見開いていた。


恋愛感情ではない。


だが――


確かに、魔力以外の何かが繋がった感覚があった。





裏設定1 詠唱  詠唱を唱えると火力や効果が上がるが詠唱の時間が長いため、相手を動かない状態にさせて確実に倒したい!って時にしか使えない。


裏設定2魔術と魔術剣装 魔術は基本神の祝福を受けた者か生まれつき持っている人しか使えない。魔術剣装は魔力の応用で一般人などは基本魔術剣装を使う。魔術が発現していると気づくのは大体使い道ができた時か身を守るための防御本能として危険な時に発現する。前者はメリアが良い例。

教会に診断してもらい分かる場合もある。

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