9 終わりへ向かう王国 中編
今日誕生日です!感想orコメントください!
absolute ban magic domain
ガーベラがそう唱えると、街を覆うほどの光が地面から溢れ出した。
「なんだ……? 魔術が発動しない……?」
アヴァターラはこれまで喰らったことのない類の魔術に一瞬混乱するが、ガーベラの詠唱はすでに始まっていた。
wake up the earth 大地を呼び覚まし
heaven is awake 天は目覚め
to open your eyes 目を開くのは
Our existing home 存在するは我らの家
光が広がる。
荒れ果てた野は一瞬で塗り替えられ、美しい大樹が芽吹き、森が形成されていく。
「……?」
「気配遮断」
森が静まり返る。
「隠れながら狙うなら、これがいいよね」
次の瞬間。
四方八方から、アヴァターラへ向けて無数の矢が放たれた。
放たれた矢をアヴァターラは自在に操るチャクラムで弾き返す金属音が森に響く。
「お前は今、魔術を三つ使った」
次々と迫る矢を弾きながら、声を低くして言う。
「これは異例の事態だ。本来、人が持てる魔術は一つ、多くて二つ。それが限界のはずだ。二つ以上を同時に扱えば、脳も神経も耐えられない、だがお前は平然と多用している」
弾く。弾く。弾き続ける。
金属と矢がぶつかり、火花が散る。
「……お前は何者だ?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
目を閉じ、唱える。
「一族は巡り、剣を欲する。
血を求め続ける様は、黎明を灯す」
空気が軋む。
「代価は整った――魔術剣装・炎撃」
その瞬間、剣が赤く染まり灼熱の炎を纏う。
フォースは足元を焼かれながらも視線を逸らさない。
「足を焼いた。その状態でまだ動けるのか」
皇王の声音は静かだ。対照的に
フォースは甲高い声で笑う
「生憎、足はあまり使わないんで、
……可能性を見定めさせてもらうよ」
前回の戦いでは、自由に動けなかった。
だが今は違う。
この戦場で最速者はフォースだ。
最速者の身体が閃光と化し当たりに
光の残穢が刻まれる
光速の踏み込み。
音を置き去りにした突撃がエリオへ届く。
だが。
その軌道を、エリオは見切っていた。瞬きをする間も与えず光は炎と正面から衝突した。
そう遠くない上空から、フォースは見下ろす。
エリオ自らが放った炎の刃は光を切り裂いた――はずだった。
だがその手応えはあまりにも軽い。
「……光の速度を出せるのは、当方だけじゃないぞ」
エリオの瞳が細まる。
「石か……」
斬り裂いたのは、光に擬した投擲物。
本体は、空中に健在。
(当方の攻撃を正面から受けても立っている……魔術剣装は上級か)
揺らめく炎が、熱を増す。
(まあ炎撃は攻撃特化。水撃は防御。雷撃は範囲。風撃は広域制圧――性質が分かっていれば怖くはない)
フォースの身体が再び閃光へと変わる。それを音が遅れて追う。
エリオは動こうとするが、突如として現れた光の壁がその進路を塞いだ。
左右は封じられ、目の前にはフォースの姿。
「……逃げ道は、前か後ろだけか」
炎が揺らぎ視線が一直線にフォースを射抜く。
「直線勝負といこう」
フォースの言葉に反応し炎が膨れ上がる。
(……超音波か何かで耳を潰されたのは痛いな)
「見るがいい――我が生涯最大の斬撃を」
「来るかっ」
辺り一面に、光と炎が煌めく。
閃光が奔り、灼熱が空間を焼き裂いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「んー? あはっ。眷属にし甲斐がある子みーっけ。……メリアくんか」
唇を歪め、エマが嗤う。
「まぁ、眷属になったら面白そうだしっ」
空中で血液が渦を巻く。
エマは撃ち出す構えを取った。
ギギギギギギ――
圧縮された血が軋みわずか五百メートル、その距離を血の矢は入り乱れる戦場を一瞬で馳せる。
「――あと六回。命を奪われる覚悟はできたか?」
その言葉と同時にメリアの背に激痛が走った。
「があっ――!」
(何だ!?!?)
「隙を見せたな」
考える間もなく、テウクロスの手刀がメリアを貫く。
250
「痛い痛い痛い!!」
注射器を無理やり突き刺され、体内に虫を流し込まれるような痛みだっ
「って、そうじゃなっ――」
300
「走れっっ」
496
「魔眼と土の柱で防っ」
ガッ――!
ゴルゴンの魔眼一時眼と土で防ぐが血の矢は土の防壁を容易く突破しその矢は腕を貫く
「っ……!」
魔眼の限界により視界がひび割れ、世界が歪む。
「まずい……!」
500
「くそっ! 一時眼しかコピーできなかったせいで!!」
嘆いても状況は変わらない。血の矢は無慈悲に皮膚を裂きメリアの頭部を正確に貫いた。
視界が赤に染まっていく。500回の死がメリアの精神と肉体を消耗させていく。
501
わずかな希望に縋るように一時眼を発動する。
自分の周囲にレンガの壁を出現させ、全魔力を解放した。
「そうだ。思い出せ。俺の最大火力を。」
幼童の頃に見た、何気ない日常。
その一幕を――
メリアの周囲を囲うように四つの巨大な竜巻が発生――
しなかった。
希望を打ち砕くようにレンガは砕けメリアの身体も、テウクロスの一撃によって粉砕される。
510
あぁ……あの手には縋りたくない、直感で分かる。俺は必ず後悔すると。
それでも
でも、これしかないんだ……ごめんよ
胸の奥が軋む。
「今のは……俺の気持ちか……?いや、いい。許してくれとは言わない」
「力を貸してくれ!! ガーベラ!!!」
メリアから微かな魔力と意思がガーベラへ流れ込む。
ガーベラはそれに呼応するように魔力をメリアへと流し込む。
―魔力のパスが、完全に繋がった。ー
奔流し膨大な力が回路を焼き切らんばかりに駆け巡る。
「なんだ……この魔力量は……」
尋常ではない魔力量に空気が震え、地面が軋む。
テウクロスは本能的に後退し距離をとる。
「メリア!!」
「ガーベラ!? って、かなりの距離あったろうに……。お前……身体が……」
「あぁ……これね。1度流し込んだ魔力は止まらないの。魔力が尽きたら、肉体を変換して流し込まれるんだ」
足が透けていく。
「頼む……やめてくれ……止めてくれ……」
呂律が上手く回らない。
「不可逆変化と同じような……ものだよ」
足が消え、仰向けに倒れる。
メリアは肩を支え、手を握り、上体を起こす。
「ガーベラァ……! 頼むよ……そうだ」
ナイフを首に当てる。
「もう一度巻き戻ってお前を――」
「無理だよ、メリア。打つ手が無くなったからパスを頼ったんだよね。…メリア、私を殺して」
「……何で!!」
言葉が詰まる。
「貴方の魔術コピー。その真の名と能力は“完全盗作”。見て盗み、模倣する能力」
「それと最大の強みは――殺した相手の魔術を、本物以上に模倣できるの」
「何で……そこまで……」
戦場とは思えないほどの静寂に包まれる。
「……最後に。ガーベラ。いや、お前の本当の名前を教えてくれ」
「繋切製香よ」
身体が薄く消えかける。
「……安らかに……最愛の妹よ」
メリアはガーベラ、繋切製香の首を切り落とした。




