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銀世界の花の海で少女は散る  作者: 廃墟無


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8 終わりへ向かう王国 前編

6、7でテウクロスがケウクロスに誤字っていたから直しました。

「俺の武器は…二つの剣に棒がついたやつと手甲?」


「よく見ろよ坊主。それ、変形して斧になるんだぜ? すげぇだろ?」


「かっっこよ……」


「声、漏れてんぞ」


「嬢ちゃんは弓と短剣な。魔力を弓に込めれば、それがそのまま矢になる仕組みだ。大事に使ってくれよ?」


「かっこいい……」


「ガーベラ、お前も出てる」


「そういえば、お兄さんは逃げないのか?」


「お? お兄さんに見えるか? こう見えても俺、三十は超えてて……じゃなくてだな。逃げるか逃げないかで言えば、逃げねえよ」


「なんでか、聞いても?」


「何十年ここで働いてると思ってんだ。俺や他のみんなはな、この国と王様を愛してんだ。……まあ、坊主にもいずれ分かるさ」


そういうものなのか……


「……まあ、メリアにも、いずれ分かる」


「ガーベラは知ってんのかよ」


「……」


――半月後。



結界は今日も、空を淡く覆っている。

薄青い光が王都を包み込み、まるで巨大な天蓋のように揺らめいていた。


「……今日大丈夫だな。」


門番の兵が空を見上げる。


市場ではパン屋が声を張り上げ、大人の笑い声が聞こえる。

いつもと変わらない朝だった。


「あれきらきらしてる!何あれ!!」

幼い子が結界を指さす。


「守ってくれてる結界だよ」

母親が優しく微笑む。


避難は済んでいるが残っているものもいる。


少し離れた場所で、メリアは肩を回していた。


「あー……もう魔力空っぽ。今日は限界」


「お疲れさん」


ガーベラが缶コーヒーを放る。


「あつっ!」


「ふふ。すっかり工場勤めの人みたいだね」


「どういう意味で言ってんだこの野郎」


相変わらずのやり取りを、エリオは遠目に見ていた。


「それでだな、騎士団長。お前には最後の防衛戦を任せようと思う」


全身鎧の騎士団長は静かに跪く。

顔は見えない。だが、なぜか悲しげな表情をしていると分かった。


「……お任せください、皇王。必ずや」


エリオが頷いたそのーー


空が――軋んだ。


パリィッ。


乾いた音が、王都全体に響き渡る。


淡く揺れていた光膜に、一本の亀裂が走る。


誰もが一瞬、それが何か分からなかった。


バキンッ。


空と大地を覆う結界は静寂を作り砕け散る。それは戦の始まりを表していた。

結界の破壊音、城の爆発と崩壊が同時に王都を揺らした。


魔王軍幹部四体は真っ先にメリアを狙う。


「まずい、死ぬーー」


「魔眼のゴルゴン、蒼穹のテウクロス、覇光のフォース、擬神のアヴァターラ……だったか?」


次の瞬間、メリアの目の前に現れた男が長刀で幹部たちの攻撃を弾き飛ばす。


「あぁ、ゴルゴンはとっくに死んでっから——お前はエマ・カルディアストクスか」


「誰だ?」


魔王軍幹部たちは、突如現れた男を前にわずかに動揺する。


その男は鍛え上げられた上半身を露わにしており、着物を脱いだ服装ーーメリアには見覚えがあった。


「俺ぇはロスト。ロスト・テクナ——ただの鍛冶師だ」


次の瞬間、ロストの姿が掻き消えた。


エマの身体が弾き上げられ空へと打ちるがる。

その背を追うように、ロスト自身も跳んだ。


「鍛冶師のおっちゃん……つえぇ……」


その場にいた者たちは状況を理解できず一瞬固まる。


「隙を見せたな!」


エリオが踏み込み、フォースを蹴り飛ばす。

地面が砕けフォースの体が弾丸のように吹き飛びエリオは迷わず追撃へと駆け出す。


「へぇ擬神って言うんだぁ。二つ名に“神”なんて入ってる割には魔力量は私より低いんだねぇ」


ガーベラはアヴァターラを煽り、メリアへ片目を瞬かせる。


(アヴァターラは任せて!)


「……そういえば、名乗っていなかったか」


一歩、前へ出る。


「俺はアルストロメリア、お前を殺す者の名だ!!」


「吠えたな! ならばこれはどうする!!?」


赫から蒼へと輝きを変える無数の矢が、空を埋め尽くす。

次の瞬間、それらは雨のようにメリアへと降り注いだ。


甲高い金属音が連続する。

手にした武器が唸り剣へ、斧へと瞬時に変形しながら降り注ぐ矢を弾いていく。


だが、全ては捌ききれない。

弾き損ねた蒼光の矢が迫るその瞬間、鎧の手甲が開き、爆ぜるような風が噴出する。


風圧が矢の軌道を逸らし威力を削ぎ、メリアは紙一重でそれらを躱していきながら一瞬にして荒れ果てた王国を円を描くように、メリアは駆ける。

空から迫り来る無数の矢を躱しながら、メリアは距離を詰める。


——一歩でも踏み外せば、即死する。それが直感で分かる。


テウクロスが弓を構えた、その瞬間。

メリアは武器を投げた。

当然テウクロスは躱そうとする。


——だが。


テウクロスの足が止まる。否、全身が一瞬、硬直した。


その刹那に

投じられた武器が、一直線にテウクロスの心臓を狙い、貫いた。


「驚いた……まさかゴルゴンの魔眼を所持しているとは……」


メリアの左目が薄い琥珀色に染まり、輝く。


「所持なんてしていない。ただの偽物だ。それより——あと六回、命を奪われる覚悟はできたか?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「上空に飛ばすとかっ吸血鬼を舐めてるよね!」


 エマの声が空気を裂く。その間にもエマの作り出した血の弾丸が豪雨のように降り注ぐ。


 ロストは長刀を振るい――

 そのすべてを弾き返す。


「それに!! エマの名前は!!エマ・カルディア・ストリクスだっ二度と!間違えるな!!!」


 落下しながらなお、彼女は猛攻を重ね、軌道を変え、角度を歪め、死角から撃ち込む。

だがロストは、容易くいなす。


一振り。


 振るった剣の斬撃だけで、空を滑るように跳ぶ。


「剣振った衝撃で飛ぶとか、バケモンかよ!」


「バケモンに言われたくねぇよ」


 次の瞬間、辺り一面が暗くなる。


「……ん? 影か?」


 ロストが見上げる。


 空には――


 先ほど弾き返した血の弾丸すべてが集束し巨大な“血槍”となって浮かんでいた。

王都を覆うほどの圧倒的な質量の血槍の切っ先がゆっくりとロストを指す。


ロストは顔色ひとつ変えずに躊躇なく血槍へ突撃し血槍を一刀両断する。


 轟音とともに、王都を覆っていた巨大な血槍が真っ二つに裂け、霧散する。


「ちぃっ!!」


 飛散した血がエマの顔を濡らす。


「せっかくの綺麗なデカい角と黒髪と顔が、血でグシャグシャだな」


「……お互いね」


 言葉を交わす、その一瞬。ロストの刃が閃きエマの背に広がる血の翼が断たれ、崩れ落ちる。


「喋る暇があったら、手を動かすんだな」


 翼を失ったエマは重力に引かれ落下。

ロストもまた地へと降りる。

 砂煙が舞い、両者は再び地上に立つ。


「……あんたの魔術、何?」


 血を拭いながら、エマが笑う。


「エマのも教えるから、教えてよ」


(雑談に付き合う暇はない。だが魔術を聞き出せるなら乗るのもありか)


「先、言えよ」


 ロストは刃を下ろさずに言う。


「……エマの魔術は 《血潮の支配遊戯》と《麗しい紅血の眷属》。はい、次。あんたが言って」


「うわ、ガキの癖に使う魔術怖っ」


「言いなさいよ」


 ロストは肩を竦める。


「俺の魔術は――《ただ一つ、極限の道》、だな」


「名前変なの」


「うるせぇよ」


 砂煙の向こうで、二人の視線がぶつかる。


「エマのは分かるとして。あんたの魔術、具体的な効果は何?」


「一つの技能を――一瞬で極限まで高める。それだけだ」


「へぇ。中々強いじゃん」


 エマが笑う。


(こいつ、何笑って――)


「……カハッ」


 不意にロストの喉から血が込み上げる。


「適性の無い者は血を浴びても眷属にならない。その血はただの毒になるだけ、適性の無いあんたは侵されて死ぬ運命っ」


 ロストの腕や足、顔からじわりと黒ずんだ血が滲む。


「血浴びただけでアウトかよ……」


 足元が僅かに揺れ視界が霞む。

エマは一歩踏み出す。


「吸血鬼を舐めるなって、言ったよね?」


はぁっとロストは息を吐く。


「相性次第では皇王様にも勝てたんじゃね?」


「なっっ――」


 ロストの体から黒ずんだ血が蒸発するように消えていく。


「毒が……引いてる?…まさか毒への耐性を極限まで高めてっ」


 ロストは肩を回す。


「毒剣を打った時に自分の体で威力を試してたら自然と耐性が付いたんだ。それを利用して毒への耐性を極限まで高めた後に治癒能力も高めるとーー」


 傷口が閉じていき、呼吸が整う。


「ほんとに面倒くさい!!」


 エマが地面を蹴る。


「もういい! 面倒くさいし帰る!!」


 エマは背を向ける。


「は?」


 ロストが眉をひそめる。


 次の瞬間、血が霧となって舞い上がる。


「……所詮、魔王軍の幹部様でもガキはガキだな」


 ロストは長刀を肩に担ぎ、吐き捨てた。


 血霧の向こうで、エマの赤い瞳が一瞬だけ細まる。


「さて、ガーベラの嬢ちゃんの手助けにでも行きますか」

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