第7話 前衛不在のパーティー
とてとてとてとて......
布団をたたいた時のような、やわらかい足跡が聞こえてくる。
私ではない。シーナでもない。
私とシーナの足音は無音である。
例のウサギ......わかりずらいからこれからは撮影ちゃんと呼ぶことにしよう。
その子の足音。
LV上げという戦闘に挑みに行くのにもかかわらず、なぜだろう。
気が抜けてしまっている私がいる。
「LV上げはいいけど、ウサギ狩りはちょっと。」
撮影ちゃんを眺めると、私は少し気まずくなった。
「しーなもそれは嫌かな。初心者の森っていう場所があるからそこに行こう。」
「了解でーす。」
雑談を交わしながら、初心者の森とやらに向かっていく。
ちなみに、今も配信は続いていてコメントが流れてくる。
ウィンドウに配信という枠が追加されていて、私も参加者である以上、私のウィンドウでもコメントも確認できるみたい。
コメント
今LVいくつ?
あそこは適正LVは5だったはず。
武器の強さ的にL超えてそう。
チュートリアルは終わってそうだけど、どこまで進んでるの?
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「LVか。シーナはLV2だよね?進み具合......まだチュートリアル終えたばっかだよ。」
「うん。しーなはウサギさんを数匹倒したくらい?」
私は猪を倒したからLV11だけど。
Lvがいっぱい上がったのはレアモンスターだったのかな。
コメント
LV2は職業補正も何もないんですが?
適正LVは5とか言われてるが、職業補正が始まるのLV8だから適正LV詐欺とすら言われてる場所にLV2で行くんですか?
なお、片方は魔法使いな模様。
デスペナもらって配信終了予想。
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デスペナ......デスペナルティの略か。
このゲーム内では死亡してしまったときに、一時間の間ステータスが半減するという設定だ。
お金とか、アイテムが消える訳じゃないから一応特攻ができるらしい。
プレイヤーにキルされた場合は一部のアイテムか、所持金が相手に取られる可能性もあるらしいけど。
「私は適正LV超えてるから!」
「えっ、なんで!?チュートリアル一緒に進めたよね?まさかシーナがいないときに進めてたの.........?」
「チュートリアル中に町の外に出れたからそこで......」
コメント
変人の友達は変人。
武器ないのにどうやって倒したんだよ。
LVいくつなんですか?
5か6じゃないか?
シーナ様が知らないのおもろいな。
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「LV?えとね、LV11。」
「ルナ......?あの草原ではどう頑張ってもLV10は超えられない設定らしいよ?ほら、コメントがそういってる。」
「そんなの知らん。森みたいなところで猪にエンカウントして」
「猪......?」
シーナは首をひねって何かを考えこんでいる。
コメントの文字を目で追いながら。
私にはさっぱりわからない。
コメントが速すぎて全く読めん。
「もしかして、フィールドボスだったりしない?」
「フィールドボス?」
オウム返しのように、シーナの言葉を繰り返す。
「フィールドボスを誰かが倒すと、次の場所......今回は町だね。に行けるようになるんだけど。」
「第二の町が解放されましたってアナウンス聞こえたでしょ?」
確信をつくとばかりに聞いてくるけれど、正直聞こえてない。
チュートリアルの最中に予期せぬ行動を起こしたせいで通知が届かなかったとか?
「聞こえてないんだけど。」
「え?」
「え?」
シーナの私に対する疑問の声に、私は疑問の声をあげる。
これぞ二段活用!いや、ちょっと使いどころが違うか。
コメント
悲報:会話がかみ合っていない。
ルナ?だっけ。こいつもかなりのやばいやつだな。
このゲーム世界のトッププレイヤーさんが今LV10だったような......
ホントにフィールドボス倒してる説ある。
魔法使いで?火力極振りしてても無理では。
どうやって倒したんだろ。
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なんだかコメントが盛り上がってるけど気にしない気にしない。
「細かいことはいいのだよ!ほら、もうつくよ。」
強引に話を切り上げると目の前を指さす。
鬱蒼と茂った森が目の前に広がっていた。
私がチュートリアルの最中に入った森とは別の場所っぽい。
「はいはい。ここにはゴブリンが居たんだったかな?」
「あ.......少し先に一体いるね。シーナ倒しちゃって。」
ゴブリンは人型モンスターと分類される。
言葉は通じないし、肌も緑色。
視力がとんでもなく悪い人が見れば人間に見えなくも........見えなくも........見えないかもしれない。
このゲーム内は瓜二つといっていいほど感覚が再現されている。
人に近い生き物を殺すことに抵抗がある人もいる。
だからちょっと心配してたんだけど......ゴブリンが可哀想なくらいだったね。
心配無用だったわ。
弓を構えて戦闘準備に入っていたシーナはゴブリンの姿をとらえた瞬間、躊躇なく弓を引き絞り、ゴブリンの頭を打ち抜いていた。
一瞬しか見れなかったけれど、ゴブリンの頭の上にHPのバーが見えた。
これが鑑定のスキルかな?
パッシブスキルだったのか。
......今思えば、スキルの説明欄読めばよかったんじゃ。
スキル・鑑定
相手の情報を読み取れるようになる。(プレイヤーには効かない)
使い続ければ性能が上がるかも?
取得方法
店で購入or???
あやふやな説明だなぁ。
「......一匹来そう。」
かすかに気配を感じて、画面を閉じた。
剣と魔法......どっちにしようかな。
魔法は長年やってきたからいいけど、剣は素人だし練習しといたほうがいいか。
剣を引き抜き、その場で準備運動とばかりに軽く素振りをする。
深呼吸を一度してから気配がする方に走った。
すると、目視では見えなかったゴブリンがいたので、走りざまに剣を薙ぎ払う。
赤いエフェクトとともにゴブリンの姿は消えてなくなった。
むぅ。まだLVは上がらないか。
コメント
魔法使いが剣を使ってる件。
職業補正なくてこれですか?
シーナ様のエイムがやばいことには突っ込まないの?
それはいつものことじゃん。
見えてないゴブリンの場所当ててなかった?
そういうスキル持ってるとか?
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「私リアルでも、人の気配とか分かるよ。」
「初耳なんだけど。」
「言ってなかったけ?ゴブリンが後ろに3匹。」
振り返ればゴブリンが襲い掛かろうとしてたところだった。
当然、私は動きを読めていたので、右にひょいと躱す。
「いっ.......痛覚もあるの!?そこは再現しなくていいって......」
シーナの悲痛な声が聞こえてくた。
ありゃ、シーナは避けきれなかったか。
AGIが結構違うからかな。
「しーなは後衛職なのになんで前線にいるの!?」
「じゃあ私が前に出ろと?」
「うん!」
にこやかな笑顔を向けてくる。
酷い。
初撃は油断してたからか受けてしまっていたけれど、今のシーナはゴブリンの攻撃を避けつつ軽口をたたけるくらいには余裕がありそう。
弓を使う余裕はなさそうだけど。
というか、私も後衛職だが?
「えいっ」
赤いエフェクトが視界に入る。
弓を使うことができないのになんで.......っ....は?
シーナは弓を使わず、弓矢を手で持ちゴブリンの体に突き刺していた。
ゴブリンのVITが低いのもあるとは思うけど、多分シーナの買った武器の性能がいいやつだったからSTRが0とかでも結構な攻撃力になったんだろうな。
攻撃が通用するとわかったシーナは残りの2匹を速攻で倒していた。
やっぱり弓を使わないで。




