第4話 武器を入手
はぁっ、はぁ......
駆け足で噴水に向かうと、私もよく知っている顔の美少女......
現実と同じく、さらさらとした髪質の短い髪。
ボブというやつである。
全部現実と同じわけじゃないし、黒かった髪色がきれいな茶髪になっているという変化はあったけど。
梨井椎名が噴水の水を遊んでいた。
プレイヤ―ネームは≪シーナ≫ね。
おけおけ。
「シーナ!」
飛び込む勢いで近寄ると、椎名も気づいたようで顔を上げた。
「まさかルナが既にやっていたとは......しーなはびっくりしたよ。」
あわよくばとは思っていたけど。
まさか本当にプレイしてるとは思わなかったな。
「シーナの職業って何?」
魔法使いだと同じになっちゃうから違うといいな。
「しーなはね、弓使いにした。」
「弓道とかやってないよね?できるの?」
「思った通りに体が動くVRMMOならね。百発百中とまではいかないけど、ちゃんと当てられるんだよ?」
「私は魔法使いなんだ~」
「そういうルナこそ、初めてじゃん。」
いや、生まれて十数年間使い続けてるよ。
とは、言えないよね。
「まあね、あはは......」
「そうだ、しーなはまだチュートリアル1しかできてない。」
「それでいうなら私もだね。一緒にやろうか。」
「うん、その前にフレンド登録しちゃわない?」
フレンド登録は一瞬で済んだ。
ほとんどやってもらったんだけどね。
【チュートリアルその2】
武器を手に入れよう!
魔法使い→図書館
『案内』
うん、弓使いの武器が図書館に置いてあるわけがないよね。
一緒にできないわ。
「私、行く場所図書館だから早速別行動になるや。」
「はーい。終わったらメールしてね。」
「そっちもね。」
『案内』を押す。
マップに少し変化があった。
私の現在位置だけじゃなくて、シーナのいる場所も書かれてる......
大雑把にだけど。
図書館はすぐ近くだったので、私の方が断然早く終わりそうだ。
▲▽▲▽▲
図書館に入ると、体が勝手に動き、とある場所に向かっていた。
優しげな雰囲気をまとっている司書さんの元に。
意外と若い。
「魔法使いだそうだね。」
あれ?さっきまで感じてた勝手に操作される感じがなくなったぞ?
私が自由に受け答えするタイプなのかな。
「はい、そうです。」
「魔法使いについて説明しようか。」
よかった。威力が弱すぎることとか、習得してない魔法が使える理由......
これは現実が影響してるのかもしれないけど。
「魔法使いはレベルが上がることによって、威力はもちろん、使える魔法も増えていくんだ。」
ふむふむ。ここまでは予想範囲内かな。
「特定の行動を満たすことで、「スキル」や「魔法」が取得できるよ。」
私の「第六感」とかいうやつのことかな?
「魔法は少し変わっていて、使い方がわかっていて、技能があれば習得してない魔法も出せるんだよね。」
私が「水槍」を撃てたのはこういうルールがあったから?
私無双できるよそれ。
「ステータスが低いと、どんなに技能あっても無理だけど。」
前言撤回。
ある程度はゴリ押しできると思うけど、ちゃんとレベル上げしないとだ。
スキルも集めて......楽しくなってきたんじゃない?
「『スキルの書』を読むことでスキルを覚えられるよ。お店で売ってる。」
お金さえ貯めれば誰でも強くなれるのかな?
「お店で買える『スキルの書』で覚えられるスキルは基礎的なものだから、強いスキルはボスを倒したり、特定の行動をすることでしか覚えれないよ。」
「魔法も『魔法の書』があって......読んだ瞬間、その魔法の使い方が瞬時に分かるようになるんだ。」
私は『魔法の書』いらないと思うんだけどね。
使い方はわかるし。
「発射速度は、術者の技能によって異なるから、たくさん練習してね。」
つまり、私の発射速度は普通の人から見ればアサルトライフルだね。
「杖が欲しかったら、『武器屋』で買えるよ。」
「杖を持つと何か変わるんですか?」
「発射スピードが速くなるよ。」
私には必要ないかな。
剣とか買った方が杖よりはいいかもしれない。
剣は買っておこうかな。
魔法を無効にする敵とか出たら詰むし。
「教えてくれてありがとうございました。」
「はーい。」
部屋から出てると、シーナがとっくに終わって図書館前に出迎えに来てくれてくれているという内容を知らせるメールが届いていた。
普通は通知が鳴るけれど、特殊な場にいるときは無効だったぽい。
急いで外に出れば、何やら画面をいじっていたらしい椎名と目が合った。
「ずいぶん遅かったね?」
「魔法についての説明があったから。」
「なるほど?で、どうだったの?」
「武器屋に行って(剣を)購入しようかなって。」
「おぉ。しーなはこれを買ったよ。」
インベントリから取り出したのは、木で作られた弓。
初めての装備にしては装飾も凝っているし、作りがしっかりしているような気がする。
「しーなはお金いっぱいあったから。」
支給品の額は同じだよね......
シーナも魔物を倒してて換金済みだったとか?
「しーなはギャンブルに勝ったのだ。」
聞かなかったことにしよう。
シーナの口から聞きたくない言葉が。
私は何も聞いてない.......よし。
「ちょ、先行かないで」
聞かなかったことにして歩き出せば慌てたように追いかけてくる。
軽く走れば、距離がどんどんと開いていく。
「早くない!?魔法使いだよね。」
そっか、私LVが上がってるから......
「シーナのAGIいくつ?」
「20かな。」
「こんなに違いがあるのか......」
「ステータスって見せてもらってもいい?」
「ダメって言いたいけど、君にならいいよ。」
どれどれと、シーナが出したウィンドウをのぞき込む。
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LV1 シーナ
HP 100/100 MP 100/100
STR 0 VIT 0
AGI 20 DEX 80
INT 0
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これは尖ってるなぁ。
「DEXで命中率と威力が変わるから。」
「私もVITが0だから二人ともダメージ食らえないじゃん。」
弓使いも、魔法使いも後衛の職業だ。
「私のステータス見る?」
シーナのを見たし、私のも見せた方がいいかな。
そう思い聞いてみたのだけれど、
「楽しみが減るから、いい。」
という答えが返ってきた。
▲▽▲▽▲
どれにしようかな。
目の前には様々な剣が並んでいる。
ジャイアントボアを売って手に入れたお金もなくなるほどだったが、購入したのは鈍く光る、やや大きめな片手剣。
いわゆるロングソードというやつである。
「武器かえたよ~」
早速、買ったばかりのロングソードを、インベントリから取り出して、シーナに見せる。
あれ?反応が返ってこない。
「シーナ?」
顔の前で手を振ったり、声をかけ続けたり......
こうした行為のおかげか、少しすると、我に返ったようで反応が返ってくるようになった。
「気づいた?もう、どうしたのさ......」
「なん......」
「なん?」
「なんで(魔法使いなのに)、剣を買ってるのぉぉぉぉ!?」
杖を買う必要がないからだけど......
心底理解できないと叫ぶシーナに驚いて、近くの小鳥が飛び去っていた。
一人称が僕になっている点を変更しました。
至らぬ点があれば教えていただけると幸いです。




