第3話 神のぼやきと冒険者
カチカチカチカチ。
キーボードをたたく音が聞こえる。
「発売されて一週間ちょっとか。かなりの売り上げじゃないか?」
「かけた金額が金額ですし。売れてくれなきゃ困りますよ。」
「システムエラーはないか?」
「特には......しいて言えば誰かがジャイアントボアを倒しましたね。」
「おっ。第二の町が解放されるのか。予定より少し早いな。
それだけやりこんでくれているってことだろ。嬉しいな。」
「ジャイアントボアって25レべですもんね。相当ですよね。」
「他にはないか?」
「んー、そうですね。特になさそうです。」
「ワールドクエストは第二の町解放後の予定だったんだが、ちょっと早いし、まだどんどん新規が増えてるからもうちょい後に変更だ。」
「かしこまりました。あの方に連絡しないとですね。」
「そうだな。あの方の機嫌を損ねるなよ?。」
「あの人本当に人間なんですかね?」
「それ以上は口にするなよ。さっ、働け働け~」
「今日は先輩が奢ってくださいね。」
「最近耳が遠いんだよな。」
運営人の会話はひどく緩やかであった。
▲▽▲▽▲
たっぷり寝て疲れがしっかりとれたところでログインする。
セーブポイントがあるらしく、昨日ログアウトをした森ではなく、『始まりの町』の噴水にいた。
昨日倒したボアの整理......しないとか。
インベントリを開き、詳細を確認していく。
ジャイアントボアの牙、皮、骨、肉......
インベントリの中は時間が止まっているらしく
生ものをいつまでも入れておけるらしい。
助かった。
ジャイアントボアのドロップ品以外だが、支給品として、ある程度ゲーム内の通貨を持っていた。
荷物の確認が終わったところで。
忘れてたけど、私、チュートリアル終わってないや。
これはまずい。と、思い内容を確認する。
【チュートリアルその1】
冒険者ギルドで、冒険者登録をしよう!
『案内』
『案内』の文字を押す。
すると、マップに印がつけられていて、そこまでの矢印が書いてあった。
矢印は任意で消したりできるらしい。
マップはステータスとかと同じような感じでどこにいても見れた。
冒険者ギルドか。
冒険者ギルドに向かっていると声をかけられた。
「ひょうげt......じゃなくて、ルナさん。」
誰だろこいつ......聞いたことある声だな。えーと。
「同じクラスの人!」
「え、俺の名前覚えてないんですか?」
「うん。」
私がクラスで名前を憶えている人といえば先生と椎名と委員長くらいじゃない?
それと、声って変更されないんだね。
「ひど......じゃなくて、ホントに魔法使いなんですか?」
「そうそう。今チュートリアルの冒険者ギルドに行くってやつやってる。」
「遅くないですか......?俺は用事あるのでこの辺で。」
最近のAIは凄いんだな~
遅くない......か。
確かに、一日経ってるのにチュートリアル終わってない人は珍しいかも。
▲▽▲▽▲
マップの案内に従えば、特に方向音痴なわけではないので迷うこともなく冒険者ギルドにつけた。
私が森で帰れなくなったのは、森だったからかな。
今思えばあの時マップ使えばよかったな......
「冒険者登録をしたいです。」
受付にいるお姉さんに言えば、にこにこと笑みを返してくれる。
お姉さんの頭の上に≪NPC:受付嬢≫という文字が浮かんでいた。
私みたいなプレイヤーには名前しか書かれてないんだよね。
「冒険者登録ですね。準備するのでこちらにどうぞ。」
別の部屋に案内され、何もせずに座っていると紅茶を進められたので軽く口につける。
「おいしいっ......!?」
ほのかに立ち上る香り。
ほんの少し甘みがあり、非常においしい。
味覚あるんだここ。......感覚もあるし今更か。
「ありがとうございます。」
......紅茶の追加ほしいな。
ちょっとだけ、物足りない。
じっと顔を見つめると、意図を理解したのか、苦笑いでお代わりを入れてくれた。
ありがとう......このお姉さん天使か?
「利用規約ですね。まず―――」
要約すると、自己責任でお願いします。といった内容だった。
「はい。わかりました。今日からルナさんは冒険者です。」
冒険者はランク制度で、S A B C D E F のランクがあるらしい。
Sに近いほどランクが高く、私みたいな新入りはFランクからのスタートだそう。
「冒険者ギルドでは素材の買取や依頼を行っています。主にこれでランクを決めますよ。」
私、既に魔物倒してるから素材持ってるわ!
「じゃあこれ買い取ってくれません?」
そういって、インベントリからジャイアントボアのドロップアイテムを取り出す。
肉は調理してもらう予定だから売らないよ!
「......」
あれ?黙っちゃった。
「あのー?」
「......」
「もしかしてバグ!?運営さん呼びますね。」
AIなんだしうまく機能が働かないこともあるだろうと思い、運営にメールを送るとすぐに返答が返ってきた。
▲▽▲▽▲
運営から聞いたところによると予定されていないことをしてしまったため、プログラムが追い付いてなかったそう。
運営が割高で買いとってくれたのは運がよかったな!
チュートリアル終わってないのに森に行く人はいなかったのかもね。
冒険者登録も運営がやってくれていて、既にレベルアップしてたことに驚かれた。
魔法使い以外の職業はチュートリアルが終わってから武器をもらうそうなので。
話は変わるが、この世界の機能は地味に便利で、現実のスマホとリンクさせることができる。
実際私もそうしていて、今、椎名から連絡がきたところだった。
椎名:VRMMOって知ってる?
知ってるも何も、現在進行形でプレイしてるのがそれなんだから。
このことを伝えようと、文字をつづっていく。
瑠奈:私が今ちょうどやってるよー
椎名:買ってたの!?噴水の前来て!
椎名とできるかもしれないの?いいな。それ。
いつもより軽快にリズムを刻みながら椎名の待つ噴水まで向かった。
▲▽▲▽▲
「先輩、どういうことですか!?」
「知るか!なんでチュートリアル終わってないやつがボス討伐してるのかこっちが聞きてぇよ!」
「しかも初心者さんっぽいですよ?連絡入れられてびっくりしましたからね。」
「受付嬢さんがフリーズしましたって......人間でもフリーズしてたと思うんだが。」
「奇遇ですね。僕も同意見です。」
「例のシーンを見たが、魔法打ってたよな?」
「えぇ。確認ですけど、「火花」しかまだ使えないはずですよね?」
「あぁ。俺の見間違いじゃなければ、「水槍」を使ってたと思う。第二の町クリアでゲットじゃなかったか?」
「チート......ではなさそうですよねぇ。」
「一応その線で確認してはいるんだが、可能性はほぼないな。」
「一時的なバグだと思いますし、軽く警戒しておくぐらいがいいと思いますけどね。」
「だな。あー、今日も残業かぁ......」
知らないうちに、少しだけ運営に目をつけられていた私でした。




