第16話 ボス戦でも前衛不在のパーティー
足を踏み出して、部屋の中に入る。
シーナも私が入ったことを確認してから続いた。
女性が口元に不格好ながらも笑みを浮かべる姿に鳥肌がたつ。
「いらっしゃい。あれを取りに来たんだね?その子を倒せたら教えてあげる。」
レベルアップしたときとかに聞こえる音とはまた違う、声が脳内に響く。
感情の良く乗った楽しそうな声......
違うから!たまたまイベント起きてるだけだから!
あれって何?
分かりずれぇよ!
(心の中で)抗議をするものの、思わせぶりな態度をとられて気にならない人間などいない。
あっ、すみません。何人かはいるかもしれないです。
「推奨レベルは50だよ......死なないようにね。」
いや、高ぇ!!
もうちょい優しい難易度にしてください!
無情なことに、うんともすんとも言ってくれなかった。
先程まで動かなかったウィッチ?
......女性がゲームスタートとばかりに悠々とこちらに歩いてくる。
「水槍」
様子見の一手。
流石にレベル差がありすぎて下手なことはできない。
普通に死にかねない。
女性の心臓らへんを貫いている蔓が急激に伸び、飛んでくる高密度の水の槍を払った。
水槍は霧散した。
チートでしょ!?ねぇ。
草に水は相性が悪い......
某ポケットなモンスターでいってた気がする。
私は火や風の魔法も使えるけど、水と違っていかんせん燃費が悪い!
数発も出せないと思う。
今出来そうなのは剣or弓......
矢は無限じゃない!なんてこった。
つまり......
「私が突っ込むしかないもんね.........」
ちょっと涙目になりながらも、蔓を避けて、流して。たまに切り落として。
どんどんと間合いを詰めていく。
某男性がいたなら、俺より剣も使えるんかい!
と突っ込むはず。
一向に攻撃を食らわない私にいらだったのか。
感情あるかはわからないけど......
蔓が二つに分裂し、一撃一撃は軽くなったものの手数が格段に増えた。
私としてはさっきの方がよかった..........
たまに掠りそうになる攻撃を必死で避ける。
この色は絶対毒ある!
一撃で死んじゃう!死ぬ!
シーナは攻撃をしていない模様。
私にあたる可能性が高く棒立ちになっていたのだった。
「火球」
超至近距離からの魔法。
火属性の。
相当燃えやすい設定だったらしく、放った瞬間でも着火していた。
一瞬で燃え上がった自分に驚いたのか、目を大きく開けていた。
あっつぅ!?
自分にもちょっとダメージがきた。
魔法自体は平気だけど、女性に着いた火は別だったぽい。
といっても、ほんのちょっとなもの。
このチャンスを逃すほど馬鹿じゃない。
隙あり!
ここぞとばかりに切り込めば、燃えている状況もあってがっつりとHPを減らすことができた。
直ぐに消火活動に移ってしまわれたので、もう燃えてないんですけど。
「ルナ!私の矢に火をちょうだい。」
声が聞こえた方を見れば、シーナが弓に五本の矢をかけて構えているではないか。
「火球はここぞという時にしたく「もっと威力のない火の魔法はないの!?」」
ないよ!
......本当になかったっけ?
何かがつっかかった。
「火種になればいい!」
あ、あーーー!
「魔法発動:火花!」
いつもとは違う魔法。
ライターの火程度しか威力はないゴミ魔法だけど今は十分!
床に転がってる蔓に放てば、あっという間に燃え広がる。
それを矢に取り付けて次々と放っていく。
熱いとか聞こえるけど、必要な犠牲です。
シーナが何かを取り出したかと思えば、それを全力で投げるように言ってきた。
私は容赦なく火の中に投げ入れる。
すると比べ物にならないくらい燃え始めた。
じょせいの甲高い悲鳴が聞こえる。
うへぇ.....
リアルすぎるのも困りものだ......
マイルドになってくれてはいるけれど。
現実に起こったのなら、皮膚が焼けただれていただろう。
まぁ、ここはゲームなのでそんなことはなくすさまじい量のエフェクトが舞っているだけである。
「さっきのは何だったの?」
女性の方を指さしながら問う。
ちなみに、まだ勢いは弱まりそうになく、女性のHPはどんどん削れていっている。
もうすぐHPは0になると思う。
「さっきの?あぁ......酒!」
お前未成年だろ!
これは問い詰めなければいけな.........
「えー、本当に倒されちゃった?しょうがないなぁ。もっと強いの用意しとくね!」
女性の方に目を向けると、まだ燃え続けている日はあるが、その中にHPバー、女性は見えず。
「ぽふっ」という何とも気が抜ける音がし、宝箱が現れた。
思考に思わぬ横やりが入り、今考えていたことを忘れてしまっていた。
「ねぇ、ルナ!何が入ってるかな?」
強敵だったからね。今回倒せたのはまぐれといってもいい......
私とシーナが「せーの」と声を上げて一緒に宝箱を開ける。
中に入っていたのは瓶。
中身は液体で、透明な水色。
透明な水色とは......と思うけど気にしない。
【アイテム:浄化の聖水】
私が真っ先に思ったことは、やっぱりクエスト関連だったか。ではなく、うれしい。とかでもなく。
浄化要素なんてあったか......?だった。
あの時のことについてシーナさんにインタビューをしました。
何故、お酒を持っていたのですか?
シーナ「買ったからですね。」
間違えました。
何故買いましたか?
シーナ「飲んでみたかったからですね。」
未成年ですよね?
シーナ「はい。でも、現実でお酒が飲んじゃいけないのは体に悪いとかだったはずだけど影響ないので。」
そうですか。なんていうお酒でしたか?勢い凄かったですけど。
シーナ「なんだっけ?一番高いの買ったんだよね。結局飲めてないんだけどさ。度数は90%とかだった気が。」
.........せめて最初は、もっと優しいやつにしてください。




