第11話 秘密のクエスト
エピソードのタイトルをちょっと変更しています。
意識を一瞬失ったかと思えば、『始まりの町』にリスポーンしていた。
私は、あの猪にキルされたってこと。
「いやっ、おかしいよねぇっ!」
VITがたとえゼロだったとしても一撃で死ぬか?
はっ、もしかして、ボス的な存在だったんじゃ......いや、ないか。
私がチュートリアル最中に倒せた理由がつかない。
荒ぶる気持ちを抑えてシーナを探す。
探すというか、隣にいた。
何で私が気付かなかったかというと。
これ、本当にシーナだよね?
哀愁を全身から発してうつむいているシーナの姿が。
許せんよなぁ!
というわけで、サクッと討伐してきました。
VITが低かろうが、攻撃当たらなければいい話で。
一撃で憎き猪は沈みましたとさ。
ランダムエンカウントだったとしてもなんか、会えたし。
私強運だし。
すっかりシーナも元気になって。
「さあ、このまま第二の街にしゃれ込もうじゃないか!」
うん。
ちょっと元気になりすぎだったかも。
▲▽▲▽▲
第二の街はすでに誰かがボスを討伐していたらしいので、条件はそろっている。
まあ、そこまでに向かう最中で通常の敵には会うから、ある程度強くならないといけないらしいんだけどね。
私たちは問題ないでしょう。
前言撤回。
ここの攻略は後にしよう。
第二の街へ行くための道中に、墓地がある。
今の時刻が夜だからなのか、アンデット。ゾンビといったモンスターが多い。多い。
正直、こういったものは少し、いや、かなり、大分、滅茶苦茶苦手だ。
シーナも同意見だろう。
お顔が真っ青なので。
「今日の配信はここで終わり。またね~」
文句も言わせないままシーナは颯爽とログアウトしていた。
私も、帰ろう。現実に。
画面を操作していると、全身の毛がよだつような気色の悪い感覚が襲った。
な、なに!?
半透明な、透けた、おぞましい顔をしたモンスターが私の腕に。
「―――――!?!?!?!?!?」
反射的にというか、火事場の馬鹿力というか。
腕が爆ぜた。
違う。
腕に絡みついていた幽霊が爆ぜた。
とっさに風の魔法で爆縮を無詠唱で起こしていたらしい。
無詠唱。
リアルでも使えるが、コスパがすこぶる悪い。
詠唱ありの魔法の三倍近く魔力を必要とした。
私の魔力がなくなるってわけですよ!
慌ててログアウトをしようとする。
―――しようとした。
『ログアウト』の文字が薄灰色になっていて、押しても反応がなかった。
「な、なんで!?」
泣きそうになりながらも押す。
駄目でした。
幽霊はまだまだいるし、ここは戦略的撤退。
――あれ?私、どこから来たっけ。
もし、私が冷静だったら地図を見るとかあったのかもしれなかったけれど、あいにくそんな余裕はなかった。
とりあえず、第二の街まで行くしかない!
向かう方向ならわかってるし。
目をつぶって全力で駆け出す。
私が敵の気配を読めることは良かった。
目をつぶっていて敵に突っ込むなんてことがなくなったし。
幽霊なんかは物理が効かないから無視して、ゾンビやスケルトンといった肉体を持っているモンスターは剣で倒していく。
数がかなり多かったうえに、幽霊はよけていたのでもはや幽霊以外のモンスターを全討伐している感じになっていた。
幽霊には魔法が効くので魔力が自然回復したらちょくちょく撃っていた。
―――称号:死者の天敵を入手しました―――
システムさんが何か言ってたけど無理。構ってられん。
そうしてしばらく。
いつの間にか、自分以外の気配がなくなってることに気づいた。
恐る恐る目を開けてみる。
目の前には大きな建物が!
何とか第二の街につけたらしい。
でも。
―――朝だった。
今日は平日。
おまけに私は今日が日直なので早く学校に行かないといけない。
現在時刻を確認すると、まだセーフ。
黒よりの灰色だけどな!はっ。
気づいたことが一つ。
アンデット系統のモンスターはレベルが上がらないみたいですね。はい。
酷い仕様だ。
ログアウトもいつの間にかできるようになっていたので急いで学校に向かった。
何とか間に合いましたよ!えぇ。
今回は人にぶつかることもなかった。
二日連続は狙ってるとしか思えないでしょ。
違うけどね。
なーんか、忘れているようなないような。
「第二の街でセーブしとくの忘れてたぁっ!?」
うわあああああああ......
▲▽▲▽▲
今日は四時間授業だったので昼にログインすることができた。
シーナは少し遅れてくるらしい。
墓地に行ったが、モンスターが一人もいなかったのは私が皆殺しにしたせいなのか。
それとも、夜にしか現れない設定なのか。
後者だよねきっと。そうであってほしい。
おい、そこの誰ともわからないプレイヤーさん。
「この前来たときはいたのに......」じゃないです。
黙っててください。
というわけで。
なんかサクッと行けちゃいました。
セーブをすると、街からほかの街へ「転移」できるようになるという。
凄いですね。これは。
そんな適当なことを考えているとシーナから連絡が飛んできた。
今ログインしたよーって。
早速、第一の街に「転移」してみる。
エフェクトはログインするときと何ら変わりなかったので、周りの人たちからするとログインしたように見えたかも。
▲▽▲▽▲
やっぱり、敵がいなかったのでシーナも一瞬で第二の街に来ることができた。
「今日は、配信してないんだ。だから、街を一緒に探検しない?」
「いいよ!」
配信をしない、オフの日があってもいいじゃないか。
飲食店を適当に回ったり、綺麗なお店を眺めたりと、結構な時間観光していた。
チリン......
澄んだ鈴の音が聞こえた気がした。
ほんの小さく。
それはシーナも同じだったようで、二人で顔を見合わせる。
「あそこから聞こえたと思う。」
シーナが指さしたのは真っ暗な路地裏。
光が一切届いていない場所だった。
ランタンといった明かりもないのに、行くのはおかしいのかもしれない。
私には戻ってこれる自信がなかったので、シーナに反対されようとも行こうとはしていた。
「行こうか。」
もっとも、シーナの意見は私と同じだったので。
暗がりで全く見えないけれど、気配察知の応用で物の位置を何となく掴み、迷路のような路地裏を進むことができた。
「ここは......?」
ボロボロな小屋が一つ。
そっと、扉に手をかけると黒板を爪でひっかいた時のような、嫌な音を立てて開いていく。
部屋は一つしかなかった。
その中にはボロボロになったベットが一つ置いてあるだけ。
ベットに上に一枚の紙きれが残っていた。
なんて書いてあるのかを見ようとした瞬間。
―――【シークレットクエスト:少女の???】が発生しました―――
開始しますか?
『はい』『いいえ』
と書かれたウィンドウが現れる。
こんなもの。答えは一つ。
シーナを見ると、口元が愉悦に歪んでいた。
同じものを見ているのだろう。
私は迷わずに『はい』を押した。
筆者がルナだった場合。
「あ、アンデット系!?よし、怖い目に合う前にリスポーンしよう。この世界痛覚はないし。衝撃は感じるけど。」
剣を抜く。




