第10話 ゲームバランス(崩壊気味)と初死亡
何故かステータスが下がってたので修正しました。
「ルナぁー」
聞き間違いかな。シーナの声が聞こえた気がする。
私は今、剣が風を切る音のせいでよく聞こえない状態だった。
「ルナー?」
......シーナの声が聞こえるけど、あとちょっとなんだ、待ってくれ。
くう、すばしっこい。
「いや、聞こえてるよね!?」
今いいところだったのに。
聞き間違いじゃなかったか。
今まさに、例の鳥に向かって剣を突き立てようとしたとき、大きな声にひるんでしまった。
一瞬の隙を好機と見たか、鳥は逃げてしまった。
―――称号:残虐な者を入手しました―――
ちょ、運営さん。今それどころじゃないから。
あとでね。
あと、私は残虐じゃないから。
空気の読めないシステム(機械だから当たり前だけど)をいったん無視し、シーナの方を向く。
「......どうしたの。」
不満げな表情になってしまった私を一瞥し、「時間切れ」と声をかけてくる。
「これを倒してからでもよかったじゃん!」
シーナをじろりと睨むと、シーナはへたくそな口笛を吹いてごまかそうとしてきた。
現代でそれやる人いないから。
多分、私の得点が増えるのが嫌だったんだろうな。
汚い戦法だ......
「はいはい、何匹倒した?討伐履歴で分かると思う。」
どこ吹く風で受け流すシーナ。
これはシーナの方が一枚上手のようだった。
討伐履歴......どこだ?
ウィンドウ?メニュー?には機能が多くついている。
それはそれは盛りだくさん。
探すのに苦労したが何とか見つける。
「12匹だって。」
さっきの鳥は、剣で倒し始めて三匹目だったから、今の私は「水槍」を10回打てるのかな。
「で、シーナは何匹だったの?」
......
?
「シーナ?」
......
微動だにしてない。
ゲームでいう、あれだ。
返事がない。まるで屍のようだ。
ってやつ。
自立してるし、屍には見えないけど。
「はっ、えと......数わかんない......」
え?な、なんで?
心の声が聞こえたのか......私が顔に出やすいためか、思ってたことに対する返答を的確にしてくる。
「昨日少し倒してて、何匹倒したかわからないや。」
「あちゃあ」
思わず、声が漏れる。
それは仕方がない。
「不戦勝ってことで。」
「ありがとう。で、今ルナは何レべ?」
「私?13だね。やっぱり、レベルが上がるほど上がりにくくなるのかな。」
「だろうね。私は8レベルだよ~」
ステータスの振り分けをしてもいいかな。
でも、10ポイントだけだもんね。
むぅ。
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LV13 ルナ
HP 175/175 MP 100/100
STR 40 VIT 0
AGI 35 DEX 30
INT 40
取得ステータスポイント10
称号 残虐な者
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おい、なんか不名誉なものが増えているんだが。
さっきもらってたような、ないような......
効果はどうなんだろう。
称号:残虐な者
効果・ステータスポイントの効能が三倍になる。
敵を経験値としてしか見ておらず、自らの弱さに関わらず、強き魔物を相手にし残虐の限りを尽くしたものに与えられる称号。
いや、強っ!?
これ、ゲーム性能壊しかねないんだけど!?
私は、試しにSTRに1だけポイントを割り振ってみた。
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LV13 ルナ
HP 175/175 MP 100/100
STR 43 VIT 0
AGI 35 DEX 30
INT 40
取得可能なステータスポイント9
称号 残虐な者
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そういうことね。
うーん、どうしようか。
「ふぇぇ!?」
素っ頓狂な叫び声が聞こえる。シーナから。
「どうしたの?」
「し、しーな、ゲーム壊しかねない称号貰っちゃって......」
シーナのその一言で何を指しているかが分かった。
シーナも持っているってことは、あんまりレアじゃないんじゃないか?
ってことは、全然大丈夫じゃない?
あー、心配して損した。
「それ、私もあるし(多分)大したことないやつだよ」
それを聞くと、安心したのかシーナの方が少し緩んだ。
チーターとかと疑われるかもしれないからね。
怖いよね。うんうん。
「とりあえず割り振ろうかな。」
LV13 ルナ
HP 175/175 MP 100/100
STR 50 VIT 0
AGI 45 DEX 30
INT 50
称号 残虐な者
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すぅ。
息を軽く吸って吐く。
なんとなく、水槍よりも上の魔法が使えそうな気がする。
魔力の量に限りがあるため、多分一回で使い物にならなくなると思うけど。
STRをあげたのは、もっと剣を上手に使えるようになるよね!という.....
「ステータス割り振れたよ。シーナもできた?」
返事こそこないものの、コクリと頷きが返ってくる。
「鳥退治はなんか、飽きちゃったなぁ......」
一匹一匹が大きかったため、素材も十分すぎるくらいに集まっていた。
「そうだ!私が最初に倒した猪を倒しに行かない?」
街に近いので、一回ログアウトして入りなおせばすぐに向かうことができるし!
「はーい。じゃあ、さくっと討伐に行けるといいね。」
▲▽▲▽▲
「すっごい近いじゃん!」
「前回はね、ここらへんで変な感じがして......あ、これこれ」
後日知ったことだが、あの猪はランダムエンカウントだったらしい。
幸運にも今回出会うことができた。
「ぶぅ!」
前回と鳴き声違くないか。この猪。
鳴き声が可愛くなっていようと、殺意は可愛くなく、容赦なく私とシーナに突撃してくる。
速さも段違いに上がっている私が当たることはないけど。
「シーナが倒してみない?私既に倒してるし。」
「それは、いいんだけど、こいつフィールドボスだよ......ね?」
若干不安そうにしながら聞いてくる。
私があまりにも堂々としていたので確信が持てなかったのだろう。
「またまた、ご冗談を。フィールドボスだったんならチュートリアルの最中で倒せるわけないって。」
「そ、そう......じゃあ、ちょっと一撃......あ。」
矢を使いきってしまっていたらしい。
何でここに来たんだろうか。
しゃーない、私がやるかぁ。
魔法ではつまらないよなと思い、剣を引き抜く。
前を見ると猪が突っ込んできていた。
「ルナ!試しに一回食らってみよ!」
自分の耐久力を知るのもいいかもね。
あえて受け身をとらずに棒立ちになる。
ゲームの世界とはいえ、大きな猪が迫ってくる様は怖いものがある。
一撃ぐらい、甘んじて受けよう。
そんな。ショートケーキ並みに甘い考えは一瞬で吹き飛んだ。
牙が体を抵抗なく貫通する。
「っ......」
声にならない声が零れ落ちた。
シーナは巨体に吹き飛ばされて倒れている。
VITが0とはいえ、さすがにここまでとは......思ってなかった。
一瞬で視界が暗転する。
これが、初めての死亡となった。




