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やんやん  作者: きじねこ
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 幕間小噺


 このたびは、私・鈴城姫風すずきひめかと夫・鈴城優哉すずきゆうやの結婚披露宴に御越しいただき誠にありがとうございま――

「ごらあああ! 頭から嘘付くな!」

 ゆう、静かにして?

「静かにするから本当のことを言いなさい!」

 デレ屋のゆうをイジるの――

「誰がデレ屋だ!! あとイジるとか言わない!!」

 もう、言い直すから、最後まで言わせて?

「せめて照れ屋にして」

 解った。

「…………」

 前回、照れ屋の鈴城優哉と目出度めでたく婚約した、鈴城姫風です。

 痛い。ゆう、鼻の穴にチョキはやめて。

「平然と嘘をつくからだ!」

 早くも夫のDVが始まり、新婚生活を前にニヤニヤが止まらない私。

「止まれよ! 冒頭からM気質全開にするなよ!」

 やめて、ゆう。私が変態みたいに聞こえるわ。

「え!? 姫風は変態だろ!?」

 夫に凄く驚かれた。酷い。私はただのゆうの妻よ?

「そろそろ夫婦設定をやめろ!」

 夫婦設定? 苗字が同じ理由をどう説明するの?

「親の再婚だろ!? だったら椿さんとかしぃちゃんも僕の奥さんになっちゃうじゃないか!!」

 姉妹間でゆうをシェア? ……それも有り。

「嫌だよ!? あと意外な姫風の心の広さに驚き!!」

 どこが意外なの?

「どこがって、独占欲の塊みたいな姫風がシェアとか言っちゃう辺りがだよ」

 椿はボディーガード、紫苑は側室ポジションで手を打つ。

「何気に椿さんの扱い酷くない!?」

 それが鈴城三姉妹クオリティー。

「ごめん。なんの話かまったく解らない」

 気にしないで。特に椿のことは。

「椿さん空気か。姉妹間で椿さんは可哀想なポジションなのか。と、とにかく、夫婦設定は撤回しなさい。僕には好きな人が居るんだから。その相手は新海さんだって、前に語ったよね?」

 ええ、覚えてるわ。ゆうの素敵なジョークよね。

「え!? 僕渾身の告白は、姫風の中でジョークになってるの!?」

 ふふ。笑いすぎて、タヌキをアニヒレイト(殲滅)しそうになったくらいよ。

「それジョークじゃないって解ってるよね!? 全力で理解してるよね!? め、目が笑ってないよ? 姫風、顔怖いよ?」

 ふふ。ちょっとタヌキの皮をいでくる。

「……姫風のヤツ、颯爽と行っちゃったよ。ところで、語り部が居ない場合、この場はどうなるの? 応! ナイスタイミングで携帯電話が鳴ってる。『紫苑しぃちゃん』か、はいはい」

『あ、お兄ちゃんお兄ちゃん、しぃだよぉ。今、お電話しても大丈夫?』

「大丈夫だよ〜♪ てゆ〜か、しぃちゃんならいつでも通話OKだよ〜♪ ご用件をなんなりとどうぞ!」

『えへへお兄ちゃん優しいから好き♪」

「僕もしぃちゃん可愛いから好き♪」

『一緒だね♪』

「うんうん♪ それで、どうしたのかな?」

『あのねあのね、夏休みにね、お兄ちゃんのところに行っても良い? しぃ、お兄ちゃんに会いたいのをずっと我慢してたから、今年はお兄ちゃんに会いたいなって……ダメ?』

「しぃちゃんならいつでも歓迎だけど、僕は寮住まいだから泊まることはできないよ?」

『叔母ちゃんがね“夏休みは遊びにおいで”って行ってくれたの! だから叔母ちゃんのところに泊まるんだよ♪』

「そっかそっか、なら夏休みを利用して、山に行ったり、海に行ったりしちゃおっか?」

『え!? お兄ちゃん、しぃと遊んでくれるの!? 彼女さんと、どこか遊びに行かないの!?』

「ぐふっ!! しぃちゃん、ぼ、僕に彼女は居ないんだよ……」

『ほんと!? お兄ちゃん、可愛いのに彼女さん居ないの!?』

「……純粋って、凶器になるんだね」

『え? お兄ちゃん、泣いてるの? しぃのせい? しぃ悪い子?』

「しぃちゃんは良い子だよ。あと泣いてないからね? 僕は泣いてないからね? たまたま目にピロシキが入っただけだからね?」

『お兄ちゃんのおめめはピロシキが入るの!? 凄いね!!』

「ま、まぁピロシキ話は遠投するとして、僕は夏休みの間、暇で暇で仕方がないよ。だから、夏休みに入ったら、毎日たくさん遊ぼうね」

『うん! それじゃあ、お兄ちゃん、またね!』

「通話終了っと。しぃちゃん、相変わらずテンション高いな。僕は夏休みの間、しぃちゃんのテンションに付いていけるかな?」

 ただいま。

「うわ!?」

 酷い。

「いや、突然背後から声をかけられたら、誰もが普通驚くって」

 ……違う。

「なにが?」

 通話相手と私の対応の差が。

「電話してたのを見てたのか」

 少し離れたところでゆうを見てた。タヌキ狩りと言って、油断を誘ってみたのは正解。

「僕を姫風の掌の上で転がすな」

 それで通話相手は誰?

「ナチュラルに話の内容を切り替えるな。……通話相手は姫風の妹だよ」

 紫苑?

「夏休みを利用してこっちに来るらしいよ」

 そう。抜け目のない子。さすが母の娘だけはある。

「ごめん。意味が解らない」

 ゆう、紫苑にだけは気を付けて。

「はい?」

 紫苑は三姉妹きっての策士だから。

「姫風に策士とか言われるしぃちゃんが可哀想」

 ヤケに紫苑の肩を持つけど、私と紫苑のどちらが大切?

「ちょっと前なら即答で『しぃちゃん』と返してたけど、今ならこう言えるかな『両方大切な家族だよ』って」

 どちらかにして。

「あ、あれ? 僕、今、自分なりに凄く良いこと言ったつもりなんだけど!?」

 並列は嫌。ゆうの一番は私が良い。

「なにも妹と張り合わなくても……」

 ゆう、ロリコンだから心配。

「僕に変な設定を追加するのはやめてくれ!!」

 だって、ゆうの偽恋相手・タヌキは背が低い。

「人の恋路を偽恋とか言うな。僕の好きな人が、偶々(たまたま)背が低いからって、ロリコン呼ばわりはどうかと思うよ」

 タヌキも紫苑も英語教諭も背が低い。ちょっと全員ヤってくる。

「ヤってくるな。あとチワワにまで矛先向けんな」

 もぉ、どうすればゆうの浮気は治るの?

「少しは僕の話を聞こう? な?」

 あ、そろそろバイトの時間。行ってくる。

「一方的に言い捨てて行っちゃったよ。……そろそろ地球から出て行かないかな、あの宇宙人」




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